孤帆の遠影碧空に尽き

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台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも

2024-10-10 23:15:03 | 東アジア

(【7月27日 阿猴新聞網】 中国の台湾侵攻を題材にした映画「零日攻擊 ZERO DAY」)

【頼清徳総統 敢えて踏み込む「中華民国」の歴史】
台湾と中国の間の緊張関係は相変わらずですが、台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事での「中華民国」の歴史に言及した頼清徳総統のあいさつが注目されています。

*****「中国は台湾の祖国になり得ない」、記念日行事で頼総統*****
台湾の頼清徳総統は5日、中華人民共和国よりも台湾の方が歴史が長いため、中華人民共和国は台湾の人々の祖国にはなり得ないと述べた。

10月10日の台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事で頼氏はあいさつし、中華人民共和国が10月1日に建国75周年を迎え、数日後には中華民国(台湾)が建国113周年を迎えることに言及した。

「年数という観点で言えば、中華人民共和国が中華民国の人々の『祖国』になることは絶対に不可能だ」とした上で、「中華人民共和国の75歳以上の人々にとっては、むしろ中華民国が祖国になるかもしれない」と述べた。【10月7日 ロイター】
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上記記事にあるような単なる「年数」の問題にとどまらず、そもそも「中華民国」は大陸における国民党・蒋介石が主導してきたもので、そうした歴史とは距離を置き台湾の独自性を主張する民進党にとってはやや馴染めない概念でもありました。

頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのは、「台湾独立論」にとってのタブーに踏み込んだ、世論統合に向けた現実的な対応とも見られています。

また、野党・国民党の歴史観に敢えて踏み込んだ「変化球」とも評されています。

****台湾の頼総統、あえて「中華民国」前面に 中国の統一圧力に対抗、注目集める「祖国論」****
台湾の頼清徳総統が「中華人民共和国(中国)は、中華民国(台湾)の人々の祖国には絶対になり得ない」と発言し注目を集めている。

与党、民主進歩党の支持層が距離を置く「中華民国」という概念をあえて前面に出し、中国による台湾統一の主張に反論しているのが特徴だ。「台湾独立」論に否定的な中間層を取り込み、世論を団結させて習近平政権の統一圧力に対抗する狙いがあるとみられる。

頼氏は5日の「双十節」(建国記念日に相当)の祝賀イベントで演説。1911年に始まった辛亥革命で誕生した中華民国は、49年に成立した中国共産党の中華人民共和国よりも歴史が長いと指摘し、同国発足以前に生まれた75歳以上の中国人は「中華民国が祖国になり得る」とも述べた。

頼氏の主張は「台湾は祖国の懐にかえるべきだ」と訴える中国側の論理破綻を突いたものだ。一方、中国側が「頑固な台湾独立派」と敵視する頼氏が自ら、旧来の「台湾独立」論を否定した側面もある。

中国共産党と台湾の最大野党、中国国民党に共通する「国共内戦が完全には終結していない」という歴史観は、一つの中国という理念の根拠になっている。

これに対して「台湾独立」派は従来、49年に台湾に逃れてきた外来政権の中華民国を消滅させて台湾共和国を建国し、「一つの中国」という枠組みから明確に離脱する理想を掲げていた。

しかし現実的には、「台湾独立」に向けた憲法改正に必要な有権者の過半数の支持を得るのは困難だ。

台湾の清華大栄誉講座教授、小笠原欣幸氏は「頼氏の現状認識は中国との統一か独立かではなく、台湾の現状を守り切れるか、圧力を強める中国に統一されてしまうかだ」と指摘。

「台湾の世論が割れたままでは中国に隙をつかれるので、国民党の看板である中華民国を利用して統一反対という多数派の世論をまとめ、中国からの圧力をかわすというのが頼政権の狙いではないか」と分析する。

国民党からは批判の声も出ている。同党の馬英九元政権下で対外政策の立案に関わった政治大教授の黄奎博氏は、「中華人民共和国が中華民国の人々の祖国にはなり得ない」という頼氏の主張は「歴史的事実」と認める一方、頼氏が「中華民国と中国大陸との民族、法理、歴史的関係」を切り捨てていると批判した。

国民党は頼氏の発言を全面否定するわけにもいかず、対応に苦慮しているもようだ。小笠原氏は「頼氏の『変化球』が狙い通りに中間層の有権者の支持を広げることにつながるのか注目したい」と指摘する。【10月9日 産経】
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10日の双十節の式典では、頼清徳総統は「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張しています。

****頼総統「中国は台湾代表せず」=併合反対と強調―双十節で演説****
台湾の頼清徳総統は10日、辛亥革命を記念する「双十節」(建国記念日)の式典で演説し、中台関係について「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明した。また「国家主権を堅持し、侵犯と併合を許さない」と強調した。

「祖国統一」を掲げる中国は頼氏を「台湾独立派」と敵視しており、演説に反発し軍事的威嚇を強める可能性がある。

今年5月に就任した頼氏が双十節で演説するのは初めて。頼氏は、台湾と中国は「互いに隷属しない」と重ねて強調した。

台湾国防部(国防省)によると、中国は10日にロケットを発射し、台湾の防空識別圏(ADIZ)上空を通過する見通し。台湾メディアによれば、頼政権は、演説を受けて中国が台湾周辺で大規模軍事演習を実施することを警戒している。

頼氏は中台関係に関し、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張している。今月5日には「中国は絶対に台湾の祖国になり得ない」と強調。これに対し、中国政府は「対立を激化させようとする邪悪な意図を再び露呈させた」と強く反発した。

式典への出席を予定していた野党・国民党の馬英九元総統は10日朝、「頼総統は台湾独立を追求している」として突如欠席を表明した。【10月10日 時事】
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これに対し、中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は10日の記者会見で、「頑固で無知な『台湾独立』の立場を再びさらけ出した」と反発、「台湾は中国の領土の不可分の一部だ」と主張して「独立を画策して挑発するのは破滅への道だ」と威圧しています。

【中国の台湾侵攻の話題に踏み込む台湾エンターテインメント】
「タブー」に踏み込んだ現実対応ということでは、台湾のエンターテインメントにもそうした兆しが。
これまで台湾エンターテインメントは中国の台湾侵攻の話題を意図的に避けていた感がありますが、最近、そこに踏み込んだ作品が登場するようになっているようです。

****台湾ではドラマなどでの「タブー破り」が次々に、武力統一への恐怖を反映―香港メディア****
香港メディアの香港01は5日、2025年に放送予定のテレビドラマ「零日攻擊 ZERO DAY」を紹介する記事を発表した。同ドラマは台湾で初めて放送される、中国人民解放軍の台湾侵攻を想定して創作されたフィクションで、米国メディアは「悪夢が業界を刺激してタブーが打破された」と評したという。

「零日攻擊 ZERO DAY」は11月に撮影が終了し、25年に放送される予定だ。出演は高橋一生、連俞涵、杜汶沢など。中国人民解放軍が台湾を軍事攻撃して戦争状態になった場合に、台湾社会が直面する可能性のある事態を描く。

総統選を経て新たな総統の就任日が近づく時期に、中国軍が台湾南東の海域で対潜哨戒機が撃墜されたとして、捜索および救助が必要だという名目で台湾を海上封鎖し、さらに上陸作戦を開始する。台湾の対外航運は完全に途絶し、株価暴落と銀行の取り付け騒ぎが発生する。

ネット配信された「零日攻擊 ZERO DAY」の予告編の再生回数は、すでに100万回を突破した。

香港01記事は、長期にわたり、台湾を訪れる観光客は台湾について、大陸側の脅威に直面していても驚くほど楽観的という印象を持ち続けてきたとする見方を紹介。

さらに、中国政府は台湾に対する主権を主張し、武力行使の可能性を放棄していないにもかかわらず、台湾の娯楽業界は大陸側の台湾侵攻の話題を意図的に避けてきたと主張した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは同作品を、「中国大陸の台湾武力統一の悪夢が、台湾の娯楽産業にタブーを破る作品を作らせた」と評した。

「零日攻擊 ZERO DAY」は制作にあたり、総統府内での撮影を許可され、台湾政府・文化部の資金援助も受けた。そのため、政権党である民進党の支持を獲得するための政治宣伝の作品との批判が出た。しかし李遠文化部長は、政治宣伝映画はこのような恐ろしい光景を描くことはできないと述べて否定した。

李部長はさらに、「自らの最大の恐怖に立ち向かうことができる社会こそ、健全な社会だ」と述べて、台湾の文化産業が論争のあるテーマに触れ始めたことを歓迎する考えを示した。

台湾ではドラマの「零日攻擊 ZERO DAY」以外に、大陸側の台湾侵攻を扱う劇画やゲームも注目されるようになった。例えば劇画「燃える西太平洋」は、在任中のトランプ米大統領が、米軍を派遣して台湾に侵攻した中国軍の撃退を支援する物語だ。

同作品作者の梁紹先氏によると、18年にネット上で連載を開始した際には、反応はあまりなかった。しかし、22年に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問したことを受けて中国軍が台湾を包囲するような方式で軍事演習を行ったことで、状況は一転した。販売数はそれ以前の7倍に達したという。

また、作家の朱悠勲氏は、最近になり自分が審査員を務める一部の作文コンテストでは、応募者である若者が戦争に関する作品を提出することが増えていると説明し、「かつては見たことがなかった」と表現した。朱氏によると、台湾で発表される文学作品でも同様な傾向があり、今後も続くと考えられるという。

「零日攻擊 ZERO DAY」の脚本家兼統括プロデューサーの鄭心媚氏は、大陸による侵攻に関連する新たな創作ブームは台湾の民衆の心理の変化が関係していると述べた。

鄭氏は、台湾の人々は表面上は脅威を感じていないように見えるが、実際には恐怖が存在しているとの見方を示した。

鄭氏はさらに、台湾がますます米国寄りになるにつれて、中国大陸側の北京の台湾に対する態度は一層強硬になっていると指摘。大陸側と台湾の経済の絆はすでに断裂しており、かつては多くの台湾人が中国大陸側との経済の提携に期待を寄せていたが、すでにそのような気持ちはそれほど強くないという。【10月6日 レコードチャイナ】
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頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのも、エンターテインメントが中国の台湾侵攻の話題を正面から取り上げるようになったのも、中国の圧力・脅威が強まるなかでの現実直視の姿勢のあらわれかも。

【今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割】
なお、最新の世論調査によれば、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上っています。

この数字が“驚くほど楽観的”なものかどうか、その裏で実際には恐怖が存在しているのかどうか・・・・

****台湾人の6割、今後5年で中国侵攻受ける可能性低いと回答=調査****
台湾国防部傘下のシンクタンク、国防安全研究院(INDSR)が9日公表した世論調査で、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上った。 調査は先月、約1200人を対象に実施。

INDSRのクリスティーナ・チェン研究員は大半の台湾人が中国の領土的野心を深刻な脅威と見なしているが、これが台湾侵攻につながるとは考えていないと指摘した。

INDSRは、台湾人が脅威を認識しながらも冷静で理性的であり続けていると分析した。

回答者の67%以上は中国が攻めてきたら反撃すると回答。台湾軍に自衛能力があるかにどうかについては意見が二分された。

INDSRの李冠成研究員は、台湾軍が世論の信頼を高めるために防衛能力を強化し続けるべきだと指摘。

世論調査では、米国が台湾の防衛に協力するかどうかについても意見が分かれた。

回答者の約74%が米政府が食料や医療品、兵器を提供することで「間接的に」台湾を助けるだろうとし、米軍が部隊を派遣して介入するとの回答は52%にとどまった。【10月9日 ロイター】
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