孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

サプライチェーンの混乱 フライドポテトから自動車まで 脱炭素や人権・環境へ配慮という問題も 

2021-12-22 23:03:50 | 経済・通貨
(コロナ禍を経てコンテナ需要が急回復し、輸送費が高騰している【12月20日 日経ビジネス】)

【フライドポテトにヘリウム風船も】
最近、供給体制・物流のトラブルから商品が円滑に入手できないサプライチェーンの混乱に関する報道を頻繁に目にします。原因は新型コロナによる供給の乱れ、急激な需要回復、コンテナやトラック運転手の不足による物流の滞留など。更に、脱炭素や人権・環境への配慮といった今日的な要因も。

まずは身近なところから。(なぜBBCが日本のマクドナルドを取り上げているのかは知りませんが・・・「チップ」つながりでしょうか)

****日本のマクドナルドでフライドポテトが不足、サプライチェーン危機の影響****
世界規模のサプライチェーン危機で半導体チップ不足が深刻化する中、世界最大のファストフード企業マクドナルドも、日本で「チップ」不足に直面している。 ただ、マクドナルドで問題となっているのは半導体ではなく、フライドポテトだ(イギリスではフライドポテトを「チップス」と呼ぶ)。 

マクドナルドによると、看板メニューのフライドポテトの材料となるジャガイモに、輸送の遅れが出ている。 これを受け、今月24~30日の間、フライドポテトの販売を一部に限定するという。 

マクドナルドはBBCに、「日本マクドナルドは一時的に、フライドポテトのミディアム(M)とラージ(L)サイズの販売を制限する。お客様にマクドナルドのフライドポテトを味わい続けてもらうための積極的な措置だ」と説明。(中略)

■今後は空輸も
マクドナルドが21日に発表した声明によると、材料のジャガイモは通常、カナダ・ヴァンクーヴァー近郊の港を経由して日本に輸送される。 しかし、カナダで先月発生した洪水被害の影響と、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的なサプライチェーン危機により、船舶に遅れが生じている。今後、空輸などの代替策を取るという。(中略)

一方、イギリス国内の1250店舗では今年8月、シェイクやボトル入り飲料の販売に影響が出た。供給面で問題が生じたためだった。 マクドナルドは、トラック運転手の不足が原因の1つだと説明。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)によって商取引のルールが変更されたことで、問題が悪化したとした。【12月22日 BBC】
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東京ディズニーランドでは風船が・・・風船だけならまだしも、病院のMRIとか、半導体・ヒカリファイバー生産にも影響するとか。

****東京ディズニーは風船休止 ヘリウム高騰の余波****
半導体製造などに使うヘリウムの輸入価格がここ50年余りの最高値を更新する水準で推移している。アジアを中心とした旺盛な需要に対し、海上輸送の停滞などで供給が追いつかない。需給の逼迫感から国内の半導体関連産業の調達不安が広がりつつある。ディズニーリゾートで風船販売が休止されるなど消費者に身近なところで影響も出始めた。

ヘリウムはガスや液体として冷却などの用途があり、半導体や光ファイバーの製造に欠かせないほか、医療現場の磁気共鳴画像装置(MRI)やデータセンターの記憶装置に使う。風船のガスでも身近だ。

天然ガスを採取する際の副産物として生産され、採算に見合うコストで生産できるガス田は米国やカタールなど世界で数カ国のみだ。日本は全量を輸入に頼る。(中略)直近で安かった17年からの上昇率は4割近くに達する。

需要はアジアを中心に伸びている。新型コロナウイルス禍で半導体や光ファイバー向けなどの需要が昨年減少したが、足元では中国などで需要が回復している。

一方、供給が戻っていない。ヘリウムは液化して専用コンテナで海上輸送するが、日本の輸入会社幹部は「世界でコンテナ船の輸送が停滞している影響で、産地に物があっても消費国には物が乏しい状況が続いている」と説明する。(中略)

ある国内ガス大手の担当者は「これまでは半導体生産が滞っていたため供給難が顕在化していなかったが、調達の状況は日に日に悪化している」と打ち明ける。足元は大口需要家である半導体産業への供給は優先しているというが、「最近半導体業界に対して供給調整を打診した同業もあると聞く」と指摘する。

あおりを受け始めたのがレジャー産業だ。風船販売のローリーズバルーンファクトリー(東京・港)の藤井純子代表は「11月からヘリウムの入荷が完全に停止し、次回入荷のめどが立っていない」と明かす。「1月中旬や2月までガスの供給が復活しなければ、在庫がなくなり次第、販売を一旦停止せざるを得ない」

オリエンタルランドもガスの品薄を受け、1日から東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)内でのヘリウムガスを詰めた風船の販売を休止している。「販売再開の時期は未定」(同社)という。仮に1カ月以上販売を停止することになれば、12年11月から14年1月にヘリウム不足を受けて休止して以来となる。

クリスマスの風船の需要期に消費産業に痛手となった。ヘリウム不足の影響は今後、半導体や光ファイバー、医療機器などの産業や消費生活に広がる可能性がある。【12月21日 日経】
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“天然ガスを採取する際の副産物”という性格もあって、これまでも供給がタイトになったこともあります。
偶然ですが、丁度2年前にも同じような記事がありました。

“ディズニーから風船消えた ヘリウムガス、世界的な異変”【2019年12月21日 朝日】

上記記事によれば、アメリカの冷戦時代の備蓄を取り崩して供給がなされてきたが、それも品薄になってきて買占めの対象になっているとも。

また、近年のシェールオイル採掘では地質的にヘリウムが得られないとかで、供給がタイトになっている事情もあるようです。

医薬品の供給トラブルも深刻です。
こちらは一部ジェネリックメーカーでのトラブルが発端ですが、一か所で供給が乱れると、需要が代替品に集中し、連鎖的に供給混乱が拡大していく様相は「サプライチェーン」の問題の側面もあります。

****“薬が足りない”医療崩壊にも…生産現場で一体何が****
現在、国内で価格が安いジェネリック医薬品が使われている割合は8割以上に達しています。ところが今、このジェネリック医薬品が足りないという悲痛な声が上がっています。薬局にかつてない危機感が広がっていました。医薬品の生産現場で一体、何が起きているのでしょうか。  

今、「日本の医療崩壊」にもなりかねない大きな問題が起こっています。(中略)その原因は調剤に必要な「ジェネリック医薬品」だといいます。  

(中略)ジェネリック医薬品とは特許期間が切れた後、同じ成分を使って別のメーカーなどが作った価格の安い医薬品です。医療費を抑えるために政府も推進して現在、約8割がジェネリック薬品を使用しています。  

ところが今年2月、福井県の製薬会社「小林化工」が異物混入による不祥事で業務停止処分。その後、国内最大手の日医工などでも相次いで不祥事が発覚しました。  

さらに、危惧する事態に発展…。日本薬剤師会・有澤賢二常務理事:「各医療機関や薬局等が品物が不足することで奪い合い…。在庫をたくさん抱えようとする行動が起きていて、そういったなかでも市場が混乱している」  

製薬会社の不祥事、その連鎖、そして買占め。新型コロナウイルスの影響で原料の輸入が追い付かない。そして、先月には大阪の物流倉庫での火災。  

(中略)そしてジェネリックの代用で新薬自体にも品不足状態に陥っているものがあるそうです。  

日本薬剤師会・有澤賢二常務理事:「各社それぞれ、今の品質管理体制であったり、製造管理体制を見直して、きちんと製造できる体制に人員教育を含めて設備の更新も含めて完全に回復するまでには、2年から3年はかかるだろう」【12月16日 テレ朝news】
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【日本でも起きている尿素水不足】
一時期、韓国での尿素水不足が話題になりました。(「尿素水」って初耳で、クリームなんかに入っている尿素のことだろうかと思い、なんでそんな大騒ぎするのだろう・・・美容大国・韓国のせいか・・・と訝しく感じたことも)

日本でも不足が問題になってきているようです。

****「尿素水」品薄 運送業者から物流への影響を懸念する声****
ディーゼル車の排ガスを浄化するために必要な「尿素水」が、中国の輸出規制の影響で品薄となり、物流などへの影響を懸念する声が出ています。

ネット上では通常の10倍前後の高値で転売されるケースも相次ぎ、フリマアプリ大手の「メルカリ」は利用者に冷静な対応を呼びかけています。経済産業省は、国内メーカーの増産で早ければ1月には品薄は改善に向かう見通しだとしています。

経済産業省などによりますと、「尿素水」はトラックなど大型のディーゼル車の排ガスを浄化する装置などで、有害物質の排出を抑えるために広く使用され、浄化装置が搭載された車両の多くは「尿素水」がないとエンジンがかけられない仕様になっているということです。

国内では原料となる尿素のおよそ半分を輸入でまかなっていますが、その多くを占める中国が今年10月から輸出前の検査を厳格化したため、入荷できない状況が続いているということです。

このため「尿素水」が品薄となり、一部の運送業者などは入手しにくい状況になっていて物流への影響を懸念する声も出ています。

また、ネット上では「尿素水」が通常の10倍前後の高値で転売されるケースも相次ぎ、フリマアプリ大手の「メルカリ」は21日、利用者に冷静な行動を取るようホームページで呼びかけました。(中略)
尿素を中国から輸入している商社からは戸惑いの声が上がっています。東京 千代田区の貿易商社は中国から年間およそ1000トンの尿素を輸入し、国内の尿素水のメーカーに販売しているということです。

尿素の価格は夏ごろから上昇し、中国の国内で輸出前の検査が厳格化された影響で、この会社では11月から全く輸入できない状況が続いているということです。(中略)

運送業者からは今後の影響 懸念する声も
「尿素水」が品薄になっている状況について一部の運送業者からは、今後の影響を懸念する声が出ています。

東京都トラック協会足立支部によりますと、支部には先月以降「尿素水を入手できないので協会を通じて購入できないか」などの問い合わせが10件程度寄せられているということです。

中には在庫があと1か月分しかなく、新たに購入できないと来月以降はトラックを動かせないと訴える会社もあるということです。

東京都トラック協会足立支部の鳥ノ海学副支部長は「車両台数の少ない中小企業はふだんの仕入れ先から入手できない状況で、ほかの仕入れ先から新規に購入することも難しく、よけいに手に入りづらくなっている。ライフラインを担う物流は止められないので、必死に『尿素水』を確保している状況だ」と話しています。(後略)【12月22日 NHK】
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原油・天然ガスの高値と同様に、脱炭素に向けた構造転換の過程でのトラブルという側面もあるようです。

****脱炭素・貿易摩擦、背景****
不足感が強まった主な原因は、原料となる尿素の生産大国である中国が、10月中旬から尿素の輸出を実質的に絞ったことだ。
 
中国は二酸化炭素の排出削減を目指して炭鉱を閉鎖する一方、貿易摩擦の影響で豪州からの石炭輸入が急減するなどして石炭が不足している。そのため、おおもとは石炭などから作られる尿素の生産が少なくなっているもようだ。

尿素水を扱う伊藤忠エネクスの信田(のぶた)政通・モーターソリューション部次長は、「中国製品は今、全く出ていない。日本でも多くの業者が安い中国製を使っていたので業界がパニックになっている」と指摘する。
 
日本では尿素の国内生産トップ・三井化学が、10月から定期修理で国内唯一の工場を1カ月ほど止めたことが重なった。2位の日産化学は11月以降、新規顧客の注文受け付けを停止し、既存顧客も従来の注文量に制限。市村大樹・基礎化学品営業部長は「フル生産で、これ以上は販売量を増やせない」。
 
三井化学の工場は修理を終え、今は高稼働だ。業界関係者には「品薄は徐々に落ち着くのでは」という期待もある。ただ、伊藤忠エネクスの信田氏は「中国の動きは不透明な面があり、最近の国際情勢をみると、逼迫は長期化する可能性もある」と警戒する。【12月18日 朝日】
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【自動車生産、ひいては日本経済前提への影響も】
日本経済を支える自動車生産でも。

****トヨタ、日本工場の稼働停止を延長 サプライチェーン危機の影響続く****
トヨタ自動車は13日、国内の一部工場の稼働停止期間を延長すると発表した。サプライチェーン問題が続いているためとしている。

同社は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、東南アジアの部品工場で生産が不安定になっていると説明。高級車「レクサス」やスポーツタイプ多目的車(SUV)「ランドクルーザー」の生産に遅れが出ているとした。
生産に影響が出た台数は、今月1万4000台に上るという。

BBCへの電子メールでトヨタは、「新型ウイルスの再流行によって東南アジアのサプライヤーの出勤率が低くなっていることや、日本国内の厳しい物流状況」が、工場の稼働停止につながっていると述べた。(中略)

パンデミックによる生産の乱れに加え、日本では今年3月、自動車業界にとって最大規模の半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクスの工場で火災が発生。同社は、注文処理の能力に「大きな影響」が及ぶ恐れがあると警告していた。

世界的なサプライチェーン危機は、日本の自動車業界だけでなく、経済にも大きな影響を与えている。(後略)
【12月14日 BBC】
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【今後必要とされる人権・環境問題への配慮】
サプライチェーンの川上や川下における、(新疆ウイグル自治区の問題のような)人権とか、あるいは環境への配慮も今後企業に求められます。

****半導体、人権…自動車・電機揺さぶるサプライチェーンパニック****
2022年は新型コロナウイルス禍で停滞したヒト・モノ・カネ・情報の移動が本格的に復活する。ただ、自動車や電機産業では資材不足やコスト高が依然、業績回復の重荷となる。ESG(環境・社会・企業統治)対応も含め、サプライチェーン(供給網)再強化が主力産業の共通課題となる。
 
コロナ禍3年目に突入する2022年、世界で消費の本格的な回復が見込まれる。だが、長い我慢の時期を耐えてきた企業の生産回復に水を差しかねない不安も残る。主力産業を襲うサプライチェーンの混乱だ。
 
21年、日本の基幹産業である自動車の業績回復の足かせとなった半導体不足。ルネサスエレクトロニクスや旭化成など国内大手の工場火災や、米国の生産地を襲った大寒波など、不幸なアクシデントが連続したことで、在庫が払底した。
 
だがそれは、自動車産業が直面した問題の表層にすぎない。半導体危機が示しているのは、世界の多くの企業が想定していた以上のスピードで、ものづくりや生活様式の「デジタル化」が急激に進んだという事実だろう。
 
(中略)「外交問題や金融危機、自然災害など様々な困難を乗り越えてきたが、『半導体』が巨大な自動車産業全体のボトルネックになるとは、コロナ禍の前には想像すらできなかった」(大手自動車部品幹部)との困惑が業界内から聞こえてくる。(中略)

そしてこの構図は、22年も大きくは変わらない。
(中略)仮に半導体危機が去ったとしても、世界で一斉増産が進めば、3万点に及ぶ自動車部品の、別の調達リスクが顕在化する恐れもある。
 
世界的な原材料価格や輸送用コンテナの不足や偏在による物流費の高騰にも、出口が見えない。
金属加工会社のトップは窮状を訴える。「コンテナ輸送費が、コロナ前の実に6~7倍で高止まりしている。(電子部品など)容積当たりの単価が高い製品を扱う企業との競争に勝てず、コンテナを確保することすら難しい」。
 
コロナ禍からの消費回復がもたらす世界的な混乱は、22年もサプライチェーンに重くのしかかることになりそうだ。

ESG対応の混乱も懸念
企業が対応を迫られる新たな課題も浮上している。サプライチェーン全体でのESG対応だ。
 
欧州連合(EU)など各国・地域が義務化に動いている「人権デューデリジェンス(人権DD)」がその代表格。人権DDとは、自社はもちろんのこと、調達先やさらにその先の現場で、ステークホルダー(利害関係者)に対する人権侵害のリスクを特定し、予防策を実施して、情報を開示する、一連の取り組みを指す。15年に制定された英国の現代奴隷法などが先駆けで、欧州各国を中心に法制化が進んでいる。(中略)
 
中国の新疆ウイグル自治区での強制労働問題や、紛争鉱物の使用や児童労働問題など、サプライチェーンの上流に潜む人権侵害リスクもきちんと把握し、調達先を選別するなどの対処をすることが、これまで以上に厳しく求められることになりそうだ。
 
環境分野でもサプライチェーンの情報開示を求める動きは加速する。企業に温暖化ガス排出量などの公表を求める気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、開示を要求する範囲の拡大に動いている。

自社の生産活動だけでなく、原材料の製造や製品の使用・廃棄といった段階での排出が多い企業は、「スコープ3」と呼ばれるサプライチェーンの川上や川下での排出量の開示も求められるようになる。上流や下流に位置する企業は、脱炭素に本腰を入れなければ、供給網の中で不利な立場に立たされる恐れがある。
 
コロナ禍で一時的に停滞した、ヒト・モノ・カネ・情報の移動が本格的に復活する22年。サプライチェーンの再強化が主力産業の共通課題となることは間違いない。【12月20日 吉岡 陽氏 日経ビジネス】
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地域的には、日本のサプライチェーンに大きな影響を持つベトナムでの感染拡大が懸念されています。
“日本企業に再び供給網混乱の現実味、ベトナムまた感染者急増”【12月22日 ロイター】

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