孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

金融不安への素早い異例の対応 消えていない「ドミノ倒し」不安 銀行の融資抑制で世界経済は減速か

2023-03-28 22:20:20 | 経済・通貨

(危機の時以外は利用されることの少ないFRBの「連銀窓口貸出」を通じた金融機関向けの資金供給は、足元でリーマンショック時を上回るペースで拡大しており、米銀行業界の混乱の大きさを物語っています(図2)【FRANKLIN TEMPLETON】)

【「預金は全額保護する」 「リーマンショックの教訓」もあって素早い異例の対応】
周知のように、アメリカでは総資産28兆円の「シリコンバレーバンク」、14兆円の「シグネチャー・バンク」の破綻が相次ぎ、更にスイスの金融大手「クレディ・スイス」の経営不安・・・・ということで、世界経済全体に金融不安、リーマンショックの再来への危惧が広がりました。(過去形ではなく「広がっています」と書くべきか)

これに対しアメリカ金融当局はすべての預金者を保護するという形で、異例の素早い対応で火消を行っています。

****米金融当局 シリコンバレーバンク預金者のすべての預金を保護すると発表****
アメリカのシリコンバレーバンクが経営破綻したことを受け、アメリカの金融当局は、すべての預金者を保護すると発表しました。

アメリカ財務省とFRB=連邦準備制度理事会、FDIC=連邦預金保険公社は12日、共同声明を発表し、「アメリカ経済を守るため、断固とした行動をとる」と強調。イエレン財務長官は、「シリコンバレーバンク」の預金者のすべての預金を保護したうえで、経営破綻の手続きを完了させると明らかにしました。

今回の対応は、FRBとFDICの勧告を受け、バイデン大統領と協議したうえで、イエレン長官が承認したということです。

また、FRBは他の銀行に波及するのを防ぐため、金融機関に対し追加の資金を提供すると表明しました。【3月13日 TBS NEWS DIG】
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****アメリカ政府「預金は全額保護する」 素早く宣言****
有働キャスター
「銀行が相次いで破綻すると、リーマンショックの二の舞で、どんどん連鎖していくんじゃないかと心配になりましたが…」

小野解説委員
「それをアメリカ政府は最も恐れました。まずは、『預金は全額保護します』と素早く宣言しました。保護されるお金は本来、日本円だと3000万円ぐらいまでと上限がありますが、『全額救済』としました。やりすぎじゃないかと思うくらいですが、こうやって安心感を与えたんです」

「さらに、政府が金融機関に1年間、お金を貸す用意もしました。そうすれば、不安になった人たちが、銀行から『われもわれも』と預金を引き出す事態が起きたとしても、銀行にお金があるので耐えられます。こうやって次々と破綻が起きないよう手を打っているわけです」【3月14日 日テレNEWS】
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アメリカの異例の対応の背景には「リーマンショックの教訓」があるとも。

****米相次いだ銀行破綻 異例の素早い対応の背景に「リーマンショックの教訓」 記者解説****
アメリカで相次ぐ銀行の経営破綻。バイデン政権は沈静化を急いでいますが、背景に何があるのか。ニューヨーク支局・藤森記者の報告です。

アメリカ バイデン大統領 「国民は米国の銀行システムが安全だと確信を持つことができる。皆さんの預金は安全です」(中略)

政府が対応を急ぐ背景には、過去、アメリカが発端となった世界的な金融危機の苦い経験があります。

大和総研 ニューヨークリサーチセンター 矢作大祐主任研究員
「非常に早い決断だったと思う。リーマンショックの時は土日含めて後手後手に回ったことがあった。今回、その教訓をしっかり踏まえた」

さらに、政府が危機感を持っているのは、歴史的な物価高を抑えるために進めてきた中央銀行による急速な利上げの副作用です。

今回の銀行の破綻は、▼利上げに伴う債券価格の下落により経営が圧迫され、▼ベンチャー企業などは金融機関からの資金調達が難しくなり、結果的に問題の銀行の口座から資金が引き出される動きが加速したことが決定的な要因です。

こうした動きが広がれば、一気に景気が冷え込むという危機感が政府を動かしたものとみられます。

大和総研 ニューヨークリサーチセンター 矢作大祐主任研究員
「(破綻の)連鎖という形になってくると、2008年(リーマンショック)の香りがしてくる。少しリスクが高まってくる」

週明けのNY株式市場は政府の対応をひとまず評価した形ですが、中央銀行が来週開く会合で、1年にわたり続けてきた利上げを継続するのかが注目されます。【3月14日 TBS NEWS DIG】
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ただ、リーマンショックにつながるサブプライムローン問題が浮上した2007年3月の2倍を超える額の中小銀行からの預金流出が起きており、市場に不安が広まった際の影響はリーマンショック当時より大きくなっています。

バイデン大統領は、必要に応じて引き続き特例的な預金保護の措置を講じる考えを示し、沈静化に務めています。

****過去最大“リーマン超え”米・中小銀行預金15兆円流出…バイデン大統領は沈静化に躍起****
今月10日のアメリカ、シリコンバレー銀行の経営破綻に端を発し、世界の金融市場に広がった信用不安。

アメリカで2つの銀行が破綻した15日までの1週間に、中小規模の銀行全体で1200億ドル、日本円でおよそ15兆7000億円もの預金が流出したことが、FRB(連邦準備制度理事会)の統計で明らかになりました。

これは過去最大の流出額で、リーマンショックにつながるサブプライムローン問題が浮上した2007年3月の2倍を超える額です。相次ぐ破綻で預金者の不安が高まり、預金を引き出して大手銀行などに移す動きが広がったためとみられます。

バイデン大統領は、沈静化に躍起です。
バイデン大統領:「事態が落ち着くまで少し時間がかかると思いますが、大混乱になるようなことは何もないでしょう。しかし、この件に関して不安を抱えていることは理解しています。中堅銀行は、生き残らなければなりません」

バイデン大統領は、銀行がさらに破綻するなど金融不安が続くと判断した場合、引き続き特例的な預金保護の措置を講じる考えを示しました。【テレ朝NEWS 「グッド!モーニング」3月27日放送分より】
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また、アメリカのFDIC=連邦預金保険公社は26日、経営破綻したシリコンバレーバンクについて、アメリカ南部ノースカロライナ州が地盤の銀行が買収することで合意したと発表しました。

【スイスの金融大手「クレディ・スイス」も破綻阻止 ただ、債券価値ゼロの影響は他行にも】
スイスの金融大手「クレディ・スイス」についも、ライバル銀行「UBS」が買収することで破綻を防いでいます。

****UBSがクレディ・スイス買収合意 買収額4200億円 スイス政府****
経営不安に陥っていたスイスの金融大手「クレディ・スイス」について、「UBS」が買収することで合意したとスイス政府などが発表した。

スイス・ベルセ大統領「UBSによるクレディ・スイスの買収は、スイスの金融センターの信頼回復と、国と市民のリスクを管理するために最善の解決策です」

スイス政府は会見で、「UBS」が「クレディ・スイス」を買収することで合意したと発表し、買収額はおよそ4,200億円になるとしている。

買収交渉は、UBS側がスイス政府に巨額の保証などを求め難航していたが、市場の不安を抑えるため、週明けの金融市場が開く前に合意した形。【3月20日 FNNプライムオンライン】
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こうしたアメリカ・スイス当局の異例の素早い対応もあって、市場は一応の安心感を示しています。

****ニューヨーク株式市場 3営業日続伸 金融不安やわらぎ買い注文****
週明け27日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は3営業日続伸した。

経営破綻したアメリカのシリコンバレー銀行を中堅銀行のファースト・シチズンズ銀行が買収すると発表したことを受け、金融システムに対する投資家の不安が和らぎ、買い注文が優勢となった。(後略)【3月28日 FNNプライムオンライン】
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ただ、不安感が払拭された訳でもなく、「次は・・・・」という話も。

****金融のドミノ倒し、次はドイツ銀行か****
<ドイツ銀行の株価が急落。シリコンバレー銀行とクレディ・スイスに続く破綻を市場は懸念する>

今月初めのシリコンバレー銀行の破綻に端を発し、スイスの大手銀行クレディ・スイスに飛び火するなど世界に広がった金融不安で、またも大手が危険領域に足を踏み入れてしまった。今度はドイツ最大のドイツ銀行だ。
ドイツ銀行の株価は先週末の24日、11%下落し、経営危機の恐れに直面している。今回の金融不安が始まった8日以降で考えると、下落幅は29%に達する。

「(金融界は)さらなるドミノ倒しが起きる瀬戸際にいる。次のドミノと目されているのは明らかに(それが正当な見方かどうかはとにかく)ドイツ銀行だ」と、IGグループの主任市場アナリストのクリス・ボーシャンはロイター通信に述べた。「金融危機は完全に一段落したわけではなさそうだ」(中略)

債券投資家に損失
スイス政府の仲介によりクレディ・スイスが救済され、これで欧州市場は安定するだろうと当初は考えられていた。ところが影響の拡大を抑えるのは難しかったようだ。

買収合意により、170億ドル分のクレディ・スイスの社債の価値がゼロとされてしまったことが、ドイツ銀行への懸念を深める要因となってしまった。(中略)

次に倒れるのはドイツ銀行ではと懸念する人は多いが、一方でクレディ・スイスと同じ運命はたどらないだろうと楽観視するアナリストもいる。(中略)

ロイター通信によれば、米金融大手JPモルガンのアナリストたちは24日、ドイツ銀のファンダメンタルズは「強固」で「懸念していない」と説明した。

「実際、もしアメリカとヨーロッパ双方の預金者がこの数週間(の事態の推移)から学ぶことがあるとすれば、それは規制当局がどこまで手厚い預金者保護を貫こうととするか、ということだけだ」

23日にアメリカのジャネット・イエレン財務長官は、金融安定化のために政府は「間違いなく」追加措置を取る用意があると述べた。イエレンは前日には、そうした対応は検討していないと述べており、軌道修正した形だ。【3月27日 Newsweek】
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上記「ドイツ銀行」に見るように、170億ドル分のクレディ・スイスの社債の価値がゼロとされてしまったことが他の銀行の経営不安に連鎖する危険が存在しています。

****債券は「価値ゼロ」で各国政府系銀行も全損──終わらない「クレディ・スイス危機」****
<UBSによる土壇場の買収によって救済されたが、債券の価値はゼロに。提訴の動きなど、世界の投資家と政府系銀行に衝撃が走る>

3月19日、スイス金融最大手UBSが、経営危機に陥ったライバルのクレディ・スイスを買収すると発表した。同社のような「国際金融システム上の重要銀行」が破綻すれば、その影響は計り知れなかった。

スイスのケラーズッター財務相は19日の会見で、イエレン米財務長官とハント英財務相と緊密に連絡を取っていたと明かした。米英には同社の子会社があり、それぞれ数千人の従業員がいる。

土壇場で救済されたものの、クレディ・スイス発行の170億ドル規模のAT1債が価値ゼロとされたのが火種として残りそうだ。

AT1は劣後債と呼ばれるハイリスク・ハイリターンな債券。高利回りである一方、債務の弁済順位が低いが、「価値ゼロ」は保有する世界の投資家に衝撃と動揺を広げた。今回、一部保有者の間に提訴の動きがある。

サウジアラビアの最大手銀行のクレディ・スイスに対する投資もほぼ全損に。カタールの政府系ファンドの投資数十億ドルも吹き飛んだという。【3月27日 Newsweek】
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すでにサウジアラビアの銀行に影響も。

****サウジ・ナショナル・バンク会長辞任、クレディ・スイス筆頭株主****
スイス金融大手クレディ・スイス・グループの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンク(SNB)は27日、アンマル・フデイリ会長が辞任したと発表した。人事は27日付で、後任にはサイード・ガムディ最高経営責任者(CEO)が就く。フデイリ氏の辞任は個人的な理由とされている。

フデイリ氏は3月15日にクレディ・スイスへの追加出資を否定。この発言がクレディの経営悪化に拍車を掛けたとして批判を浴びた。

クレディはスイス金融大手UBSによって救済買収されることになり、クレディの9.9%株式を保有するSNBは10億ドル余りの損失を被った。

SNBは昨年10月にクレディへの出資を発表して以来、株式時価総額が260億ドル以上も吹き飛んだ。【3月28日 ロイター】
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株式時価総額が260億ドル以上も吹き飛んだ・・・約3兆4千億円・・・CEOの首も飛ぶでしょう。

【「ドミノ倒し」が防げたとしても、銀行が融資に抑制的になることで、世界経済は大きく減速】
仮に今度の「ドミノ倒し」が防げたとしても、銀行が「健全性」を重視することで融資に抑制的になることで、世界経済は大きく減速するとも予想されています。

****米国の銀行破綻、世界経済のリスクに****
最悪のシナリオで世界のGDPが2%マイナス成長との予測も

米銀行セクターの混乱は、米国だけの問題ではない。世界的なリセッション(景気後退)のリスクを高めるものでもある。

米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻以前から、多くのエコノミストは今年の世界経済の成長率が大幅に低下すると予想していた。米国と欧州で、金利上昇を受けて支出と投資が減少するとみられていたからだ。

こうした懸念は、欧米経済の予想外の好調さを示すデータと、昨年12月にゼロコロナ政策を放棄した後の中国で景気が回復し始めたことを受けて、今年初めには幾分緩和されていた。

しかし、一部では悲観論が徐々に復活しつつある。大半のエコノミストは全面的な金融危機が発生する可能性は低いと考えているが、その一方で銀行セクターの混乱と金融引き締めの悪影響から、世界の経済成長へのリスクが高まると予想している。

米コーネル大学のエスワル・プラサド教授(通商政策・経済学)は「現状は世界経済にとって潜在的にかなり危険な時期だ」と指摘。先進諸国で金利上昇に加えて銀行セクターの問題が相次げば「世界全体に悪影響が波及する恐れがある」と語った。

エコノミストらによると当面のリスクは、米国の銀行がバランスシートの健全性を確保し預金者を安心させるために、米国の世帯や企業に対する融資を抑制することだ。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は22日、そうしたシナリオが「かなり現実的である可能性がある」とし、それが「十分にマクロ経済に重大な影響を及ぼし得る」と述べた。

米国での融資抑制は、ドイツ製自動車やフランスへの休暇旅行、中国製電子機器など他国の物品やサービスへの需要を抑制する形で、世界の成長率に影響をもたらし得る。

より幅広い視点で見ると、世界の貿易と金融システムは米ドルによって支えられている。これは、米国の金融が引き締め状態になる(融資が抑制され、借り入れコストが上がり、株式やその他の資産の相場が下がる)と、その影響が他国の経済に迅速に広がり得ることを意味する。

米国外の銀行はドル調達コストの上昇に直面し、国内の世帯や企業への貸し出しを抑制する可能性がある。そうなれば米国の輸入減による国境を越えた打撃がさらに大きくなる。借金の多い国は、借り入れがより困難になる可能性がある。(中略)

シティグループのエコノミストは22日にリポートを公表し、現在の金融セクターの問題の悪化具合に基づく世界の成長シナリオをいくつか提示した。

エコノミストらの中心的な予想では、銀行のバランスシート健全化と規制当局による迅速な対応のおかげで、この問題は春までに落ち着くとみられている。

それでも世界経済の成長率見通しは、2023年は約2.2%、2024年は2.5%にとどまり、経済協力開発機構(OECD)が示した2022年の成長率見通し(3.2%)を下回るとみられる。

シティグループは、銀行の健全性をめぐる懸念の長期化により資金調達のコストが上昇し、利用可能な資金量が減少した場合、与信の伸びが鈍化する可能性があり、今年の世界の成長率は1.6%に減速しかねないと指摘している。

リポートによれば、銀行がより積極的に帳簿上のリスク資産を削減する動きに出れば、世界の経済成長率はさらに低く、1.5%程度になることも考えられる。米国と欧州で複数の銀行が破綻するような本格的な危機が発生した場合には、世界経済はおそらく2%縮小するという。

英調査会社キャピタル・エコノミクスのグループ・チーフ・エコノミスト、ニール・シアリング氏は「真のリスクは、だめ押しとなるような新たな金融問題が起き、これまで予見できなかった金融システムのリスクが露呈することだ」と述べている。【3月27日 WSJ】
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もし“だめ押しとなるような新たな金融問題”が起きたら・・・・リーマンショックの再来でしょう。

日本経済もその中にある世界経済は、相当に危うい鋭いエッジ上の綱渡り状態にもあるようです。
言うまでもなく、経済が破綻すれば、多くの国で政治情勢が不安定化し、国際間の紛争にも飛火します。
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