(ブリンケン米国務長官とネタニヤフ首相【6月11日 NHK】)
【ハマス 民間人の犠牲拡大はハマスに有利 「犠牲は必要」】
6月9日ブログ“イスラエルの人質救出作戦で多大な住民犠牲 バイデン大統領の言う「レッドライン」は?”で、イスラエル軍の人質救出作戦でガザ保健当局は274人のパレスチナ住民が犠牲になったとしている件について取り上げました。
****ガザの死者274人に イスラエルの人質奪還作戦、EUは「虐殺」と非難****
イスラエル軍が8日、パレスチナ自治区ガザ中部でイスラム原理主義組織ハマスに拘束されていた人質4人を救出した作戦を巡り、ガザ保健当局は9日、死亡した住民らが274人に上ったと発表した。
英BBC放送(電子版)によると、イスラエル軍は作戦に伴う住民らの死者数は100人以下だと推計していた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表が「民間人虐殺の報道にがくぜんとする」とX(旧ツイッター)に書き込むなど、犠牲の大きさに批判が出ている。
米国務省によると、ブリンケン国務長官は今週、エジプトとイスラエル、ヨルダンとカタールを訪問する。イスラエルが米国に提案したとされる新たな停戦案を軸に、イスラエルとハマスに停戦受け入れを求めるとみられるが、影響は避けられないもようだ。【6月10日 産経】
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この「虐殺」を無視して、「非常に感動的な日だ」「全員帰還までどんな手段でも使う」と作戦成功を誇るネタニヤフ首相、「レッドライン」に相当しないのか明らかにしないアメリカ・バイデン大統領に対して怒りを感じますが、一方でハマスはこうした住民犠牲を交渉を有利に運ぶために「必要だ」としているとか。
十分に想像できる話ではありますが、誰も住民の命など気にしていないというのが現実のようです。
****民間人の犠牲拡大はハマスに有利 ガザ指導者が伝達と米紙報道****
米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版は10日、イスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザのトップ、シンワール指導者が、イスラエル軍の攻撃による民間人の犠牲拡大はハマスに有利に働くとの考えをガザ地区外の幹部らに伝えていたと報じた。イスラエルとの間接交渉で妥協せず強硬姿勢を維持するよう要請したという。ハマスは恒久停戦を求めている。
同紙が入手したシンワール指導者のメッセージには、民間人の犠牲は「必要だ」と書き込まれていた。犠牲者の増加で国際社会の批判が高まり「失うものはイスラエルの方が大きい」と分析しているとみられる。
ガザ保健当局によると、昨年10月の戦闘開始後のガザ側死者は3万7千人超。うち約7割は女性や子どもとされている。
一方、イスラエル軍は11日、ガザ最南部ラファなど各地でハマス掃討作戦を続け、上空から武器保管庫など35ほどの攻撃目標を破壊したと発表した。パレスチナ通信は、北部ガザ市で軍の空爆を受けて壊れた住宅から多数の民間人の遺体が見つかったと報じた。【6月11日 共同】
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【国連安全保障理事会でアメリカ主導の新停戦案受け入れを求める決議】
冒頭記事では停戦交渉に“影響は避けられないもようだ”とありますが、何事もなかったように・・・
****国連安全保障理事会でアメリカ主導の新停戦案受け入れを求める決議 14か国が賛成 ロシアは棄権****
パレスチナ自治区ガザで続く戦闘をめぐり、国連安全保障理事会は、アメリカが主導した新たな停戦案の受け入れをイスラエルとイスラム組織「ハマス」の双方に求める決議を採択しました。
国連安保理で採択された決議はアメリカが主導したもので、イスラエルとハマスに対しバイデン大統領が公表した新たな停戦案を受け入れ、速やかに履行するよう求めています。
採決では15の理事国のうち日本を含む14か国が賛成、ロシアは棄権しました。
アメリカの国連大使は…
アメリカ国連大使 トーマスグリーンフィールド氏 「イスラエルはすでに同意していて、ハマス次第で今日にも停戦できる」
ロイター通信などによりますと、ハマスは決議の採択を歓迎する声明を発表。「仲介国と協力する用意がある」との考えを示しているということです。
こうしたなか、中東を歴訪しているアメリカのブリンケン国務長官は仲介国のひとつ、エジプトでシシ大統領と会談。中東地域の指導者がハマスに圧力をかけるべきだと訴えました。
アメリカ ブリンケン国務長官 「ガザのパレスチナ人のひどい苦しみを和らげたいのであれば、ハマスが(新停戦案に)賛成するように圧力をかけてほしい」
この後、ブリンケン長官はイスラエルを訪れネタニヤフ首相とも協議し、新たな停戦案が「イスラエルの平穏と地域諸国とのさらなる調和の可能性を開く」などと伝えました。
一方、アメリカNBCテレビはイスラエルとハマスの間接交渉が不調に終わった場合、バイデン政権がハマスとの単独での交渉を検討していると報じました。
5人のアメリカ人の人質の解放について、イスラエルを関与させずに仲介国のカタールを通じハマスと話し合う案だとしています。【6月11日 TBS NEWS DIG】
国連安保理で採択された決議はアメリカが主導したもので、イスラエルとハマスに対しバイデン大統領が公表した新たな停戦案を受け入れ、速やかに履行するよう求めています。
採決では15の理事国のうち日本を含む14か国が賛成、ロシアは棄権しました。
アメリカの国連大使は…
アメリカ国連大使 トーマスグリーンフィールド氏 「イスラエルはすでに同意していて、ハマス次第で今日にも停戦できる」
ロイター通信などによりますと、ハマスは決議の採択を歓迎する声明を発表。「仲介国と協力する用意がある」との考えを示しているということです。
こうしたなか、中東を歴訪しているアメリカのブリンケン国務長官は仲介国のひとつ、エジプトでシシ大統領と会談。中東地域の指導者がハマスに圧力をかけるべきだと訴えました。
アメリカ ブリンケン国務長官 「ガザのパレスチナ人のひどい苦しみを和らげたいのであれば、ハマスが(新停戦案に)賛成するように圧力をかけてほしい」
この後、ブリンケン長官はイスラエルを訪れネタニヤフ首相とも協議し、新たな停戦案が「イスラエルの平穏と地域諸国とのさらなる調和の可能性を開く」などと伝えました。
一方、アメリカNBCテレビはイスラエルとハマスの間接交渉が不調に終わった場合、バイデン政権がハマスとの単独での交渉を検討していると報じました。
5人のアメリカ人の人質の解放について、イスラエルを関与させずに仲介国のカタールを通じハマスと話し合う案だとしています。【6月11日 TBS NEWS DIG】
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【ハマスは決議を「歓迎」、合意に「前向き」 ネタニヤフ首相も停戦案支持・・・とも報じられていたが・・・・結局はハマス・イスラエルの溝は埋まっておらず】
紛争当事者のハマスとイスラム聖戦、更に停戦後に主体となるパレスチナ自治政府は、アメリカ主導の停戦案を支持する国連安全保障理事会の決議を歓迎する声明を発表しています。
****国連安保理のガザ停戦決議、ハマスとパレスチナ自治政府が歓迎*****
イスラム組織ハマスとイスラム聖戦、パレスチナ自治政府は、パレスチナ自治区ガザにおける停戦案を支持する国連安全保障理事会の決議を歓迎する声明を発表した。
ハマスは10日、履行を巡り仲介者と協力する用意があると表明。「ガザでの恒久的停戦、完全撤退、拘束者交換、復興、避難民の居住地への帰還、ガザ地区の人口構成変更やエリア縮小の拒否、住民への援助提供を支持する安保理決議の内容を歓迎する」とした。
イスラム聖戦は11日、「包括的な敵対行為停止とイスラエル軍の完全撤退に扉を開くという点」をはじめ、決議に盛り込まれた内容を「前向き」に見ていると表明した。
パレスチナ自治政府のアッバス議長も、ガザでの即時停戦を求め、パレスチナの土地の一体性を維持するいかなる決議も支持するとして歓迎した。【6月11日 ロイター】
ハマスは10日、履行を巡り仲介者と協力する用意があると表明。「ガザでの恒久的停戦、完全撤退、拘束者交換、復興、避難民の居住地への帰還、ガザ地区の人口構成変更やエリア縮小の拒否、住民への援助提供を支持する安保理決議の内容を歓迎する」とした。
イスラム聖戦は11日、「包括的な敵対行為停止とイスラエル軍の完全撤退に扉を開くという点」をはじめ、決議に盛り込まれた内容を「前向き」に見ていると表明した。
パレスチナ自治政府のアッバス議長も、ガザでの即時停戦を求め、パレスチナの土地の一体性を維持するいかなる決議も支持するとして歓迎した。【6月11日 ロイター】
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本当に「イスラエルはすでに同意している」、ハマスとイスラム聖戦も停戦案を歓迎・・・・ということであれば、「今日にも停戦できる」(アメリカ国連大使)ということになりますが、実際は表向きの発言、あるいは停戦案を進めたいアメリカの解釈・発言と当事者ハマス・イスラエルの本音・発言にはかなり差があります。
ハマスもイスラエルも、今の時点で停戦交渉決裂の責任を負わされたくないので、表向きは“前向き発言”をしている面もあるようです。
しかし、「恒久停戦」を求めるハマスに対し、あくまでもハマス壊滅・戦闘継続を主張するイスラエルの間の溝はそう簡単に埋まるものでもないようです。
****ハマスとイスラエル、停戦交渉進むか 強い相互不信 安保理決議*****
パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、国連安全保障理事会が10日、停戦案の受け入れを求める決議案を採択した。ただイスラム組織ハマスとイスラエルの相互不信には根深いものがあり、停戦に向けた具体的な交渉に進むかが焦点となる。
ハマスは一貫して「恒久的な停戦」を求めてきた。バイデン米大統領が5月末に発表した新たな停戦案は、第1段階の休戦中に人質の一部を解放した後、第2段階で「恒久的な敵対関係の解消」を実現するとしており、内容的にはハマスの要求に近い。
ただ、ハマスはイスラエルの「合意破り」を警戒して交渉には慎重で、停戦した場合の実効性を担保するよう要求。これに対してブリンケン米国務長官は10日、訪問先のエジプトで「ハマスが承諾するよう圧力をかけてほしい」と中東諸国に呼びかけた。
今回、米国の和平案が安保理で追認されたのはハマスにとっても追い風で、受け入れを決めて交渉の席に着くかが注目される。
一方、イスラエル側も交渉に臨む姿勢はあいまいだ。
ネタニヤフ政権内でも、極右閣僚から停戦案に批判的な声が上がっていた。さらに9日には「穏健派」とされるガンツ前国防相が戦後統治を巡りネタニヤフ首相と対立し、戦時内閣からの離脱を表明した。
今回の停戦案はイスラエルの戦時内閣が承認しており、バイデン氏も「イスラエルの提案」だとして発表したが、ネタニヤフ氏はその後も「ハマス壊滅」を繰り返し強調。交渉に応じるとしつつも、ガザ地区での軍事作戦を激化させている。
ただイスラエルとしても後ろ盾の米国が提案した今回の安保理決議は軽視できず、一定の外交的圧力になる。
またイスラエル軍が8日にガザ地区で人質4人の奪還作戦を行った際、ガザ側では空爆などにより女性や子供を含む270人以上が死亡したとされ、イスラエルへの国際的な非難はさらに高まっている。
ブリンケン氏は10日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ氏と停戦案について協議した。会談では、イスラエルが提案したとされる停戦案を支持することを強調。米国がイスラエルの安全保障に関与することも約束した。その上で、バイデン米政権が繰り返し求めているガザ地区での戦後統治の計画の重要性も訴えており、イスラエルがどこまで納得するかも焦点となる。【6月11日 毎日】
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“イスラエルが提案したとされる停戦案”というのも、アメリカがネタニヤフ首相の同意なしに公表したものとか。
ブリンケン米国務長官はネタニヤフ氏と10日にエルサレムで会談し、ネタニヤフ首相は、停戦案支持を明言したとい言っていますが、はなはだ怪しい。
****バイデン大統領のガザ停戦案、ネタニヤフ首相は認識に「違いがある」と主張…合意の有無には触れず****
(中略)決議を提出した米国はイスラエルが既に停戦案に合意したと説明したが、イスラエル側は沈黙しており、停戦案の実現は見通せない状況だ。
停戦案は、〈1〉即時停戦や人口密集地からのイスラエル軍撤退〈2〉全ての人質解放や恒久的な敵対行為の停止〈3〉ガザ再建――の3段階で構成され、先進7か国(G7)やアラブ諸国が支持している。決議には、イスラエルは「停戦案を受け入れている」として「ハマスも承認するよう要求する」と明記された。採決では15理事国のうちロシアだけが棄権し、14か国が賛成した。
しかし、イスラエル国内では停戦案を巡り、連立政権に加わる極右政党を中心に強い反発が出ている。地元メディアによると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は3日、米国との間で停戦案に関する認識に「違いがある」と主張し、9日の声明では「全人質の解放とハマス壊滅の目標を達成するまで戦い続ける」と改めて強調した。この日の安保理会合で、イスラエルの代表者は停戦案の合意の有無に触れなかった。
一方、ハマスは10日、安保理決議の採択を「歓迎する」との声明を出し、停戦交渉について「仲介国に協力する用意がある」と表明した。
米国のブリンケン国務長官は10日、訪問先のエルサレムでネタニヤフ氏らと会談し、停戦案について協議した。ブリンケン氏は11日、「ネタニヤフ氏は(停戦)案を責任を持って引き受けると再び確約した」と記者団に述べた。【6月11日 読売】
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ハマスの方も“ハマスがイスラエルの停戦案に回答 「合意へ前向きに対処」”【6月12日 毎日】といった前向き記事が報じられていましたが、時間がたつにつれてネガティブな情報が増え、結局のところは・・・・
*****停戦案“ハマス側が事実上拒否” イスラエル報道****
イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦案をめぐりイスラエルのメディアはハマス側が事実上拒否したと報じました。停戦交渉をめぐる双方の溝は埋まっていないとみられます。
ガザ地区での戦闘終結にむけた新たな停戦案についてハマス側は11日、声明を発表し、仲介国のカタールなどに正式な回答を伝えたと明らかにしました。
この回答についてロイター通信は、「ハマスがイスラエル軍の撤退に向けた新たなタイムラインを提示し恒久的な停戦を求めた」と伝えています。
そのうえでハマスの幹部は声明で合意にむけての道は開かれているとの考えを示したということです。
一方でイスラエルのメディアは当局者の話として「回答を受け取ったがハマスは交渉条件の重要な部分を変更し、事実上、拒否する内容だ」と伝えています。
双方の溝は埋まっていないとみられ停戦交渉の先行きは依然不透明な情勢です。【6月12日 日テレNEWS】
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*****ハマス、「侵略の完全停止」要求 新停戦案に回答****
イスラム組織ハマスとイスラム聖戦は11日、共同声明を発表し、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐるイスラエルの停戦案に回答し、同国による「攻撃の完全停止」を求めたことを明らかにした。
声明は、「回答はパレスチナ人の利益を優先し、ガザで続いている攻撃の完全停止の必要性を強調している」とする一方で、「戦争終結に向けた合意に前向きに取り組む」用意があるとしている。
休戦交渉を仲介していたカタールとエジプトは同日夜、回答を受理したことを確認。合意に達するまで米国とともに仲介を続ける意向を示した。
交渉に詳しい情報筋はAFPに、「回答には恒久停戦への行程表やガザからのイスラエル部隊の完全撤収に関し、イスラエル案を修正する項目が含まれている」と語った。
米ホワイトハウスのジョン・カービー大統領補佐官もこの日、ハマスとイスラム聖戦の回答を受け取ったとし、「精査中だ」と述べた。
国連安全保障理事会は10日、ジョー・バイデン米大統領が先月公表した、6週間の停戦や、人質と拘束されているパレスチナ人の交換などを含む新提案に支持を表明するとともに、米国が起草したガザ停戦を求める決議案を採択した。 【6月12日 AFP】
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結局のところ、「恒久停戦」を求めるハマスと「ハマス壊滅」をおろさないイスラエルの間の溝は全然埋まっていないように見えます。
いかにも期待をもたせるようなブリンケン米国務長官の発言やハマスの「前向き」発言などで、「ひょっとしたら、停戦交渉が動くのかな・・・」とも期待して今回話題を取り上げたのですが、あまり期待しない方がいいみたいです。
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