テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

ただ独りの。

2015-08-02 21:45:07 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 しゃりしゃりッ、すいかッ♪」
「がるる!ぐるるるー!」(←訳:虎です!夏の味だー!)

 こんにちは、ネーさです。
 よく冷やしたスイカの美味しさは格別ですね!
 暑さで朦朧としていたアタマが少しシャッキリしたところで、
 はい、本日の読書タイムは、こちらを、どうぞ~!

  



             ―― ヴィクトリア ――



 著者はイーディス・シットウェルさん、原著は1935年に
 日本語版は2015年3月に発行されました。
 英語原題は『Victoria of England』、
 題名からもお分かりのように、
 ヴィクトリア女王(1819~1901)の伝記……
 と言っていいのかどうか……。

「えッ? でんきィじゃないィのでスかッ?」
「ぐるるがるるぐるる?」(←訳:表紙に女王様いるよ?)

 ええ、御本の表紙カバーにあるのは
 80歳の折のヴィクトリア女王を描いた肖像画。

 しかし、
 御本の著者の、
 イーディス・シットウェルさん(1887~1964)が、
 ちょっとばかり曲者なのです。

 シットウェルさんは、
 ダービシャーに領地を有する准男爵を父に持ち、
 母方の血筋もプランタジネット王朝以来の伯爵――
 つまり、
 完全に貴族階級出身の作家であり、詩人なのでした。

「ふァ~、それじゃァ~、きわめつけのォ~…」
「がるるる!」(←訳:お嬢さま!)
 
 ええ、ですから、
 上流社会・貴族階級の良いところも悪いところも、
 シットウェルさんはよく解っていて、
 また、うんざりもしているのです。
 貴族なんて!と。

 となると、必然的に、
 その筆には《敬意》よりも
 勝手知ったる身内の噂話をするような
 《遊び》の色が濃くなります。

 ヴィクトリア王女生誕、
 教育と成長、
 アルバート公との出会いと戴冠、
 そして長い統治期間を描きながら、
 決して、単なる“偉人伝”にはしない。

 フィクショナルな描写、
 推測、
 伝記作品としては必要なかろう社会批判も
 遠慮なく、はばかることなく、書入れます。

「だいなみッくゥ!」
「ぐるる!」(←訳:冒険家だ!)

 シットウェルさんのそんな冒険的な試みは、
 効果があった、と思われます。

 例えば、ヴィクトリア女王の生涯の伴侶にして
 最愛の夫であったアルバート公が
 亡くなる場面から読み取れるのは、
 明らかな過労死。

 アルバート公は公務に殺されたのだという示唆です。

「ちょッとォ、びッくりィ!」
「がるぐるるがっるる!」(←訳:いや大いにびっくり!)

 “公人”にならざるを得なかったひとりの女性と、
 その家族たち縁戚たち。
 女王を取り巻く政治家、軍人、桂冠詩人、
 産業革命と国の繁栄、
 数々の戦争――

 現在の日本には、
 敢えていうなら、
 “とりたてて係わりのない”過去のひと、の伝記です。
 地味で、
 読まなくてもいい、
 読んでも何の役にも立たない本であるとさえ
 言えるかもしれません。

 けれど、静かに目を通してゆけば
 ひとつの世界が見えてくることも
 有り得るでしょうか。

「えいぶんがくすきなァおかたにィ!」
「ぐるるるがる!」(←訳:おすすめです!)

 歴史好きな御方も、ぜひ♪




 
コメント
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