テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

怖さがにじむ《冒険》ものがたり。

2015-08-13 21:46:44 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ながしぼしィ、くるでスかッ?」
「がるる!ぐるるるるるるがるる!」(←訳:虎です!ペルセウス座流星群!)

 こんにちは、ネーさです。
 横浜ではピカチュウちゃんたちが大量発生しているようですが、
 流れ星もビュンビュン飛びまくってくれるのでしょうか?
 夜空をじ~っと……見上げる前の準備体操に、
 本日も読書タイムを、さあ、どうぞ~♪

  



               ―― 鵺の家 ――



 著者は廣嶋玲子(ひろしま・れいこ)さん、2015年6月に発行されました。
 鵺(ぬえ)……
 ふふふ、良い響きですねえ。
 夏の怖い話にぴったりの、
 モノノケっぽさを感じさせてくれる言葉です。

「こッ、こわいィおはなしッ??」
「ぐるがるるー!」(←訳:怪談ですかー!)

 怪談、かというと、ちょっと違います。
 ホラーとも違いますし、
 御本の見返しには《時代ファンタジー》と紹介されていますけれど、
 私ネーさ的には、
 ゴシック・ロマンか、
 はたまた『遠野物語』か、
 乱歩さんの少年向け小説か――

 時代は、維新から50年を経た頃。
 或る地方に、
 天繭(あままゆ)村と呼ばれる村がありました。

 代々、村の領主をつとめてきたのは
 天鵺(あまぬえ)家の一族。

「ううッ! やぱりィ、なまえがァ、こわいィでスゥ!」
「がるるぐるる……!」(←訳:不吉な予感が……!)

 養蚕事業から得る巨大な利益で
 富裕を誇る天鵺家。

 その天鵺家が、
 分家――親戚の家々にお触れを出しました。

 天鵺家の跡取り、
 総領息子の遊び相手となる娘を探している、と。

「むむゥ、おかねもちッぽいィでスねッ!」
「ぐるるがるー!」(←訳:上から目線ー!)

 今年13歳になる、
 茜(あかね)ちゃんの両親は
 これを聞いて目の色を変えました。

 天鵺家の援助があれば、
 商売を拡張することも
 借金を返すことも
 帝都にいる息子たちの勉学を続けさせることも
 不可能ではなくなる……!

 茜よ、天鵺家に行っておくれ!

「えェ~、ちょッとォ、それェ~…」
「がるるるぐるる?」(←訳:ヤバそうだよう?)

 優しい茜ちゃんは、両親の苦衷を察し、
 天鵺屋敷を訪れます。

 綺羅綺羅しい調度品、
 舶来物の大時計、
 彫刻やタペストリー、
 珍しい獣の敷き皮や剥製。
 財力をひしひしと感じさせる屋敷の廊下を進んでゆけば、
 おりました、その少年が。

 若君(わかぎみ)と呼ばれる、
 天鵺鷹丸(たかまる)くん。

 いや、しかし、ここには……

「なッ、なんでスかッ」
「ぐるるるっ!」(←訳:なんか怖っ!)

 何かが、いる。

 鷹丸くんだけではない、
 茜ちゃんだけではない、
 古く、怖ろしいものが、
 この屋敷、この村に巣食っている。

「かッ、かえりましょうッ、あかねちゃんッ!」
「がるるぐるる!」(←訳:お家へ戻ろう!)

 父母と兄たちのことを思えば、
 帰りたいなどと簡単には言えない。
 若君をひとり残してゆくのも、心苦しい。

 暗澹たる空気の屋敷で、
 茜ちゃんの孤独な闘いが始まります――

「ちえとォ、ゆうきでェ?」
「ぐるるがるる!」(←訳:何かが変わる!)

 丹地陽子さんによる装画もすばらしく、
 ページを開けば止まらなくなる
 茜ちゃんと鷹丸くんの《冒険物語》、
 フィクションの世界に浸りたい!という活字マニアさんに
 激おすすめですよ。

 ただ、主人公が少年少女だから、なのでしょうか、
 この御本、児童文学にジャンル分けされているようです。
 本屋さんによっては、
 児童書のコーナーに置かれているかもしれませんので、
 探してみてくださいね~♪


コメント
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