テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 松林の遠い音 ~

2015-08-30 21:44:45 | ブックス
「こんにちわゥ~、テディちゃでスゥ~!
 うふゥ、さむいィでスゥ~!」
「がるる!ぐるがるぅ!」(←訳:虎です!冷夏だよぅ!)

 こんにちは、ネーさです。
 明るく楽しい夏休み!のはずが、いつの間にか冷夏に?
 ちょこっと切ない8月の終わりの読書タイムは、
 秋めく季節に相応しいアート評論を、どうぞ~♪

  



          ―― 思いがけない日本美術史 ――



 著者は黒田泰三(くろだ・たいぞう)さん、2015年5月に発行されました。
 前回記事では二大巨匠の美人画展覧会を御紹介したのですけれど、
 こちらは、近年人気が高まる一方の
 日本美術を論ずる新書本です。

「おもいがけないィ、というとォ??」
「ぐるるがるるぐる?」(←訳:異端の美術史かな?)

 御本の題名にある“思いがけない”とは、
 著者・黒田さんの或る経験に由来するものです。

 日本近世絵画史を専門とする黒田さんは、
 出光美術館の理事・学芸部長さんでもあり、
 2014年4月~6月にかけて開催された
 《日本絵画の魅惑展》の企画者も務めました。

 そして、展覧会の会期中に
 作品を熟知する学芸員ならではの解説を
 お客さまに披露したところ、
 たいへん好評だった、というのです。

「ならではのォ、かいせつゥ??」
「がるるるるるぐるる?」(←訳:専門用語羅列ですか?)

 黒田さんが心掛けたのは、
 従来の美術史的評価とはやや異なる見方、
 いままであまり注目されてこなかった
 意外な視座からの作品観賞、でした。

 そんな“意外な見方”線上から
 日本美術史を見直し、
 あらためて日本美術の面白さを追求したのが
 この御本です。

「ゆうめいなァ、さくひんもォ~」
「ぐるる!」(←訳:再検証!)

 内容は、

 第一章《人間を描く》
 第二章《動・植物を描く》
 第三章《風景を描く》
 第四章《目に見えないモノを描く》

 と、大きく四つの章に分けられ、
 絵巻、屏風、文人画、水墨画……等々、
 様々な作品への考察が収録されていますが、
 特に注力されているのは、
 長谷川等伯さんの業績、でしょうか。

「ふァいッ! テディちゃ、しッてるでス!
 まつばやしィ、なのでス!」
「がるるるるるぐるるる!」(←訳:松林図屏風の画師さん!)

 観る者をたちまちとりこにする、
 桃山時代の画家・長谷川等伯(はせがわ・とうはく)さん。

 その等伯さんが、
 江戸時代の初めには忘れ去られていたのは
 どういう理由があったのか。
 
 忘れられ、いえ、ほとんど潰されるところだった等伯さんの作品が
 かろうじて後世に伝えられたのには、
 どのような経緯があったのか。

 等伯さんの斬新性、
 創作の機微を想う黒田さんの文章は、
 《松柏図屏風》を目にしたことのある人のこころを
 ぞくり、と波立たせるに違いありません。

「するどいィぶんせきィ!」
「ぐるるるるがるる!」(←訳:それでいて優しい!)

 日本美術好きな御方、
 日本史好きな御方にもおすすめの一冊です。
 美術館へお出掛けする際の、
 予習&復習にも、ぜひ♪
 
 

 
コメント
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