テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

“不思議”がつなぐ糸。

2015-08-14 21:48:52 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 うむうむゥ、
 おぼんやすみにィ、つきものォなのはァ~…」
「がるる!ぐるる?がるるぐるる!」(←訳:虎です!まさか?今日も怖い話?)

 こんにちは、ネーさです。
 夏のお休みにつきものなのは、やはり怪談?オバケの噂?
 いえいえ、つい熱が入ってしまうのは、
 思い出話、回顧譚、でしょうか。
 去年の花火大会はキレイだったね~♪
 昔お祖母ちゃん家で食べたスイカは美味しかったなぁ~♪
 そんな調子のお喋りを、
 お江戸の時代にやってみたら……?
 てな具合で、さあ、本日の読書タイムは、こちらを、どうぞ~!

  



          ―― 三成の不思議なる条々 ――



 著者は岩井三四二(いわい・みよじ)さん、2015年1月に発行されました。
 はい、一冊みっちり、がっちり、回顧譚、でございます。
 ただし……これが、なんとも“不思議”な回顧譚。

 なにしろあの、
 天下の大悪人さんを俎板に乗せての昔語り、なんですからね。

「だいあくにんッ??」
「ぐるるる~?」(←訳:というと~?)

 歴史は勝者がつくるもの。

 その言葉に従えば、
 関ヶ原の戦から30年を経た江戸の町で、
 誰に悪人のレッテルが貼られているのか、
 想像するのは容易でしょう。

 石田三成さん。

 従五位下・治部少輔(じぶしょうゆう)の官位を得ていたため、
 治部(じぶ)と呼ばれることも多々あった、
 関白豊臣秀吉政権における重臣、
 エリート官僚でありましたが……。

「ひょうばんッわるいィのでス!」
「がるるぐるるるっる!」(←訳:ヒイキするんだって!)

 悪人とか、悪臣とか、まあ言われ放題の三成さん。

 では、ホントに大悪人だったのか、
 その証拠は?ってことになると?

「えッとォ~…?」
「ぐ~る?」(←訳:う~ん?)

 悪人なのか、そうでないのか。

 その証(あかし)を探すかのように、
 昔むかしの話を聞かせて欲しいと、
 訪ねて歩くひとりの町人さんがおりました。

 関ヶ原の合戦と、治部少輔の人となり。

 訊かれる方は、
 なんでまた三成ぃ?
 なぜいま関ヶ原ぁ?
 とも思うのですが、
 手柄話や自慢話をするのは気分のよいものです。

 問われるまま、語り出してゆけば。

「うゥむッ、ひとそれぞれェのォ?」
「がるるるる?」(←訳:三成さん像?)

 治部少輔とはどのような人物だったのか。
 あの日、関ヶ原にうごめいていた大名たちの思惑とは。

 また、江戸のあちこちで、
 さらには上方へまで出向いて
 思い出話の聞き取りをする町人の背後には
 いったい何者が存在するのか。
 その意図とは――

「どッちをォみてもォ」
「ぐるるる!」(←訳:謎だらけ!)

 ひとりの男の、飾らない素顔。

 時間を経たからこそ
 浮き彫りになる真実がある、とするなら――?

 歴史好きさんには素通りできない、
 フィクションでありながらノンフィクションの香りを漂わせる
 《知力》に溢れた快作です。
 ユーモアに満ちた語り口にも
 ニヤリ♪とさせられるこの御本、
 お盆休み終盤の読書のお供に、ぜひ!
 


コメント
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