テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

限界、ぶっちぎり!

2016-06-21 22:00:43 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 きょうはァ、おひさまのォひッ!」
「がるる!ぐるがる~!」(←訳:虎です!夏至です~!)

 こんにちは、ネーさです。
 一年でいちばん昼間の時間が、
 つまり、お日さまが照っている時間が長~い今日6月21日は、
 陽光燦々なギリシアの島を舞台にした
 ノンフィクション作品を御紹介いたしましょう♪
 さあ、こちらを、どうぞ~!

  



       ―― ナチュラル・ボーン・ヒーローズ ――



 著者はクリストファー・マクドゥーガルさん、
 原著は2015年に、日本語版は2015年8月に発行されました。
 英語原題は『NATURAL BORN HEROES』、
 『人類が失った“野生”のスキルをめぐる冒険』と日本語副題が付されています。

 えーと、繰り返しになりますが、
 この御本、ノンフィクションです。
 行動科学と呼ばれる研究の、
 とても真摯な、真面目な、真剣な論作なのです、けれど。

 とんでもない人たちが登場するので、
 内容もとんでもないことになってます。

「まるでェ、はりうッどえいがァ、でス!」
「ぐるがるる!」(←訳:冒険大活劇!)

 ハリウッドの映画会社でも、
 どうかしら、イマドキはこんな脚本が持ち込まれたら
 ノーサンキューって低調にお断りするんじゃないかしら。

 なぜかと言いますと。

 そこは、第二次世界大戦下の欧州、
 ギリシアの、
 クレタ島です。

「あはァ! テディちゃ、しッてるでスよッ♪」
「ぐるるるがる!」(←訳:神話の島だね!)

 迷宮に忍び込み、
 ミノタウルスを退治したテーセウスの物語を、
 活字マニアの皆さまは御存知でしょう。

 そのクレタ島が、
 ナチスドイツの軍隊に占領されました。

 クレタは、
 ヴェネツィア共和国とオスマン帝国が地中海の覇を競い、
 王さまたちが十字軍の船団を率いてエルサレムを目指した頃から、
 東西通行の要衝とされてきた島でした。

 事情は、20世紀になっても変わりません。

 ロシア(ソ連)攻略のための、
 物資の中継基地として、
 ドイツ軍はなんとしてもクレタを手に入れたかった、
 のですが……

「おもわぬゥ、じゃまがッ!」
「がるるるるるぐぅるる!」(←訳:信じられないジャマが!)

 その邪魔とは。

 ドイツ軍の兵隊で溢れる島に潜入し、
 勇猛果敢で名高いドイツ軍の司令官を、
 専属の警備隊や
 数百人の兵士たちの目をかすめ、
 堂々と、
 誘拐する。

 さらにまた、
 誘拐者たちはさらった将軍を連れ、
 クレタの島内をあちらへ、こちらへ、
 変幻自在に逃げ延びる――

 っていうんですから、本当にとんでもないわ!

「にんげんわざァじゃないィ、のでス!」
「ぐるるるー!」(←訳:クレイジー!)

 映画でしょ、それ?
 ホラ話だわよね?と確認したくなるこの出来事は、
 啞然とさせられることに、事実です。

 途方もない作戦に従事し、
 1944年4月24日、
 ドイツ軍のグライペ将軍を誘拐してのけたのは、
 わずか数人の英国軍エージェントと、
 クレタのレジスタンス兵士たち。

 正規の精鋭兵ではない、
 物資を補給してくれる応援部隊もない、
 武器もろくに持っていない彼らに、
 はたしてそんなことが出来るのか?

「できッこないィ!……はずゥだけどォ~…」
「がるるるぐるるる?」(←訳:どうして出来たの?)

 できるはずがないことを、
 どうやってやり遂げたのか。

 著者・マクドゥーガルさんは、
 人間が本来持っている能力、技能の“限度”に注目します。

 人間の身体能力は、
 我々が想像以上に高いのではないだろうか?
 少量の食糧で長距離を歩く、走る。
 腱を、筋力を駆使して、高く飛ぶ、登る。

「よいしょッうんしょッ!」
「ぐっるるがっる!」(←訳:すったかたった!)

 戦時下のクレタ島と、
 マクドゥーガルさんが必死に調査を進める現代、
 ふたつの時代を行き来しながら、
 明らかになってゆくのは
 神話の英雄たちが有していた特性ともいうべきもの、です。

 彼らは、剛力だから英雄になった、のではない。
 真のヒロイズムとは、
 権力でも財力でもなくて――

「いがいなァものッ、でス!」
「がるるるるぐる!」(←訳:意外だけど納得!)

 限界とは、どこに在るのか。

 人間の能力にも、
 クレタ島の戦争秘話にも仰天させられてしまう、
 不思議に魅力的な作品です。
 著者さん&役者さんに拍手を贈りつつ、
 ノンフィクション好きな御方も、
 フィクション好きな御方も、
 どうか、ぜひ一読を♪
 
 
 
コメント
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