テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

闇と、光の魔力。

2016-06-23 22:08:44 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 くッ? くらいィ~でスゥ!」
「がるる!ぐっるるる!」(←訳:虎です!真っ暗闇だ!)

 こんにちは、ネーさです。
 はい、落ち着いて、落ち着いて~!
 暗闇といっても夏の肝試しの話題じゃありませんよ。
 本日の読書タイムは、
 《光と闇》をテーマにした美術評論書に登場していただきましょう。
 さあ、こちらを、どうぞ~!
 
  


          
           ―― 闇の美術史 ――



 著者は宮下規久朗(みやした・きくろう)さん、2016年5月に発行されました。
 『カラヴァッジョの水脈』と副題が付されています。

「うむゥ! あのォがかさんッ、でスかァ~!」
「ぐるるがるる~!」(←訳:確かに闇だね~!)

 御本の表紙にもなっていますね、
 ミケランジェロ・メリージさん――通称カラヴァッジョさん(1571~1610)の
 《聖マタイの召命》(1600年制作)。

 つい先ごろ、
 カラヴァッジョさんの展覧会が大々的に開催されましたが、
 この有名な、カラヴァッジョさんの代表作とも言える傑作は
 来日しませんでした。

 ローマの教会に収められている作品なので、
 移動はほぼムリ、なものですから
 仕方ないんですけれど、
 カラヴァッジョさんのファンの方々は、
 一度は見たい!と熱望する傑作中の傑作でしょう。

 黒――闇に浮かび上がる、
 人間たちの姿態と、
 聖なる御方の横顔……

「げんだいィのォ、あぶらえェとはァ~…」
「がるぐる~!」(←訳:全然違う~!)

   西洋絵画は中世の終わりから一貫して、
   光と闇の対比を追及してきた――

 と、著者・宮下さんは御本冒頭の
 『はじめに 光あれ』で記しています。
 そしてまた、

   19世紀後半の印象派にいたって、
   ようやく画面から闇が放逐された。

 とも述べておられます。

「ふむむゥ、そういえばッ?」
「ぐるるっるがるる!」(←訳:印象派って明るい!)

 そうなのよね、
 言われてみると、はっきり分かります。

 モネさんが描いたスイレンの花咲く水面、
 白い日傘をさしている女性の画も、
 みなみな光の中に在る――

 そう、印象派の作品を思い浮かべた後に
 カラヴァッジョさんの画を、
 (たとえ複製画であれど)眺めれば、
 背骨が冷えるような心地とともに
 実感できます。

 ああ、ここに描かれているのは、
 紛うことなく、闇だ……と。

「ただァくろいィ、だけじゃなくてェ~」
「がるるるる!」(←訳:黒以上の黒!)

 西洋の画家さんたちが
 古代ギリシャの昔から絵画の基本としてきた
 陰影。

 陰影を用いて、
 対象を立体的に描くこと。

 それは、17世紀の初めに、
 カラヴァッジョさんが写実主義を確立した瞬間、
 多大な影響を当時の画家さんたちに、
 また後代の画家さんにも及ぼしました。

 暗黒主義(テネブリスム)と呼ばれる、
 光と影の対立、
 その圧倒的な心理効果、インパクト!

「えいがァみたいィ~でス!」
「ぐるる!」(←訳:演劇的!)

 著者・宮下さんは、
 多くのページを費やし、
 カラヴァッジョさんの功績と、
 闇の中に――ダークサイドに呑み込まれてしまった
 彼の短い生涯を綴ります。

 大勢の評論家さんクリエイターさんが
 カラバッジョさんの評伝を著していますけれど、
 宮下さんの文章はことのほか素晴らしく、
 どうしようもなくやるせなく、
 天才であり、
 悪漢であったひとりの画家の輪郭を
 闇の向こうに輝かせます。

 自滅してゆく以外に
 生きる術を持たなかった・持てなかった或る男の、
 変えられぬ最期も。

「それでもォ、いまもォ!」
「がるるぐるる!」(←訳:世界を魅了中!)

 西洋美術の光と闇、
 そして第6章では、日本美術の光と闇も
 綿密に、誠実に、取り上げられています。
 アート好きさんに、
 展覧会でカラヴァッジョさんに惚れ直した!という方々に、
 おすすめのこの御本、
 『あとがき』までも含めて
 ぜひぜひ、一読を!
 
 
 

 
コメント
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