テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ アトリエから、旅に出る ~

2020-01-31 22:29:23 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうはァ、ふじさんッきれいィ~でしたでス!」
「がるる!ぐるるがるるる!」(←訳:虎です!青空に映えるね!)

 こんにちは、ネーさです。
 青と白の妙なるコントラスト……霊峰富士のお姿を
 電車の窓から仰ぎつつ、
 もしこの画家さんが富士山を見たら?
 と想像を膨らませた本日の読書タイムは、
 こちらのアート評論を、さあ、どうぞ~♪

  



  ―― 誰も語らなかった フェルメールと日本 ――



 著者は田中英道(たなか・ひでみち)さん、
 2019年8月に発行されました。
 はい、久しぶりにフェルメールさん関連の御本に
 登場していただきましょう♫

「ことしもォ、わだいにィ~なりまスかッ?」
「ぐるがる!」(←訳:なるなる!)

 そうね、以前に展覧会情報でご紹介した
 《ロンドン・ナショナル・ギャラリー展》
 (上野の国立西洋美術館にて、3月30日~6月14日)では、
 フェルメールさん作『ヴァージナルの前に座る若い女性』
 が展示される予定です。
 たしか、日本初公開だと思うので、
 またしても大きな話題になることは間違いありませんね。

 日本人が大好きな画家ヨハネス・フェルメールさん(1632~1675)。

 では、もしも、
 フェルメールさんの方も、
 日本が大好きだった、としたら……?

「わほッ! そうしィそうあいィ?」
「がるるるぐるるるぅ?」(←訳:そんなの有り得るぅ?)

 有り得る、と
 かねてより主張してきたのが、
 著者・田中さんです。

 その論拠は、
 フェルメールさんの作品に描き込まれた
 数々の雑貨……いえ、
 “舞台装置“というべきでしょうか。

 ルーヴル美術館蔵の『天文学者』、
 仏シュテーデル美術館蔵の『地理学者』。
 両作品で、
 モデルを務めた男性が着用しているのは、
 キモノが元となっているガウン――
 その名も『ヤポンセ・ロック』。

 モデルを務めたこの男性も、
 日本に縁を持つ或る人物であると
 田中さんは推測します。

 その人物とは、
 バールーフ・デ・スピノザさん(1632~1677)。

「ふたりはァ、なかよしィ?」
「ぐるるがる!」(←訳:たぶん親友!)

 フェルメールさんとまったくの同時代を生きた、
 アムステルダム生まれの哲学者スピノザさん。

 生家が富裕な貿易商であったためでしょうか、
 スピノザさんは
 日本に関する正確な知識を持っていたようです。

 ジパングとか、黄金の国とかじゃなくて、
 日本ではキリスト教が禁じられている、
 それでも彼らは幸福に生きられるのだ、と
 『神学・政治論』(1670年刊)で述べているんです。
 
 そういった情報を聞かされ、
 東方貿易でデルフトに持ち込まれたキモノを、
 また他にも、
 地球儀の向き、
 絨毯など、
 さまざまな《東洋》アイテムを、
 生涯デルフトから一歩も出ることのなかったフェルメールさんは
 どんな思いで画面に描き入れたのか……

「はるかなァ、うみのォかなたァにィ~」
「がるぐるるる……」(←訳:心は翔けゆく……)

 19世紀、ゴッホさんが夢見たように、
 静かなアトリエでひとり、
 フェルメールさんも旅をしたのでしょうか。
 地球儀をゆっくり回転させて、
 遠く日本へ。

 フェルメールさん御自身に確かめることは
 かなわぬ願いではありますが、
 空想の翼を縦横に羽ばたかせたくなる
 意欲的なアート評論は
 歴史好きな方々にもおすすめですよ。
 カラー図版も多数収録されているので、
 アート好きな活字マニアさんも、
 ぜひ、一読を♪
 
 
 
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