バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

開けて良かった? 堪えて良かった!

2014年03月04日 21時00分48秒 | バス運転士

朝8時過ぎ… 某総合駅を出発して、途中のバス停でサラリーマンをどっさり降ろして、僅か数名になった乗客と共に、某運動場へ向かって走っていた。A停で3人が待っていたのだが、誰も乗らず… 「あぁ、南の方へ向かう“バスレーン真っ直ぐ路線”のバスを待っているんだな」と思った。

その先の交差点を左折して、B停で4~5人が待っていたのだが、1人しか乗らず… 「あぁ、某駅経由のバスを待っているんだな。多分、そう何分も経たないうちに来るんだろう」と思った。その次のC停でも、1人のお婆さんが待っていたのだが、私のバスには乗らず… 「やっぱり、某駅へ行くんだな」と思った。

さらに次のD停へ… まずは「ピンポォ~ン!」と降車ブザーが鳴り、「次、とまります」と答えた。D停には3人が立っていたのが… あえて車道から離れて、歩道の奥… 住宅の塀の前に立っていたので、「きっと“そのバスには乗りません”と態度で示してくれているんだ。気を使ってくれて、ありがたいなぁ~」と思った。

しかし、降車ランプが点灯していたし、「万が一、乗客だったら!?」という不安もあり… 私はバスを止めて、前&中の両扉を開けた。すると、一人のおばさんが中扉から降りて行ったのだが、歩道の3人に動きはなかった。が! 次の瞬間、背後席に座っていた男性が無言で前扉から降りて行った… まぁ、別にいいっちゃあ~いいんだけど… 勝手にルールと違うことをされると気分が悪いので、「あぁ、やっぱり前扉を開けるんじゃなかったぁ~!」と思った。

が、が、が! 私が両扉を閉めようとした時、住宅の塀際に立っていたお爺さんがゆっくりと前扉に近付いてきたので、「某運動場行きです」と言ったのだが… お爺さんはヨロヨロと乗ってきたのである。私は「えっ!? 乗るの? あぁ、次のE停で降りて地下鉄に乗るのかな? やっぱり前扉を開けといて良かったぁ~」と思った。

続いて、お婆さんも前扉に近付いてきて「あのぉ… このバスは某駅へ行くんですか?」と言ったので、私は「いえ… 行きませんけどぉ…」と答えた。すると、お婆さんは「お爺さん、お爺さん、某駅へ行かないってぇ~」と、さっきのお爺さんに呼び掛けたのだが反応なく… お婆さんは「すいません、耳が遠いもんで…」と言いながら、これまたゆっくりとバスに乗り込んだ。

そして、バスの中程の座席に座っているお爺さんの前まで行って「お爺さん、お爺さん、某駅へは行かないんですってぇ~」と言いながら、お爺さんの腕をつかんで立たせて前扉へ誘導… まずは私に「すいませんでしたぁ~」と言い、続けて車内の乗客に向かって「すいませんでしたぁ~」と頭を下げてから降りて行った…

その時、私は「あぁ~ やっぱり前扉を開けるんじゃなかったぁ~!」とは思わず、なぜかしら笑いが込み上げてきてしまって… バスの中には急いでいる乗客もいるだろうからと、それを表情に出さないように堪えるのに必死だった。実際、その次のE停では2人が降りたのだが、1人は地下鉄出入口の方へ走って行った… 私は「やっぱり笑いを堪えといて良かったぁ~」と思った。チャンチャン!