佐川急便には格別の思いいれがある。
昭和50年頃、私の尺八仲間が 佐川に勤め、5年で家を建て、
会社を辞めた。「5年以上は勤まらない。体を壊す」と
言っていた。当時、20代で「月給50万、5年で家が建つ」と
聞いてびっくりした。しかしそれに値するだけの猛烈、
壮烈な働きだった。
私は、保険会社の広報部で社内報ビデオを担当していた時、
佐川急便の「社内報ビデオ」を見せてもらったことがある。
見せる対象は、社員ではなく、その家族。毎週各自が、その
ビデオを家に持って帰り、家族に見せる。一家の主人である
自分の夫が、父親がいかに会社で一生懸命働いているか、
家族の理解を得るためのものなのだ。
とにかくすごい。テーマは「他社よりも、引き取り時間は
遅く、配達は早く、料金は安く」。配達のかたわら企業に
飛び込んで、「どこの業者を使っているか。集荷は夕方6時
なら、当社は7時でいいです」。そして、「他社が翌日10時なら
9時に届けます。料金は、他社が1,500円なら、うちは1,300円で」
と、仕事をとってくる。新規取引先企業の獲得もノルマなのだ。
そして、その品物が、翌日9時までに高松まで届けられるまでの
ドキュメント。荷物を積んだトラックが、深夜東京を発って、
ひたすら東名、名神を走り、夜明けとともに四国大橋を渡る。
日の出に輝く橋を渡るシーンでは、思わず見る人から拍手が
起きる。約束の時間ギリギリに品物が到着した時には、「走れ
メロス」ばりの感動で、目頭が熱くなった。そのような映像が
毎週毎週作られる。佐川急便の社内報ビデオは、「社内ビデオ」
コンクールで大賞に輝いた。
佐川急便の猛烈な働きぶりを、私はビデオで鮮明に記憶した。
ところが、マスコミで叩かれてからの佐川はなんか、元気が
ない。「追いつけ、追い越せ」のライバル、くろねこ大和に
水を開けられているようだ。
我が家から車で北に2分、南に2分の二箇所に、くろねこの
営業所がある。留守をする時は「営業所留め」にして、
都合の良い時間に引き取りにいくのにも便利だ。
佐川急便は、時間指定もできず、いつも留守中に来る。くろねこ
なら、伝票にドライバーの携帯番号が書かれているので、すぐ
連絡をとって、夜9時までなら届けてくれる。佐川は、港区の
方から来るし、全く連絡がとれない。こちらも留守がちなので
時間指定ができない。
ヤフオクで300円で落とした筝の送料が、くろねこが700円のところ 佐川は8,820円!。
かつての「どこよりも早く、安く」の佐川はどうしちまったん
だろう。