ケイの読書日記

個人が書く書評

垣谷美雨「ニュータウンは黄昏れて」新潮文庫

2023-06-13 14:46:50 | 垣谷美雨
 賃貸か持ち家か…本当に永遠の難問ですなぁ。
 ちょっと前、ブログにUPした「87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし」の多良美智子さんは、保守・管理・修繕はすべて公団がやってくれるから、だんぜん賃貸の方がオトク!って書いてるし、前々回ブログにUPした「老いとお金」の群ようこさんは、ポリシーとして賃貸派で、最近自分のライフスタイルにあわせ、ちょっと小さめのマンションに引っ越したと書いている。

 うんと高齢になると、年寄りには部屋を貸してくれないなんて話も聞くから、なんとか住居だけは確保しておくため買う、という考え方の人も多い。
 でも住居って、買っただけじゃ終わらないんだ。固定資産税だけじゃなくて、建物の経年劣化を遅らせる修繕費は本当に大きい。分譲マンションは管理費を積み立てているだろうが(それでも大幅に足りない)一戸建てで計画的に修繕費を貯めている家庭って、どれだけあるんだろう?
 義姉宅は、新築から30年ほどたった時、お風呂が壊れ、修理しようにもお金が足りず、お風呂は週に2,3回近所のスーパー銭湯に行っていた。どちらにせよ、しばらくしたら高齢者施設に入居したから良かったけど。

 この「ニュータウンは黄昏れて」は、著者の垣谷美雨さんの実体験が元になっているらしい。バブル崩壊前夜に買ってしまった分譲団地。20年近く経つ今もローンを抱え、主人公の主婦は節約に必死だ。その上、老朽化による建て替え問題が持ち上がり、住民たちの意見は真っ二つに割れる。
 そりゃ、現在の5階建てを12階にして増やした部屋を売りに出し、建築費をチャラにする案が出ているが、そんなにうまい事いくだろうか? 売れなかった場合、多額の借金を抱えることになる。最初はセールストークでうまい事言っていた大手や中堅のゼネコンも、採算が取れないと次々撤退する。
 分譲団地の住民たちも、それぞれの家庭の事情を抱えて…。

 こういったマンションの老朽化問題って、今後次々と表面化してくるんだってね。ああ、本当に大変だ。
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垣谷美雨「あなたの人生、片づけます」双葉文庫

2023-05-15 14:38:55 | 垣谷美雨
 ハウツー本じゃなくて小説。4人の片づけられない男女に、片づけ屋・大庭が指南する。
 ケース①は、不倫で疲れ切っている30歳過ぎのOLが、マンションの汚部屋で暮らしている話。ケース②は、妻に先立たれたおじいさんに、基本的な家事のスキルを身につけさせる話。ケース③は、先祖が商売に成功し豪邸を建てたが、今ではお婆さんが一人暮らし、大きなお屋敷を持て余している話。ケース④は、ちょっとレアなケース。中学生の息子が交通事故で亡くなり、何もかもがどうでもよくなった母親の話。

 いろんなケースがあるが、③に多くの人の共感が集まりそう。年老いた親や親せきの家の片づけで途方に暮れている人って多いんじゃない?
 昔、三世代四世代で暮らしていて、田舎なので敷地も広く庭もたっぷりあって、部屋数も多い。しかし子どもは巣立っていき結婚し、新しい土地で家を建てて暮らす。孫たちも小さな頃は遊びに来たが、大きくなったらサッパリ。夫にも先立たれ、今はひっそり老女一人で暮らしている。
 都市部に家があれば、子どもや孫が帰ってくるかもしれないが、交通の便が悪い田舎なので、その望みもない。納戸がたくさんあり、そこに押し込めるので床に物が散らばっていることはないが、とにかく納戸という納戸にはには物がギッシリぱんぱんに入っていて、子どもたちからは後の事も考えてどんどん捨てろと言われているが、なかなか捨てられない。
 こんな話、今の日本ならいくらでも転がっている。

 そういう私も、父は30年前に亡くなり母は施設にお世話になっていて、兄も10年ほど前に病死したので、空き家の実家を片づけるのは私しかいない。業者に頼むと100万円くらいするという話なので、何とか自力でやろうと、ゴミの日には出しているが…。「買うのは簡単だが、捨てる時はすごく難しい」というのが実感。捨てる時の事を考えて買わなくちゃね。

 もっとすごい話もある。私のダンナのお姉さん宅だが、高齢者施設に入るため自宅と土地を売却しようとしたら、家の中の家具や衣類や食器などの処分費として、500万円を売却金額から差し引くと言われたらしい。だから親せき総出で何週間もかけて処分した。当事者は年を取っていてできない。だから業者に頼まないんだったら子どもや親せきがやるしかない。よくもまあ、こんなに物を集めたもんだ。感心する。「捨てるの嫌い、買うのが好き」という人だからこうなる。私のダンナも同じタイプだから怖い。
 そして、捨てることができない人は、大きな家に住んではダメだとつくづく思う。空いた部屋にどんどん物を詰め込んじゃうから。小さな家でちんまり暮らそう。
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