ケイの読書日記

個人が書く書評

樋口恵子 「老いの福袋」 中央公論新社

2023-07-23 16:01:29 | その他
 最近、こういった老いをテーマにしたエッセイを読む機会が多い。自分のこれからの指針を探しているんだろうね。
 ただ、読んだからといって特別に役に立つ事が書いてある訳じゃないし、目からウロコが落ちる訳でもない。それでも、こんな立派な経歴を持った人でも、そうなんだ。(樋口先生は1932年東京生まれ。時事通信社、学習研究社、キャノンを経て評論活動に入る。介護保険の実現に尽力する)自分なら仕方ないね。なんてホッとする所も多いのだ。

 一番、笑って自分も気をつけなくちゃ!と思ったのが、和式トイレの話。樋口先生、お悔やみごとがあり、地方に出かけ帰りにトイレを拝借。しかし和式トイレだったので用を足した後、立ち上がれない!!!大ピンチ!壁に掴む場所はどこにもなくツルツル。真っ青になりましたが、幸いその時は娘さんと出掛けていたため、いつまでたっても戻ってこない母親を心配して、トイレをのぞきに来た娘さんに助けてもらって無事帰還できたそうです。
 笑い転げている、そこのアナタ。本当に笑い事じゃありません。私も、和式トイレには絶対入らないと固く心に誓いました。しかし、昔の日本人はどうしていたんでしょうね。

 それから、第2章のなかに書かれてある「体が老いると家も老いる」については実感している。なんとか持ち家を手に入れ、さあこれで老後は何とかなる、と思うのは大間違い。新築でも30年ぐらいで大規模リフォームが必要なんだ。特に水まわりは絶対!! 
 親戚宅では、給湯設備が老朽化でダメになり、お風呂に入れなくなったので、週2回スーパー銭湯に行っていた。(今は高齢者施設に入所)給湯設備やお風呂をリフォームすればいいじゃん、と思うかもしれないが、これがまた大変。お金もかかるし時間もかかる。 床や壁を剥がして配管しなおすわけだから、何週間か何か月、引っ越さなくてはならなくなる。
 我が家では、なんとかダンナがホームセンターで部材を買って自分で配管しなおしたから出費を抑えられたけど、業者さんに頼むと大変な額になる。
 マンションのように、修繕費を積み立てておくべき。

 「金持ち」より「人持ち」でハッピーに!という考えは正しいが、ある程度お金がないと、友人との付き合いにも支障をきたすからね。お金は本当に大事です。
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角田光代 「坂の途中の家」 朝日文庫

2023-07-10 17:15:39 | 角田光代
 母親が8か月の乳児を風呂場で溺死させた事件の、補充裁判員となった主人公・里沙子は、容疑者の証言・容疑者の周囲の人たちの証言を聞くうちに、彼女の境遇に自分を重ねていくようになる。

 里沙子と被告人・水穂の境遇というのは、確かによく似ている。二人とも小さな女の子がいて、出産前は働いていたが今は専業主婦。二人とも、子どものころから成績が良く、高校卒業後、上京して大学入学。ただ、二人とも育った家庭は、地方ではありがちな保守的な家庭で、東京の大学に進むことについては親は良い顔をしなかった。しかしちゃんと仕送りはしてくれた。
 大学では友人もでき、学生生活を謳歌。卒業後は、うるさい地元には戻らず東京で就職。つきあっている男性と結婚し、子どもにも恵まれる。
 本当にどこにでもいる人なんだ。

 ただ少し一般的でないと感じるのは、二人とも子育てに全く実家の母親の手を借りなかったこと。赤ちゃんを産んだことのない人には分からないかもしれないが、これって本当に大変なことなんだ。
 実家の母親と折り合いが悪い人は大勢いるが、出産なんて言う緊急事態には、親を頼る人がほとんどじゃないかな?出産時にも顔を会わせたくないほど母親が嫌いって、どういうケース?
 母親がアルコール依存症でいない方がまし、別の男性と再婚していてもう実家とは呼べない、新興宗教に凝り固まっていて自分も入信させられる…とか思い浮かばない。

 この里沙子のお母さんや水穂のお母さんは、ただ娘と価値観が合わないだけで、ここまで娘たちに嫌われるのは気の毒な気がする。特別に片寄った考え方をしている訳ではない。地方で生まれ育ったこの年代の女性たちとしては当たり前の事だろう。

 それにしても、この水穂という人は、同情すべき余地はあるがアンバランスな気がする。経済的な理由で挙式しなかったのに、世田谷に一戸建てを購入って不思議。そんなに簡単に買えるものなの? 育児ノイローゼというより、将来的な経済的不安も大きな理由のような気がするなぁ。
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