ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ「浮世道場」

2006-10-27 14:45:20 | Weblog
 群ようこの読書エッセイ。彼女は読書エッセイを数冊出しているが、これはちょっと毛色が変わっていて古典が取り扱われている。

 私でも知っている有名なものを挙げると「御伽草子」「蜻蛉日記」「方丈記」「解体新書」「紫式部日記」「雨月物語」「風姿花伝」など。


 さすがに「源氏物語」は入っていない。彼女は「全く自慢にならないが私は『源氏物語』を読んでいない」と書いている。

 そういえば、彼女は大学時代の夏休み2ヶ月ほど渡米していたことがあり、そこで日本文学専攻のアメリカ人女子大生と出逢い、源氏物語の事をいろいろ尋ねられ答えられないので困った、という話を読んだ事がある。

 群ようこが「日本人のほとんどは『源氏物語』を読んでいないよ」と言うと、その牛乳瓶の底のような分厚いメガネをかけたアメリカ人女子大生は「ナゼ日本人ハ、コンナニスバラシイ自国ノ文学ヲ読マナイノデスカ?」と詰め寄ったと言う。


 そうだよねぇ。私も20歳ぐらいの時、円地文子の現代語訳「源氏物語」を読んだけど、まったくつまらなかった。雅やかさ、華やかさが全然なく、がっかりした。

 人生の折り返し地点を、私はもう過ぎているが、死ぬまでに一度『源氏物語』を原文で読まなくっちゃ、と強迫観念にとらわれています。
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上野千鶴子・信田さよ子共著「結婚帝国 女の岐れ道」

2006-10-22 17:37:01 | Weblog
 2年ほど前に買って読み始めたが、カタカナの専門用語が多かったので、途中でほかってしまった。
 しかし、それではあまりにも情けないと、今回頑張って最後まで読み通す。


 上野千鶴子は、あの社会学者の上野千鶴子。対談相手の信田さよ子は、臨床心理士、原宿カウンセリングセンター所長。私は知らなかったが、業界では結構有名な人らしい。


 こういった本を読むといつも不思議に思うのだが、なぜ彼女たちはそんなに単純に「男=支配者、権力者  女=被支配者、虐げられた性」と声高に叫ぶのだろうか?
 たしかに単純に図形化しなければ理論化できないのかもしれないが、あまりにも雑で大雑把。


 例えば、父親が幼いわが娘をお風呂に入れる。「うちの子はホントにかわいいなぁ。こんなカワイイ子を他所の男の所へ嫁にやるなんて許せん!! その前にオレが一発やってやる」

 確かに下品な発言だが、この言葉をもって「オマエは自分の娘に言葉による性的虐待をした。けしからん!!」と糾弾するのは、ちょっと父親が気の毒なような気がする。


 また、信田はカウンセラーの現場で「実父や実兄からレイプされた」という相談を受ける事もあるだろうが、それをすべて真に受けるのはどうかと思う。
 それとも、カウンセラーは決して患者の言葉を疑ってはいけないのだろうか?

 でも、事実でないことも混じっているんじゃなかろうか?
 「そんなつらい経験で嘘をつくわけがない」と思う人は多いだろうが、近親相姦を恐れるあまり、頭の中が妄想でいっぱいになる事もあるのだ。
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エラリー・クイン「シャム双生児の秘密」

2006-10-17 15:40:23 | Weblog
 国名シリーズ第7弾。

 休暇から帰る途中のクイーン親子は山火事にまきこまれ、やっとのことで山頂にある屋敷に辿り着く。
 そこで不気味な一夜を過ごしたが、翌日、なんと屋敷の主人のザヴィヤー博士が射殺体で発見された! 
 しかし、状況はそれどころではなくなり、山火事はドンドン広がりとうとう食料品も底をつき屋敷からも森の向こうに炎が見え始める。


 山火事の描写が素晴らしい。クイーン親子も最初のうちは、麓の人が山火事を消し止めるまで山頂の屋敷で足止めか、なんてのんびりかまえていたが、一向に火が消える気配が無い。
 空一面に灰が漂い、肌を汚し衣服を汚し、呼吸するのも苦痛になる。暑さは耐えがたいが、逃げ出したくても逃げ場が無い。


 そう、殺人事件で1人や2人が死んだって一体それがなんだ!! こっちは生きたまま焼死体になっていくんだ、その恐怖に比べたら…と、開き直りたくなるようなストーリー。
 だいたい、死に瀕した人間がトランプを半分に引きちぎれるだろうか? トランプは結構かたい。引き裂くには指先の力が相当いるよ。


 推理小説としてはイマイチですが、サスペンスとしては面白い。

 これで国名シリーズ読んでいないのは「チャイナオレンジの秘密」だけとなった。よし!!ファイト。
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島田荘司「斜め屋敷の犯罪」

2006-10-10 13:05:30 | Weblog
 財界の大物が引退し、北の果てに奇妙な建物をたて隠居した。5度ほど傾斜している斜め屋敷とその隣の斜塔。
 クリスマスに客を招き賑わっていたその屋敷で、2夜連続の不可解殺人がおこる。
 助手、石岡を引き連れ、御手洗潔登場!!!


 犯人の見当はすぐつくが、殺人のトリックが分からない。最後にタネあかしされる。確かに不可能ではないだろうが、そんなにうまくいくだろうか?とも思うが、なかなか凝ったトリック。


 奇妙な屋敷や等身大の不気味な人形が出てくるので、少し「黒死館殺人事件」を思い出したりするが、御手洗と石岡が登場すると一気にコメディになっちゃうのよね。
 吉本のステージに立っていても、なんの違和感も無いだろうこの2人。


 読んでいて一番胸がドキドキしてくるのは、トリックでもなければ殺害現場の描写でもない。
 斜め屋敷と隣の斜塔にかかる『跳ね橋』(中世ヨーロッパのお城によく出てくる上げ下ろしできるヤツ)
 斜塔の最上階に部屋はあるが、地面から斜塔に入る入り口は無く、斜め屋敷の3Fから扉に見える階段橋を倒して斜塔側にひっかけ行かなくてはならない。
 いくら手すりが付いているからとはいえ、これは怖い!!

 天気の良いポカポカした日ならともかく、真冬の夜雪が降る中、とうてい渡れないよ。突風でも吹いたらどうする?すぐに転落死です。

 小説の中で、招待客が渡る場面がありますが、私は勧められてもゼッタイ渡らないですね。
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群ようこ「ヒヨコの蠅叩き」

2006-10-02 16:00:16 | Weblog
 小野不由美の「屍鬼」があんまりにも怖いので、ナンシー関と交互に読んで、怖さを中和しようと思ったが、ナンシー関では中和剤にならず、新たに群ようこのエッセイを借りる。

 でも群ようこのエッセイは面白すぎて、これだけでどんどん読めてしまい、結局「屍鬼」は中途半端な読み方でTIME UP。図書館に返却した。
 
 いやー、怖いですねぇ。私にはホラー小説は無理。


 群ようこのエッセイはとても面白いのだが、ソレガドウシタ?という気もする。
 まあ、売れっ子作家の日常を垣間見る事が出来て、なんだか自分も作家気分を味わう事ができるが。

 しかし、意外に思ったのは(大変失礼だが)群ようこの書いた文章が入試問題や問題集によく使われているらしい事。
 最初、承諾書が群ようこに送られて来た時、彼女はびっくりしてしまったらしい。(私もびっくり)

 入試問題といえば、評論文や社説を思い出すので本当に意外。でも、平易な文章で読みやすく、評判いいかも。
 入試で群ようこを初めて読んで、それからファンになったと言う人もいるかもしれない。
コメント (2)
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