ケイの読書日記

個人が書く書評

「法月綸太郎の冒険」を読んで

2005-09-30 15:14:15 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「法月」って「のりづき」と読むんですね。私ずっと「ほうげつ」と読んでいました。恥ずかしいです。


 身内に警察の上層部の人がいる、という設定は浅見光彦と同じです。
 そりゃそうだ。警察の調べた細かな捜査情報がなければ、推理なんてできないよ。綸太郎では、親父。光彦ではうーんと年上の兄。


 浅見光彦ファンの方には申し訳ないが、私、浅見光彦がなぜあんなに人気があるのかわからない。テレビドラマや映画、マンガにもなっている。
 名探偵としては、あまりにもノーマルすぎて、つまらない。良家の出身で、ハンサムという設定なので、レディスコミックには向くだろうけど。


 この短篇集には7作品が収められていますが、その第1作『死刑囚パズル』は本当におもしろい。なぜ死刑囚は死刑執行当日に殺されたのか、その動機は?方法は?

 読んでいる途中、これエラリークイーンにえらく似てるな、と思った箇所もありますが、それでも十分おもしろい。
 しかも、この作品はデビュー前、大学の推理小説研究会の同人誌に発表した作品が母体となっているそうです。
 すごいねえ、なんて水準の高い同人誌なんだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」を読んで

2005-09-24 22:06:32 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 ドイルではなくてシャーロキアンの書いたホームズ・パスティーシュ。(どうも贋作ホームズのことをこう言うらしい。お菓子みたいな名前だ。)
 シャーロキアンが書いたんだから、ホームズはすごくかっこいいし、ワトスンもドイルの書いたものより素敵だ。

 ここには、ホームズはこうあって欲しい、ホームズだったらこうするだろう、というシャーロキアンの夢が、一杯つまっている。ここにはワトスンがいなくて少ししょんぼりしているホームズ、人種的偏見を持っているホームズ、トシを取って記憶力がうすれたホームズはいない。
 若くて行動力があり、一を聞いて十を知る不世出の天才のエッセンスが、最初から最後までギッシリつまっている。

 私はクリスティも大好きだし、素晴らしいストーリーテーラーだと思うが、キャラクターの点では、ポアロやマープルはホームズやワトスンにはるかに及ばないと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジューン・トムソン「ホームズとワトソン」を読んで

2005-09-19 16:56:52 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 シャーロキアンほどではないが、ホームズ大好きっ子の必読の書。

 こういったホームズ研究書は色々出版されているようですが、あまり奇をてらったものは私は好きではありません。(例えば、ワトソンが女性だったとか)
 これはすごくオーソドックス。ワトソンが書き残した事件簿と(ここではドイルではなく、あくまでもワトソンが書いたことになっている)当時の歴史的資料を手がかりに2人の生涯を推理しています。

 それにしても架空の人物に対して、よくここまで情熱を持ってあれやこれや想像できるもんです。
 大空白時代(モリアティとの戦いで死んだと思われた時から、再び『空き家事件』でホームズがロンドンに戻ってくる時まで)ホームズがチベットにいたということで、そのホームズの足跡をたどろうとチベットを旅した研究者もいます。よくやるなあ。
 どうせドイルは、秘境のチベットにいたからホームズの風評が全然イギリスにとどかなかったなんて設定にしたかっただけだろうに。

 イギリスに、いや世界中にホームズオタクがいるんですね。おたくというのはアキワバラだけのものじゃないんです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恩田陸「光の帝国ー常野物語」を読んで

2005-09-16 15:27:36 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 この小説を読んで私は、ジャンプに連載中の「ハンターハンター」、萩尾望都の大昔のマンガ「ポーの一族」それから「ハリーポッター」を思い出しました。

 不思議な力を持つ一族、というのは昔から繰り返しマンガや小説の題材になってきました。ただ、その不思議な能力が、あまりにも凄すぎると、かえって物語としては、つまらなくなる気がします。
 また「常野物語」の中に出てくる『つむじ足』とか『遠耳』は、あまりにも能力がストレートすぎなため少し興ざめ。

 最初から突出した能力があるというより「ハンターハンター」の念能力者のように、もともと優れた素地はあったが、修行して優れた能力を取得するという方がおもしろい。特にセンリツのように、聴力のべらぼうに優れた能力者というのは、現実にもいそうだから、リアリティがあって、よけいに心惹かれます。

 最近の「ハンターハンター」に出てくる念能力者は、あまりにも複雑で破壊力がありすぎるのでかえってつまらない。また、1人の人間が複数の能力を持っているのも、いいようで良くない気がします。

 それにしても、この「常野一族」のおとなしいこと。不思議な能力を持ちながら、穏やかで知的で権力への志向を持たず、普通の人々の中に埋もれてひっそり暮らす常野一族。アクションシーンが無いのも物足りない。
 常野一族の中にも異端児があらわれ、世界征服の野望を持ってくれると、がぜん少年マンガっぽくなるのだが。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリスティ作「複数の時計」を読んで

2005-09-14 17:09:54 | Weblog
大好きな本・読んだ本

この作品を読み進めていくうちに、すごく違和感を感じた。
 クリスティらしくないのだ。ポアロは途中から出てくるが脇役扱いなので、そのせいかな、と思ったが、どうも違う。訳者のせいではないだろうか。

 クリスティのレトロ感、セピア色の感じ、クラシックな雰囲気が全然無い。1963年ごろの作品だからしかたがない、と思う人もいるだろうが、そんなことはない!!それ以降もクリスティらしい小説はたくさんある。

 「複雑そうに見せかける必要があるとすると単純な犯罪に相違ない」というポアロのにらんだとおり、小道具を取り払うと、本当に単純な犯罪。私は気がつかなかったが、いろんな所にヒントがちりばめてあって、注意して読めば、矛盾点から犯人がわかるようになっている。

 この小説のめずらしい所は、ポアロの口をかりて、クリスティが推理小説論を展開している所。
 「アルセーヌ・ルパンの冒険」「黄色い部屋の謎」「シャーロック・ホームズの冒険」コナン・ドイル、ディクスン・カー、チェスタートン、etcetc
 この他いろんな名前が出てきたが、私の知らない名前だから省きます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする