ケイの読書日記

個人が書く書評

皆川博子「開かせていただき光栄です」後半

2011-12-28 21:57:35 | Weblog
 先日、前半の感想のとき「ミステリ仕立で…」と書いたが、それ以上、まるっと推理小説で驚いた。
 それもそのはず、これって初出はミステリマガジンに連載されていたんだね。どおりで。

 80歳過ぎても、ミステリマガジンに連載できる皆川博子に敬服します。

 18世紀ロンドン。解剖教室の教師と弟子達が、教室に出現した死体をめぐって身元と犯人探しをする王道の推理小説。
 正義の味方・盲目の治安判事が登場し、仮説を立てては崩れ、次ぎの仮説を立ててはそれが崩れ…の連続で、頭の中がゴチャゴチャする。

 それよりも、解剖以外のことには全く疎い解剖医師・ダニエル、ダニエルの一番弟子で容姿端麗なエド、エドと同室で人体の細密画を描くのが得意なナイジェル、おしゃべりクラレンス、肥満体ベン、金持ちの息子で骨皮にやせているアル、といった先生と弟子達の青春グラフティにミステリをからませて…という方がもっと楽しめたと思う。
 (誤解してもらっては困るが、これはこれで十分に優れた作品ですよ)


 そうそう、驚いた事を一つ。この時代のイギリスは(殺人でも)訴える人がいて初めて犯罪となるらしい。訴えるにもお金が必要なので、たとえ子どもが殺されて犯人が判っていても、お金がなくて訴える事ができなければ、野放しらしい。
 という事は…貧乏人を殺し放題!?
 この時代のロンドンに生まれなくてよかった!


 物騒な言葉が並びましたが…それでは皆様、よいお年を!
 



コメント (2)
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皆川博子「開かせていただき光栄です」

2011-12-23 13:21:53 | Weblog
 いつもは5日目(遅くても6日目)にブログの更新をしているが、いくらぐうたらな私でも、さすがに年末は忙しい。半分しか読めなかった。残り後半は年内に何とか読みたい。

 皆川博子の最新作。もう80歳を越していると思うが、旺盛な創作力でなによりです。

 18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見される。四肢を関節から切断された少年と、顔をつぶされた男性。
 増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たち。
 そこに治安判事が部下を連れて現われ…。


 この時代、産業革命が起こったイギリスでも、キリスト教の影響はすごく強かったろうから、先端科学であったが屍体を切り刻む解剖学者たちは偏見にさらされた。
 正規のルートから屍体が手に入らず、墓あばきのゴロツキから屍体を買うのだ。

 それと、ロンドンの貧民窟や監獄の衛生状態・治安の悪さといったら、読んでる私がペストになりそうだ!!

 日本でも江戸時代そうだったのかなぁ。いゃあ、やっぱりロンドンの貧乏人の方が悲惨だったろう。だって、これじゃ落語噺が出来る余地は無いよ。あまりにも悲惨すぎて。
 江戸時代は貧しかったにせよ(飢饉の時は除いて)それなりに生活が成り立っていたんじゃないだろうか?

 なんにせよ、この作品はミステリ仕立で期待がもてる。後半を読むのが楽しみです。
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「作家の猫」平凡社コロナブックス

2011-12-17 10:51:00 | Weblog
 カバー表に目を奪われる。中島らもの『とらちゃん』
 カバー裏にも惹きつけられる。室生犀星と『ジイノ』なんと猫が火鉢に手を掛け温まっている!!

 他にもお宝写真がいっぱい!
 大佛次郎(この人は猫好きで有名)が、食事中の猫を見守っている写真がある。猫がずらっと並んで、自分の目の前のお皿のゴハンを食べている、その数7匹!!
 よくもまあ、他のお皿には目もくれず、お行儀よく自分の皿のゴハンを無心に食べるものだなぁ。自分の分はあっという間に食べてしまって、食の細い猫のゴハンを狙うジャイアン猫が必ずいると思うけど…。
 大佛次郎が、生涯に飼った猫は500匹以上になるらしい。

 面白かったのは猫嫌いの方。
 夏目漱石は『吾輩は猫である』を書いたが、夫婦揃って猫は好きではなかったようだ。吾輩に名前が無いのには理由があった。

 それから意外なのは宮沢賢治。作品にはよく猫が出てくるが、猫嫌い。残念だなぁ。煤で汚れたかまど猫の話なんか、すごく好きだったのに。
 志賀直哉も猫嫌い。(この人はそんなイメージがある)

 大御所は中国の魯迅。この魯迅も猫が大嫌いで、虐待している事を堂々と自分の作品に書いてあるらしい。
 今だったら、お巡りさんに捕まるよ。
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皆川博子「壁  旅芝居殺人事件」

2011-12-12 14:22:30 | Weblog
 芸達者な皆川博子が、どんな本格推理小説を書くのか、すごく楽しみで読んだけど…期待を裏切らない秀作。
  
 昭和30~40年ごろの九州地方での話だろうか?
 旅役者一座が、桔梗座という芝居小屋でけれんの芝居をかけている。そのクライマックスで座長である花形役者が綱から落ちた。大騒ぎの中、二番手の役者が煙のように消えてしまう。
 それからの一座に次々と起こる、殺人、自殺、失踪…。とうとう一座は解散。座員はバラバラになり座長は行方不明に。

 それから15年。桔梗座は時代の波に逆らえず、とうとう取り壊され、駐車場になる事になる。
 名残を惜しんで、あちこちから旅役者が最終公演を飾ろうと駆けつける。その中に見覚えがある不審な男が一人。彼が来てから古い使用人に動揺がおきて…。


 横溝正史の作品にも旅役者一座は時々出てくる。戦中・戦後の娯楽のない時代、大変な人気だったんだろう。
 豪華絢爛でありながら、うらぶれた侘しさ・みじめさが横溝作品によく似合った。

 この作品は、芝居用語(歌舞伎用語)、劇場用語、和装用語がどっさり出てきて、若い人には読みにくいと思う。昭和33年生まれの私でも、分からない言葉がいっぱい。
 歌舞伎のキメ台詞や割り台詞も、ふんだんに出てくるし。

 だから、私よりもかなり年配の人で、若い頃、近所に旅芝居一座がやって来て、せっせと通ったという思い出がある人なら、すごく楽しめるんじゃないかな?
 私では読み取る能力に欠けるね。
 それでも、十分に面白いです。
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ケイの心の俳句

2011-12-08 11:39:19 | Weblog
みぃ太郎 おまえは猫の 置物か
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