ケイの読書日記

個人が書く書評

荻原博子「隠れ貧困」 朝日新聞出版

2021-10-30 16:22:41 | その他
 サブタイトルは「中流以上でも破綻する危ない家計」とある。第1刷発行は2016年3月30日。だから、そんなに古い本でもないが、本の中の家族サンプルがちょっと古いような気がするなぁ。

 年収800万円の中堅銀行の課長職男性42歳。奥さんと小学生の子ども2人、犬が一匹という家庭だけど、奥さんが専業主婦なんてありえないよ! 赤ちゃんがいるならともかく、小学6年生と4年生で、しかも中学受験を目指しているなら、まともな金銭感覚を持っている人は働きに行ってると思う。ファイナンシャルプランナーに相談する以前の問題。

 こっちは年収1000万の中堅機械メーカーの営業部長50歳。奥さんと子ども高校生大学生の4人家族。この奥さんも子どもが高3大学2年なのに専業主婦なんて、どういうつもりなんだろうか?高3の子がストレートで志望校に入学できるか分からないし、大学2年の子が4年で卒業してすんなり就職できるかも分からない。おまけに住宅ローンは70歳まであるし、年金で住宅ローンを払うつもりなの?
 どう考えても、奥さんがもっと早く働くべきだった。友達とホテルのランチを食べに行くのが楽しみというけど、同じような年齢のお子さんを持っているだろう友人たちも、みんな専業主婦なの?うっそーーー!!!

 ダンナの知人で30歳代の若い夫婦がいるけど、子どもが5人いる。ご夫婦とも賢い人達だけど、NPO法人で働いたりして、収入は高くない。私のダンナなど口が悪いから「どうするんだ、金も無いのに」なんて言うけど、この少子化の時代、表彰したいよね。郡部に住んでいるので、住宅は借りやすい。なにしろ空き家がいっぱいで、借り手を探している。子どもさんたちが大学に行こうとすると親に頼る事はできないだろうが、給付型の奨学金を出している企業も多いのだ。大学が独自に出している給付型奨学金もね。
 しっかり勉強して色々探せば、道は開けると思うよ。
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フカザワナオコ著「45歳、結婚3年 お金オンチの私にもわかるように家計と老後のことを教えてください!」

2021-10-23 09:57:44 | その他
 ふぅ、長いタイトルそのままの内容。出版社はダイヤモンド社なので、ファイナンシャルプランナーを監修につけた、ちゃんとしたお金の本。

 実は私、フカザワナオコさんのコミックエッセイ『毎日がおひとりさま』を以前楽しく読んだことがあり、このマンガ家さんが愛知県在住だと知って、すごく親近感を抱いたのだ。マンガ家っていう職業の人たちは、みな東京の吉祥寺に住んでいると思ってたので。
 その『毎日がおひとりさま』で描かれていたのは、彼無し金なし金魚のペットという独身女性の日常で、本当に男っ気が無かったけど、結婚なさったんだね。おめでとうございます!
 だんな様は電機メーカーに勤める3歳年下のサラリーマン。お互い独身生活が長かったこともあり、財布は別々。お互いの収入や貯金も把握してないのって大丈夫?と不安に思っていたそうです。
 そうだよねぇ。財布が別々だと、相手が貯金しているだろうから自分はつかってしまってもいいだろう…なんて考えがちになるよね。

 そこで、お金のプロのファイナンシャルプランナーに、家計やマイホーム、保険、老後のお金、NISA、iDeCo、フリーランス向けの小規模共済などの事を色々アドバイスしてもらったようだ。

 正直、私はもう年金生活なので、NISAとかiDeCoとか言われてもピンとこないけど、保険については勉強になった。
 入院したら〇〇円もらえる、手術に応じて〇万円支給とかいう医療保険は、一見いいように見えるが、公的な健康保険で3割負担だし、高額療養費制度があるので、自己負担が高額になっても一定額を超えた分が戻ってくるんだ。ダンナが手術入院した時に助かったよ。

 だから医療保険を払うなら、その分貯金していた方が良いと、私も思う。それでも全く無いという訳にもいかないので、月額2000円のに入ってるけど。保険のセールスウーマンに脅かされても、心を強くして断ります。
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岸本葉子「ふつうでない時をふつうに生きる」 中央公論新社

2021-10-15 14:29:27 | 岸本葉子
 この本には、コロナ感染が拡大し始めてからのエッセイを収めてある。岸本さんは文筆業だから、さほど関係ないのではと思ったが、そんなワケは無く、打ち合わせはすべてリモートに、講演のような仕事はすべてキャンセルor延期になったようだ。

 岸本さんは、もともとパソコンで仕事をしているが、コロナ禍でその比重が大きくなり、しかもパソコンが古いので色々不具合がおこる。
 ある日は、インターネットの接続が出来ないので原稿が送れない。仕方ない。FAXで送ろうとしたら,FAXも不通。サポートセンターに連絡すると、回線は異常ない(ホント?)と言うのでFAXを買い替えた。でも繋がらない。(オイ!FAXの代金はどうしてくれる?)どうも建物全体のひかり回線に関する装置の不具合らしい。
 ということは…マンションの他の部屋の住人もパソコンやFAXが繋がらないの?

 本当に苦労しているなぁ。分かるわぁ。私も大した仕事量じゃないけど、インターネットに接続できないと、本当に困る。何にも出来ない。
 デジタルネイティブより上の世代の私たちのほとんどが、こんなふうじゃない?

 あとがきは2020年11月。比較的、この頃は感染は落ち着いていた時では。つまり、2021年の夏ごろの第5波については書かれていない。第5波はすごかった。倍々ゲームのように感染者が増えていって、救急車を呼んでも搬送先の病院が見つからない。どこの病院もコロナ病棟はいっぱいで入院できないので、自宅療養者が爆発的に増えて、しかもその人たちが自宅で亡くなっているというニュースが流れる。
 地方都市に住んでいる私も、いったいこの先どうなっちゃの?とすごく不安だった。その時の話は、このエッセイ集には入ってないけど、岸本さんのことだ。次の本には入れるのだろう。読むのが楽しみです。
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「ヒントン・アンプナーの幽霊」平井呈一編訳 創元推理文庫

2021-10-09 11:58:08 | 今村夏子
 「ヒントン・アンプナー」というのは英国パンプシャーにある地名で、そこの荘園屋敷に幽霊が出るというオーソドックスな怪談話。怪異話としては大した話ではないが、そのころ(1772年の記述。つまりフランス革命より前なんだ。大昔ってイメージだよね) 上流階級の家庭内の事が色々分かって、その意味では興味深い話。

 こういったバカでかい屋敷って、人手はあるんだろうけど、防犯にまで手が回らず、近所の農夫が勝手に屋敷内に入ってくる事もあったらしい。確かに、アルソックやセコムがあるわけじゃないし、国王の城でもないので、警備の人間が常駐している訳じゃない。

 それに、こういった由緒ある屋敷を買う、あるいは借りる場合、そこで働いている使用人をそっくり受け継ぐことも多いようだ。失業対策だろうか? また、長年仕えてくれた使用人が病気で、あるいは年を取って仕事が出来なくなっても、死ぬまで屋敷内で面倒を見ることもあるらしい。貴族の義務というところか。
 日本でもあったんだろうか? 社会保障の無い時代、身寄りがない高齢者を放り出すのも、世間体が悪いという事か。

 でも、一つ屋根の下に暮らすのだから、仲間意識があるかといえば、そうでもないみたい。作品内で、奥方が幽霊を見たという乳母を「下層階級の人によくある迷信」と言ってるし「8人の召使はスイス人の従僕を除いて、あとはみんな無知な田舎の人間ばかり」とも言ってる。
 現代の感覚からすれば、あまりにも時代錯誤な言い方だが、仕方ないね。18世紀だもの。

 こういった幽霊屋敷のほとんどが、今では防犯カメラがあれば解決する問題なんだ。それにしても、英国人は幽霊屋敷が好きだなぁ。
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「グレイミスの秘密」平井呈一編訳 創元推理文庫

2021-10-02 10:37:32 | 翻訳もの
 このグレイミス城はスコットランドの有名な古城。いわくつきの怪奇話がいっぱいあるらしい。シェイクスピアは、この古城を舞台にして『マクベス』を書いたという。シェイクスピアって16世紀から17世紀の人じゃない? シェイクスピアが執筆する時に、もうすでに幽霊城として有名だったんだから、年季がはいってるね。由緒正しい幽霊城だよ。

 これは実話だというんだから、Wikipediaに載ってるだろうと検索したら、グレイミス城ではなく、グラームス城で載っていた。外国語の名称を日本語表記するのは難しい。
 で、このグラームス城、今は一般公開されていて、城内を観光できるようだ。国や地方自治体の所有でなく、伯爵家の居城というなら、すごい額の固定資産税を払わなければならないだろうから、観光客に有料で公開というのも、理解できます。

 短編の中の怪奇話は、たいして悪さをしない幽霊が出るというたわいのないもので、慣れてない人だと震えあがるだろうが、何度も幽霊を見て慣れてしまっている人は、気にすることなく朝までぐっすり眠れるだろうね。 ゴキブリが出た方が大騒ぎになるかも。

 この城の伝説で、本当に怖いのは『グラームスの怪物』という怪異話。Wikipediaに載っていた。大昔、一族の一員として生まれた子どもが、ぞっとするような恐ろしい異形であったため、一生城内に監禁され、死後に居室ごと煉瓦で塗りこめられた、という話。
 確かに、こういった古い家にありがちな話。恐ろしい異形だから表に出てこられないというより、お家騒動で、正統な後継者が表に出てくると困るので、怪物みたいな容姿だといって監禁・抹殺したんじゃないかな?

 日本でも座敷牢というのは、戦前までさほど珍しくなかった。旧家ほど、そういった設備を自宅に拵えていたんじゃないかな。表に出ると都合の悪い人を、気がふれたとかでっちあげて座敷牢に閉じ込めるんだ。


 
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