ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「英国庭園の謎」

2008-11-30 15:20:29 | Weblog
 ハーイ またまた有栖川有栖作品です。私の方は、読むのも感想を書くのも飽きてはいませんが、このブログを読んでくださる方の中には、もう飽きてしまってる人もいるかもと心配です。

 国名シリーズ第4弾。6篇が収められていて、みな秀作。
 表題作『英国庭園の謎』は暗号物。解くのはすごく大変だが、作るのは意外と簡単かもね。
 もちろん、暗号物は時刻表トリックの次にキライだから、その部分はパスしたけど、ストーリーとしては面白い作品です。
 火村の最後の台詞が秀逸。わかる。だって私も4月生まれだもの。

 英国庭園といえばクリスティです。彼女の作品は裕福な屋敷が舞台だから、立派なお庭が出てくるんです。庭師が2,3人常駐しているような。
 特に、ミス・マープルはゴシップと庭いじりが大好きな老嬢という設定ですから、よりその傾向が強いです。

 クリスティの最晩年に『スリーピング・マーダー』という作品がありますが、その中に没落した名家の崩れかけた廃園があって風情があるなぁと思いました。

 庭師がしっかり手入れした美しい庭園もいいですが、ほったらかしにされた庭の片隅にある荒れ果てた温室。雑草が生い茂り名も知らぬ花がひっそりと咲くその廃屋の下に何が埋まっているのか…。
 ああ、そそられますね。
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有栖川有栖「暗い宿」

2008-11-25 14:39:11 | Weblog
 作者が意識してそうしているのか、それとも出版社の依頼なのか、講談社から出している推理小説(主に国名シリーズ)とは、かなり雰囲気が違う。
 そう、前回読んだ『海のある奈良に死す』も、角川文庫だった。

 どういうふうに違うかというと、有栖川有栖の持ち味である論理性がすっかり影を潜め、ストーリー展開やキャラクターの魅力で読ませようとしている。
 別にそれが悪いと言うわけではないが、ちょっと寂しいね。


 四作品が収められている。『201号室の災厄』は、火村ファン必読の書!! ちょっと火村がカッコ良く書かれすぎているね。
 この作品はマンガ化されているようだ。(サナダさんからの情報)

 『ホテル・ラフレシア』では、犯人当てゲーム劇<トロピカル・ミステリー・ナイト>に参加するためアリスと火村は南の島のリゾートホテルにやってくる。その作中推理劇の犯人を、わたくし、見事当てる事ができました。ウレシイ

 しかし、ラフレシアって確か、世界最大の花で直径が1Mぐらいあり、すごい悪臭がしてそれにつられてやってくる蠅が受粉するという話を聞いた事がある。
 いくらなんでも、もっとキレイな名前を付ければいいのに。
 この作品も、タイトルにふさわしく、もっとグロテスクなお話かなと予想したら、ずいぶんサッパリしていた。
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有栖川有栖「海のある奈良に死す」

2008-11-20 15:33:52 | Weblog
 いつもの有栖川有栖とは違う。国名シリーズと同じタイプの作品を期待して読んだ人はガッカリするかも。


 アリスに「行ってくる。『海のある奈良』へ。」と言い残して出かけた、同業の推理作家が、翌日、福井の古都・小浜で死体となって発見された。
 いったい誰が何のために彼を殺した?

 そうだなぁ。旅情ミステリというか、浅見光彦シリーズと雰囲気が似ている。ただ違うのは、浅見光彦は作品中でモテまくるが、アリスや火村はさっぱりだ、という点。

 特にこの作品には、45歳でありながら、どうみても20歳前半にしか見えない女社長と、30代後半の女流推理作家が登場するので、どう進展するんだろうと読み進めていたが、まったく何も起こらない。

 どうやら有栖川先生は、本格推理小説に恋愛はご法度という考えなのかもしれない。

 小浜が『海のある奈良』と言われていることは知らなかった。小京都と呼ばれているとはガイドブックに書いてあったよ。
 実は学生時代(つまり30年ほど前)友達と小浜へ2泊3日の旅行をした事がある。
 こじんまりした古い町並みで、やたらお寺が多かった。レンタサイクルで私もあちこちの神社仏閣を回ったなぁ。
 火村とアリスの小浜・調査旅行を読んでいて懐かしく思い出した。

 もちろん、オバマ大統領誕生の時の熱狂振りが報道されて、その時も思い出したけれど。
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有栖川有栖「スウェーデン館の謎」

2008-11-15 15:48:30 | Weblog
 雪に閉ざされた山荘とその離れ。その離れで起こった殺人。しかし、離れの周りには、被害者が離れに戻る足跡と第一発見者の往復の足跡しか残っていなかった。
 犯人の足跡はどこに消えた?!

 これも『46番目の密室』と同じ雪の上に残った足跡と煙突が出てきた。
 でも、こちらの方がうんとシンプル。道具も何も使わない。なるほど!! こうすれば犯人の足跡は無くなるか!

 しかし厳密に言えば、死斑の問題とかが出てきて、そんなにうまくいかないだろうが。まぁ、本格物にそんな細かい事を要求してもね。

 この作品には30歳前後の独身女性が2人登場する。
 いつも思うが、火村に好意を寄せる女性っていないんだろうか? 私が今まで読んできた中ではニューハーフのマリリンちゃんだけだったが、私が未読の作品には書かれているんだろうか?
 ”女嫌い”というホームズからの名探偵の伝統を守っている火村だが、ホームズだって彼に好意を寄せてくれた女性依頼人はいたのだ。
 火村は鼻筋の通ったハンサムというのに。

 『ロシア紅茶の謎』の最後で火村は呟く。「俺だって胸をかきむしられるような想いをしたことはあるさ」…本当?


 しっかし日本の男ってキンパツが好きだね。アリス先生が想いを寄せるスウェーデン館の女主人・ヴェロニカは、見事な金髪碧眼らしい。
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有栖川有栖「46番目の密室」

2008-11-10 11:01:05 | Weblog
 45の密室トリックを発表した推理小説の大家が殺された。密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込み、焼かれると言う悲惨な姿で…。
 はたして彼は、自身の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?

 
 すっごく面白い。密室トリックの本家、ジョン・ディクスン・カーの作品よりもうんと上質じゃないか? カーの密室物って、そんなに優れているかなぁ。(確かに『ユダの窓』などは良いと思うけど)
 オカルティックな雰囲気は素晴らしいが、肝心のトリックがなーんだという事が多い。
 かえってポール・アルテの方が優れていると思うこともしばしばあった。(『第四の扉』なんて単純だけど、いいトリックだと思う)


 有栖川有栖も負けてはいない。あちこちに伏線をちりばめ「ああ、あのイタズラには、こういう意味があったのか」「あの時の驚きはこういう感情があったからなのか」と、全ての出来事がつながってくる。

 
 私は「火村が嫌い」と以前書いたが、どうしよう、どんどん好きになってきて困る。初期の作品に遡って読んでいるからかな。
 この「46番目の密室」は、推理作家・有栖川有栖と犯罪学者・火村英生のコンビが始めて登場する1992年の作品。だから2人の大学時代でのなれそめ(?)が、書かれているが、そういう所も好ましい。
 『緋色の研究』のホームズとワトソンのなれそめが好ましいのと同様に。

 それと比較すると、御手洗・石岡コンビには、あまり惹かれるものが無い。石岡があまりにもぼんくらすぎるのかな。
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