ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「ダリの繭」

2006-07-29 23:04:43 | Weblog
 実は有栖川有栖を読むのは初めて。こんなに人気のある人なのにね。
 読んでみて、なんだか森博嗣に雰囲気が似ているなぁ、と思いました。

 ただ森博嗣よりもトリックに無理がない。(他の作品はどうか知りませんが)

 殺された宝石チェーン店社長のトレードマークのひげがないのはなぜか?被害者が下着姿で着ていた洋服が無いのはなぜか?きわめて短時間に手際よく犯行が行なわれたのはなぜか?
 などなど、疑問の解答がきれいに用意されています。


 この推理作家・有栖川有栖と、犯罪社会学者・火村英生のシリーズは人気があり、たくさんの作品が出版されていますが、どうも私は火村英生を好きになれそうも無い。
 もっと、たくさん読めば愛着もわいてくるかもしれないが。


 ところで、この有栖川という名前は、ちょっと前に詐欺事件で借用された、大正時代に断絶した有栖川宮家から取ったんでしょうか?
 知ってる人がいたら、教えてください。
コメント (2)
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米原万理「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」

2006-07-24 17:38:13 | Weblog
 先日、若くして病死なさったロシア語会議通訳の米原万里さんは、1960~1964年プラハにあるソビエト学校で学んだそうです。

 米原さんのお父さんは、日本共産党の幹部で、そこを代表してプラハにある「平和と社会主義の諸問題」編集局で働いていました。そこの職員の子どもは、ほとんどプラハにあるソビエト学校に通っていました。

 その時の同級生が、ソビエト崩壊後、激動の東欧でどのように生きたかを綴ったノンフィクション。

 
 日本の共産党は政権政党ではないので、ソ連が崩壊しても大きな影響を受けなかったけれど、ソ連の衛星国では大混乱だったでしょう。



 ルーマニア人のアーニャの父親は、チャウシェスク政権の幹部だったが、チャウシェスク処刑後も失脚せず、一応は実権のない名誉職についている。
 しかし子どもたちは皆、祖国を捨て、イスラエル、アメリカ、イギリスへ行って帰国する意思は無いらしい。

 北朝鮮でもそうだけど、外国に出国できるのは恵まれた共産党幹部の家族だけ。
 考えてみれば、国に一番貢献しなければならないはずの立場の人が、一番先頭に立って祖国を見限っている。


 また(今はもう解体してしまったが)ユーゴスラビアのヤスミンカの半生も波乱に満ちている。
 ユーゴスラビアに民族紛争がおこり、今まで同国人として仲良くやっていた人々が、分離独立を求め殺しあう。
 ヤスミンカはボスニアムスリムだったので、生命の危険さえ感じる立場に。

 
 民族ってそんなに大事なものだろうか?色々考えさせられる1冊だった。
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エラリー・クイン「ローマ帽子の謎」

2006-07-19 11:11:28 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 ああ、本格派推理小説を読んだなぁ、と思わせる1冊。
 エラリー・クインの記念すべき処女作にして、国名シリーズの最初の作品。


 大当たり満員の劇場内で、突然鋭い悲鳴があがり、死体となった弁護士が発見された。唯一の手がかりは正装につきもののシルクハットが紛失していること。
 なぜ…?そして誰が…?


 論理的であろうと、全ての可能性を考え、それを一つ一つ潰していくので、まわりくどく冗長な所もあるが、それはまあ仕方がない。(法月綸太郎もそういう所がすごくエラリー・クインに似ている)

 国名シリーズのお約束の読者への挑戦状もフェアであろうとする作者の意欲が感じられ好ましい。


 ただ、読んでいる最中すごく違和感を覚えたのは、作品の登場人物がしょっちゅうお菓子をむしゃむしゃ食べていること。大の男がなんでまた、と不思議に思ったがこの時代1920年代アメリカは禁酒法の時代だったんだね。
 アルコールの代わりにお菓子だったんだ。これには驚いた。


 大西洋を渡ったイギリスでは、H.M卿やフェル博士が勤務時間中というのに、スコッチウイスキーを飲んで飲んだくれているというのに。

 クィーン親子が少し気の毒です。
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村上龍「走れ!タカハシ」

2006-07-13 17:35:22 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 コウイチブログのコウイチさんがブログに感想を書いていらして、面白そうだったので私も読んでみました。

 『タカハシ』とは、1970年代後半から1980年代にかけて広島カープで活躍した高橋慶彦のこと。といっても、若い方で高橋慶彦を知っている人は少ないだろうが、地味な広島球団の中では、珍しく全国的に人気があった選手なのだ。
 その甘い容姿と野球センスによって。

 女優の叶和貴子と噂があり、たびたび週刊誌をにぎわした。バラエティ番組のゲストとしても露出度高し。


 かなり前、山口洋子のエッセイを読んでいる時に、彼の名前と出くわしたことがある。
 山口洋子は直木賞作家だが、銀座の高級クラブのオーナーママでもあり、仕事柄プロ野球選手とも親交があった。

 日本シリーズの最中、広島ベンチに陣中見舞いに行ったら、監督やコーチが生きるか死ぬかの大騒ぎで作戦会議をやっているのに、高橋慶彦は山口洋子の顔を見るなり「彼女とはどうすればいいんでしょう?」みたいな恋愛相談を持ちかけてきたので驚いた、という文章があった。(本当かしら?)

 それほど、女の子に追いかけられていたのである。


 ちなみにこの本は、村上龍と高橋慶彦の対談集ではない。普通の人々を主人公にして(タカハシヨシヒコが、ちょっぴりスパイスとして顔をのぞかせる)軽快なスポーツ短篇集である。

 サッカー大好きな村上龍が書いているなんて意外だが、彼はサッカーでも野球でも、華やかな人が好きなんだろう。
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村上春樹「遠い太鼓」

2006-07-09 17:16:38 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 遠い太鼓に誘われて
 私は長い旅に出た
 古い外套に身を包み
 すべてを後に残して    (トルコの古い唄)


 1986年秋から3年間、村上春樹は日本を離れヨーロッパ各地を旅していた。その時綴った旅行スケッチ(もちろん文章の)

 もともと売れている作家だったが、長い間日本を離れるので、行く前には経済的な不安もあったようだが、ヨーロッパ滞在中に書いた「ノルウェイの森」が爆発的に売れ、帰国したときは大ベストセラー作家になっていて、本人もすごく驚いたらしい。


 「遠い太鼓」は旅行記というほどのものではなくて旅に関する雑文。

 「ローマは泥棒がすごく多い」「ギリシャの島々にすんでいる猫は島ごとにキャラクターが違う」「シーズンオフの観光地のもの哀しさ」「ロンドンではアメリカ英語が通じず本当に困った」「ヘルシンキは人々も親切で清潔な町だが食事がまずく寒いので住みたくない」「イタリアの郵便事情は最悪」などなど、ヨーロッパに行ったことのない私にはすごく楽しく読めた。


 また、春樹先生の所は夫婦仲が良くてうらやましい。村上春樹だったら女の子が群がって来そうだが、奥さんに「カミュの異邦人が原書で読めるのに、なぜフランス語で道が訊けないのよ!」と怒られても、じっと我慢の春樹先生に拍手!!
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