ケイの読書日記

個人が書く書評

香山リカ 「今のあなたで大丈夫!」 新講社

2018-06-14 14:04:43 | 香山リカ
 不思議だ。また香山リカの本を読んでしまった。別に、香山リカに生き方を指南してもらおうと思ってる訳でもないのに、読んでスッキリするなんて一度も思った事ないのに…。
 どうして私は、香山リカの本を借りるんだろう? 暇つぶしになって害が無いから? 香山リカさんは誠実な人だと思う。すっごく多くの本を書いているが、それも収入を増やすためというより、彼女の本を読んで、少しでも心が軽くなる人がいれば幸い、と思って書いてるんじゃないか?

 1960年北海道生まれ。私より2歳下だが、ほぼ同年代と考えていい。
 リカさんは、医大生のころから文章を書いてTVにも出てたので、昔からちょこちょこ読んでいたが、若い頃はムカつくこともあった。「そんな事いったって、アナタは女医さんでエリートなんだから可能だけど、普通の人はできないよ」とかね。
 ただ、最近はだいぶカドが取れてきたと思う。(これって私の側の変化なんだろうか?)

 2010年に出版されたこの本には、リカさんのちょっと残念な話も載っている。「ピンチの時には、これを思い出して自分を励ます」という方法を彼女は実践しているのだが、そのアイテムは…。リカさんは落ち込んだ時、こうつぶやく。
 「でも、ミミちゃんに会えたじゃない」 「でも、また『しまだ屋』に行けるじゃない」
 リカさんは、イヌやネコをたくさん飼っているが、動物にはあまり好かれない。でも、ミミちゃんという黒猫だけは、帰るとゴロゴロ言いながら足にまとわりついてきて、心に小さな灯がともったような気持ちになるそうだ。
 そして『しまだ屋』というのは、近所の深夜まで営業している蕎麦屋で、落ち込んだりすると、この店に行って温かい蕎麦を一杯食べると「ああ、おなかいっぱいで幸せ」という気分になり、明日も頑張ろうという気力がわくんだそうだ。

 ああ、なんというささやかな喜びを生きる糧にしている事か!!! あまりにもささやかすぎやしない?
 リカさんって、東京医科大学卒の精神科医で、立教大学現代心理学部教授なんだよ。その人が、ニャンコ1匹、お蕎麦1杯で幸せになるなんて! なんという安上がりな人だろう!!

 自分にとっての『ミミちゃん』『しまだ屋』は何だろうか?と考える。うーーーーん。みぃ太郎はいるけど、帰宅しても寝てるし(足にまとわりつくのは、エサをねだる時だけ)蕎麦はあまり好きじゃない。うどんの方が好きだし。そういえば実家近くにあるうどん屋の「小エビ天婦羅うどん」は、すっごく美味しい。生きててよかった、という気になる。私も安上がりな女だね。
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香山リカ 「老後がこわい」

2017-03-24 10:44:16 | 香山リカ
 『もう親を捨てるしかない』という幻冬舎新書を探していたら、隣にこの『老後がこわい』講談社現代新書があった。香山リカだから、こっちを読もうと借りてきた。
 
 香山リカ氏。1960年生まれなので、私より2つ年下。という事は…立派な50代。未婚で子ナシだけど、なんといっても、ちゃんとした精神科のお医者様で大学教授。それにTVではコメンテーターも務めているし、著書も多数。一般の人より、うんと恵まれている人生だと思うが、それでも先々いろいろ考える事はあるんだろう。

 自分が死んだ時、誰が喪主になるんだろう、親やペットの死をどうやって乗り越えればいいか、自分の入院時の保証人を誰に頼むか、いつまで働けるんだろう、お墓はどうしよう…などなど。

 香山リカさんは、一人っ子ではない。弟さんがいるし、そこには子供も生まれているので、彼らに頼ればいいのよね。弟さんとは仲がいい。リカさんの育った家庭って、エリート家庭にしては珍しく、家族全員仲がいいようだ。特に同業の医者であるお父さんとは、一緒に旅行に行くほど親密。そのお父さんも、数年前に亡くなったけど。

 香山さんの友人が急逝した場合、高齢の親が喪主になることが多いようだ。でも、以前、子どもの葬儀の喪主に、親はなれないと聞いた事がある。逆縁といって。しかし、この少子高齢化の時代、そんなことは言っていられないんだろう。

 
 いろんな心配事があるが、比重が高いのは住居の心配。賃貸の場合、高齢になると、大家さんが更新してくれない事もあるという。だから、気心の知れた友人たちで、グループホームを作ろうという動きがある。
 香山さんには、シングル女性たちが助け合い、適度な距離を保ちながら、一緒に暮らすグループホームを題材にした『眠れる森の美女たち』という小説もある。(小説です。ノンフィクションでない!)かなり前、読んだことがある。
 素晴らしいが…そんなに上手く行くだろうか?というのが正直な感想。

 そういえば、群ようこさんも、老後は友人3人で住もうと約束していて、実際、物件を見に行ったとか。しかし、3人の経済状況もそれぞれだし、要求するものも違うので、買う所まで行かなかったとか。

 親しい友人たちでグループホームを作るというのは、夢のような話だが、一番考えてしまうのは、60~70歳になってから住居を替えると、一気にボケるんじゃないかという不安。特に女って家や家具に執着するから。
 いくらバリアーフリーで新しくキレイな所に住み替えても、朝、目が覚めて「あれっ?ここどこ?私どこにいるの?早くお家に帰らなくっちゃ」と徘徊するんじゃないかと、不安。

 少々段差があっても、古くて隙間風が吹きこんでも、昔から住んでいる家を手直ししながら住み続けた方が、本人の精神にとって良い事なんじゃないかと思う。
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香山リカ 「世の中の意見が〈私〉と違うとき読む本」

2016-12-04 15:04:47 | 香山リカ
 香山リカの新書はよく読んだが、失礼ながらいつもイマイチ。「そりゃそうだけど机上の空論だよね」「やっぱり大学の先生だから、現実が分からないんだ」「それが出来ればやっている。出来ないから困ってる」などなど、心の中で悪態をつきながら読むことが多かったが、この『世の中の意見が私と違うときに読む本』は、ためになったと思う。

 特に第3章「親から無償で愛されなかった人は被害者なのか」は、印象深い。
 世は毒親ブーム。「私の親はこんなヒドイ人だった」「子供の頃、テストの点が95点だと、どうして100点を取らないんだ!と怒った」「大人になった今でも、私を支配しようとする」といった不満をぶちまけるのが流行みたいになっている。
 もちろん「家族だから、分かり合えるはず」なんていうのは幻想にすぎない事はよく理解できるが、それでも「あなたが一応、後遺症が残るような大きなケガをしないで成人できたのは、その毒親がそれなりに配慮してたからじゃないの?」と説教してみたくなる。赤ちゃんをほったらかしにしたら、間違いなく死んでしまうから。

 2012年、大阪で下村早苗という人が、幼子2人を自宅マンションに置き去りにして、何日も遊びまわり、2人を餓死させた事件があった。早苗被告に面会に来た父親と母親は(早苗被告が小学生の時、離婚している)「何があっても私たちの子どもだから、決して見捨てないから」と涙ながらに早苗被告に伝えたそうだ。美しい話だ。
 でも、親でもある早苗被告は、我が子に何をしたの? 自分の親に「決して見捨てない」事を要求しながら、なぜ我が子を置き去りにして「見捨てた」のか。
 こんな事、後からいくら言っても、どうしようもないけど。


 自分もそうだから、よく分かるが、人間って本当に被害者になりたがる。被害者の椅子はとっても座り心地が良くて、一度座ったら離れたくない。永遠に被害者でいたい。
 でも…本当に被害者なの? 加害者の側面もあるんじゃないの? 不都合な真実を忘れるすべに、我々は長けているからね。
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