ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「ペルシャ猫の謎」

2008-10-31 10:59:54 | Weblog
 この短篇は、ちょっとハズレでしたね。いくら国名シリーズと言っても第5弾ともなると、ネタ切れなんでしょうか? (私は順番に関係なくバラバラに読んでいます)
 それとも、この短篇集はあえて正統派に属さないタイプの作品ばかり集めているんでしょうか?

 特に表題作の『ペルシャ猫の謎』にはガッカリ! 表紙もかわいい猫のイラストが描かれていたので、さぞペルシャ猫にふさわしいミステリアスなお話が読めるんだろうとワクワクしていたら…なんですか?こりゃ!?
 アイデアが浮かばず、苦し紛れに書いたとしか思えないなぁ。


 なんとか工夫がみられる作品は…『暗号を撒く男』。犯人を推理するのではなく、被害者宅のあちこちに点在する奇妙なものは何の意味があるのかを推理するお話。
 タネあかしをすれば脱力必至だが、クイズとして読めば面白いかも。

 『赤い帽子』は探偵役が火村ではなく、森下刑事。そのせいか社会派ドラマっぽくなっている。珍しい。
 森下刑事が被疑者の証言のどこに違和感を覚えたかがポイント。

 全体的に見て低調。あまりお奨めできません。
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有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」

2008-10-26 10:11:34 | Weblog
 6編収められているが、秀作ぞろいの短篇集。イマイチたなぁ、と思ったのは「屋根裏の散歩者」と「ルーンの導き」だけ。それも水準以上だろう。

 表題作の「ロシア紅茶の謎」「八角形の罠」は、実行しようと思うと大変な困難が伴うだろうが、不可能ではない。かなりの準備と練習が必要だが、論理的に可能。

 「動物園の暗号」は動物園で殺された飼育係が、不思議なメモを握って発見されたと言う、暗号ダイイングメッセージもの。これは一読の価値あり。
 私にはサッパリ解けなかったが、旅行が好きで日本全国回っている人などに是非挑戦してもらいたい。

 有栖川有栖って、若い頃は結構旅好きで、あちこちに行っていたんだね。意外!


 「赤い稲妻」はこの秀作ぞろいの短篇集の中でも一番出来が良いと思う。
 若く美しいアメリカ人モデルが、マンションの7階から転落死。目撃情報があり、どうも突き落とされたらしい。
 しかし現場に駆けつけた警察官がドアを開けようとすると施錠されていた。しかもドアの内側にはチェーンが掛かっていた。しかし、室内には犯人の姿はない。
 いったい、犯人は何処へ消えた?

 いわゆる『密室物』。変な小細工をせず、きちんとした解答が用意されている。
 さすが、和製エラリー・クインと言われるだけのことはある。
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奥田英朗「空中ブランコ」

2008-10-21 13:23:01 | Weblog
 主人公の精神科医・伊良部先生は、ロッテからヤンキースへ行った伊良部元投手に似てますね。性格ではなく容姿が。(元ヤンキースの伊良部がどんな性格か私は知らないが、ひょっとしたら性格も似ているのかもしれない)

 偶然なのかと思っていたが、この作者の奥田英朗はスポーツにも造詣が深く、プロ野球も大好きらしいので、やっぱり野球選手だった伊良部をモデルにしてるんじゃない? 伊良部という姓自体めずらしいし。

 その元ヤンキースの伊良部がどんな容貌かというと…N.Y.の地元紙に「ヒキガエル」と書かれたそうだから…立派な胴回りの人なんだろう。


 その元野球選手の伊良部を初めてテレビで見た時、私は山上たつひこの『こまわり君』に何となく似てるなぁ、こまわり君が大人になったら、こんなカンジじゃないかしら、と思ったことを覚えている。
 ということは精神科医の伊良部は、こまわり君の成れの果て…じゃなくて成人して立派になった姿?!

 いや、絶対違う!精神科医・伊良部のお父さんは、日本医師会のエライ人らしい。こまわり君の家庭はそんな裕福でもなかったゾ!
 そんな事を考えながら、1冊読み終えた。

 面白かったが評判ほどではない。伊良部先生よりも看護婦マユミに興味がわく。超ミニスカートの白衣を着て、くわえタバコで注射を打つマユミ。いったい過去になにがあったんだろうか?
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有栖川有栖「スイス時計の謎」

2008-10-16 15:31:21 | Weblog
 すごく面白い! ちょっと驚いた。有栖川有栖の長編ばかり読んでいて、こんなものかと退屈していたが、短篇は目の覚めるほどの完成度の高さ!!
 表紙に「誠実にして精妙なる有栖川本格」と書かれてあったがうなずける。
 同じ新本格派の法月綸太郎に似ているね。

 実は、私は名探偵役の火村英生が好きではない。長編ではどうしても火村のうざったい性格に付き合わなければならなくてウンザリするが、短篇ではそういうこともなく、作品のトリックそのものが前面に出てくるから読みやすい。

 私の中では、きびきびと仕事をする英都大学社会学部助教授の臨床犯罪学者・火村英生の好感度は大幅アップ!
 いつもこうだといいのに。

 表題作のほかに3篇収められていて、勿論これらも出来が良い。でもダントツはやはりこの表題作「スイス時計の謎」。

 2年に一度開かれていた、仲間6人だけの同窓会当日。メンバーの1人が殺害され、被害者のしていた腕時計が消えていた。どうも犯人が持ち去ったらしい。いったい、なぜそんな事を?

 物証はほとんどないが、火村が犯人を論理的に追いつめる。そう、犯人はこの人でしかありえない。
 時計の有無だけでよくもまあ5人の中から犯人1人を特定できるものだ。有栖川先生は将棋がお好きなんだろうか?
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ポール・アルテ「七番目の仮説」

2008-10-11 19:52:51 | Weblog
 1938年の夏の夜、ロンドン市警の巡査は奇妙な格好をした男に出くわす。
 足首まで届くコート、手袋をはめた手、つばの広い帽子、顔に当てた白い仮面には25センチはあるだろう嘴がある。中世のペストの医者だ。
 そんな異様な格好をした男が、ゴミ箱を漁っている所に出くわした巡査は職務質問をするが、異常なし。
 男が去った後、ゴミ箱の蓋を開けたら、さっき調べた時にはなかった死体が転がっていた。


 実は、その数時間前、近くの下宿屋で下宿人の青年がペストらしい病気で苦しんでいた。
 中世のペストの医者の格好をした3人が担架で患者を運び出そうと狭い廊下に入った途端、肝心の患者は煙のように担架の上から消えうせるという事件があったばかりなのだ。


 いくらなんでも1938年のロンドンでペストはないでしょう。でも、ペストの医者が登場した時点で、雰囲気は一気に中世暗黒時代にタイムスリップ!
 あのペストの医者の衣装は本当に不気味。死神の画より怖い。

 密室状態の廊下で、患者が煙のように消えたトリックは、中々いいと思う。マジックに詳しい人だったら謎が解けるかもしれない。

 ただ、トリックはいいが、ストーリー特に人間関係がアルテにしては珍しくゴチャゴチャしている。
 もっとシタタカと思っていた人物が、案外気弱な好人物だったり、剛健な人だろうと思っていたら、変態さんだったり。
 キャラの豹変はよくあることだが、ちょっと拍子抜け。
コメント (4)
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