ケイの読書日記

個人が書く書評

ジョン・ディスクン・カー「火刑法廷」を読んで

2005-10-28 16:29:49 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 1930年代のアメリカ。編集者のエドワードは売れっ子作家の書き下ろし原稿を見て愕然とした。添付されている17世紀毒殺犯の写真は、妻マリーに瓜二つだった!
 しかも、隣に住む老人の死が毒殺ではないか、という噂が町中に流れ……。

 カーは推理小説家というよりオカルト作家だと思う。
 だいぶ前に「赤後家の殺人」と「三つの棺」を読んだことがあるが、密室のトリックの方はあまりにも無理があり、いいと思わなかったが、そのオカルティシズムの雰囲気はすばらしい。

 横溝正史が好きな人には、ぜひ読んでもらいたいです。
 怪奇趣味ですがグロテスクでないので、女性向かも。

 毒殺というのは、古今東西女性がよく使う手口らしい。腕力がいらないし、女性の方が料理に近づきやすいからね。それに、うまくやれば、病気や自然死に見せかけることもできる。

 あの林真須美被告の毒入りカレー事件でも、最初は食中毒と発表されたのだ。

 「グリーン家殺人事件」でも「Yの悲劇」でもこの『火刑法廷』でも、一番不思議なのは、ばたばた毒殺されている家の中で、よく人が作ったものを平気で食べているな、ということ。
 こういった非常時は自分で料理を作りましょう。
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エラリー・クイン「Yの悲劇」を読んで

2005-10-25 15:04:27 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「Yの悲劇」あまりに有名なので、だいたいのあらすじを知っている人は多いだろう。私も知っていた。それでも、十分読み応えあり!!

 秀作だった「グリーン家殺人事件」の骨組みをもとに、さらにグレードアップしたのが「Yの悲劇」だ、という意味の文章を解説で読んだので、さっそく読んでみることにした。

 グリーン家も相当、オカルトっぽい家庭だったが、「Yの悲劇」のハッター家は、それに輪をかけてゆがんでいる。
 妖気が立ち込める雰囲気だけでなく、遺伝的な病毒が家族全体をおおっている。

 そんな中で毒殺未遂事件が起き……

 いたるところに伏線がはられ、それを論理的に推理していくと、ただ1人の人物が浮かび上がる。

 私は最初から犯人を知っていて読んだから、とても残念だったけど、この推理小説を読んで犯人を当てた人は、結構多いんじゃないかな。

 推理小説の多くにありがちな「こんなんアリ?!」という箇所がなく、無理のないトリックで、しかもその材料をフェアに読者に公開している。

 さすが、法月綸太郎氏の師匠です。
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「法月綸太郎の功績」を読んで

2005-10-21 15:00:00 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 推理小説家というのは、初期に才能が開花し、作品がたくさん出回るにつれ息切れし、作品の水準が落ちていく、というパターンが多いそうですが、この法月綸太郎氏は逆。どんどん作品の水準が上がっているんじゃないでしょうか。

 そう思わせる5中編集です。

 特に『都市伝説パズル』は秀逸。2002年の第55回日本推理作家協会賞を受賞したそうです。ナットク!!

 そして、あまりにデキがいいもんで英訳されて2004年1月号のエラリークインミステリマガジンに掲載されたそうです。スゴイ!!
 法月氏は大変なエラリークインのファンのようですので本当に嬉しかったでしょうね。

 法月綸太郎の推理小説は、正統派で本格派。
 いるのか、いないのかわからないほど影が薄い人物が犯人、ということはなく
容疑者を読者の前にきちんと並べ、推理の材料をしっかり読者に提示します。
 だから、読者は順序だてて推理を組み立てていけば、謎が解けるはずです。(なかなかうまくいきませんけど)

 ただ作品によっては、主人公の綸太郎に述べさせる仮設→検証が多すぎて、ちょっと飽きちゃう所もあります。

 それでも絶対おもしろい!!!法月綸太郎 おススメです。
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ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」を読んで

2005-10-19 10:23:31 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 推理小説の古典的名作。すごく有名だが、私は初めて読みました。

 推理小説のセオリーどおりに考えると、最初っから犯人が誰かわかってしまうんですが、そのトリックや動機はなかなかわかりません。
 特にトリックは……うーん、こんなんアリ?!と言いたい気もするが、それなりに筋は通っています。

 この推理小説の優れているところは、名門で大金持ちのグリーン家のオカルトっぽい雰囲気。
 何代にもわたって優れた人材を輩出してきたこの名家は、今では内部崩壊をおこし、家族がお互い憎しみあって、誰が誰を殺してもおかしくない状況。
 そこで、強盗にみせかけた殺人事件が起こる。

 主人公のヴァンスは天才探偵のはずなのに、犯人の目星がいっこうにたたず、何人も死人が出るので、まるで金田一耕介のようだ。4人も殺されてから、やっと犯人がわかってもねえ。

 ケチばかりつけてしまったが、とても優れた作品。さすが推理小説の古典。
 ぜひ皆さん、一読あれ!
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「法月綸太郎の《新》冒険」を読んで

2005-10-15 17:00:28 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 作者が知恵を絞り、工夫を凝らしたことが、すごくよくわかる6つの中編集。とてもおもしろい。

 作者は「背信の交点」が、会心の出来であるとあとがきで述べているが、確かにすごいとは思うけどゴメンナサイ、私はトラベルミステリはちょっと苦手。

 私が気に入ったのは「世界の神秘を解く男」。ポルターガイスト現象、超心理学、超常現象、サイ科学などの話がたくさん盛り込まれていて、半分くらいしか理解できなかったが、楽しく読めた。

 この中で「アーサー・コナン・ドイル卿が熱心な心霊主義者で……」という話がでてくる。
 私もこの話を最初に聞いた時、ちょっと裏切られたような気がしたが、でもドイル卿は晩年、息子さんを第1次世界大戦で亡くされ、たいへん気落ちしていたようだし、それにこの時代、イギリスで心霊研究が爆発的に流行したことも影響していると思う。

 アガサ・クリスティの短編で、降霊術会を肯定的に書いてあるものを、読んだこともあるし。

 いくら優れた作家でも、その時代の雰囲気にまったく左右されないのは難しいのではないか。ましてやドイル卿は学者ではない。
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