ケイの読書日記

個人が書く書評

真梨幸子「更年期少女」

2010-08-29 18:13:25 | Weblog
 前回からどうも更年期が続くなぁ。でも偶然です。

 これも、更年期真っ只中の、オタクオバちゃんたちのヨタ話かと思い読んだら…なんと!! 人が5人も殺される立派なミステリだったのだ。驚きました。


 『青い瞳のジャンヌ』という昭和50年代に一世を風靡した少女マンガを、今もこよなく愛する人たちが、ネットでファンクラブを作っている。
 その幹事スタッフ6人のミーティングは《青い六人会》と呼ばれ、平会員の垂涎の的だが、その《青い六人会》のメンバーが次々と謎の失踪やら、殺人事件に巻き込まれる。はたしてその犯人は《青い六人会》の中にいるのか…?!

 マグリット、ジゼル、ミレーユ、シルビア、エミリー、ガブリエル、これが《青い六人会》のメンバーのハンドルネーム。
 もちろん、絹江とか早苗とか枝美子といった本名はちゃんとあるが、彼女達は池袋の高級フレンチレストランで自称貴婦人としてテーブルにつき、給仕に「あら、イヤだわ。パンのクズはらってくださる?」なんて言いつけて、おフランスマダムごっこを楽しんでいる。

 現実の彼女達は、もちろん裕福な人もいるが、50歳になっても親の年金で生活している人、ヒモ化した亭主からDVを受けている人、生活保護を受けていて金銭的に余裕がなく詐欺を繰り返す人、などなど生活が苦しい人が多い。
 だからこそ、こういう虚構の世界にのめりこむんだろうか? 例会ともなるとフリルの一杯ついたブラウスにひらひらのフレアスカート、目一杯若作りする。
 給仕の侮蔑の笑いを知りながらも。

 私もオタク気質があるからなぁ、気をつけないと。
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群ようこ「ぬるい生活」

2010-08-24 17:08:26 | Weblog
 このエッセイ集を読んで、ちょっと悲しくなる。「ああ、群ようこもトシを取ったなぁ」と。

 群ようこは1954年生まれだから今は56歳。このエッセイが書かれたのが4年ほど前なので、52歳頃。更年期障害の真っ只中らしい。

 人間だからトシを取るのは当たり前だが、群ようこというと、大口を開けてガハハと笑い、ジャージをはいてお尻をぽりぽり…という『永遠の干物女』像が自分の中に出来ていた。
 だから、自律神経失調症で体温調節のため、こまめに靴下やら肌着やらストールを着たり脱いだりしている群ようこはイメージできなかった。

 これは、彼女というより、彼女の周りの友人・知人がことごとく更年期障害で困っていて、競い合うように自分の体調の悪さを群ようこに話すからじゃないかなぁ。
 マイナスのオーラに引っ張られるのだ。

 では、私はどうか? 25年ほど前、母親の「更年期障害で具合が悪いの」発言のほとんどを右から左に聞き流していたおかげで、今のところこれといった不具合はない。
 ありがたいことである。
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岸本葉子「自問自答」

2010-08-18 11:09:21 | Weblog
 帯に「微妙なキマジメさが笑いを誘う、岸本ワールド全開のエッセイ集」と書かれてあったが、やっぱり同じようなユーモアを、皆も感じるんだね。

 そう、岸本さんのエッセイは、ほんわか面白い。大笑いするわけではないがクスっと口元が緩んでしまうのだ。

 例えば『お弁当持って』というエッセイの中の文章を抜粋してみる。


 「小型の風呂敷のような布に包まれたお弁当を、おもむろに鞄から取り出す。
  このときが、かなりいい気分。
  予定どおり、持ってくることができた達成感。お弁当なんていくらでも売っているのに、楽さに流れなかった自分への肯定感。
  詰められる残り物があるのも、日頃より家で作っているからこそ。そのように自分を律する健康的な暮らしの出来ている満足感(それが普通?)
  買ってきたお弁当の蓋を今まさに取っている人も、体のことを考えれば、家で作ったのを食べたいはずで、もしかしたら羨望を集めているかもという優越感(この辺になると全く根拠なし)」

ね、お弁当一つで、ここまで幸せになれる人って、少ないでしょう?

 性的に奔放だという事をウリにしている女性作家が多い中で、岸本さんのこのすがすがしさを見よ!! と声を大にして言いたいです。
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岸本葉子「買おうか どうか」

2010-08-13 11:02:39 | Weblog
 わが敬愛する岸本さんは、とても真面目な人である。買い物一つとっても、本当に一生懸命考える。
 これは本当に必要なのか、買ったらどこに置こう、どこにしまおう、今まで使っていたものはどうしよう…etc

 472円の吸盤フック(わかります?釘を使えないガラスなどにピタッと吸盤部分を貼り付けて、フックにタオルなどをかける物)を買うのにも真剣なのである。

 それによって、連載エッセイの原稿が1本書けてしまうのだから結構な事だが、気に入った吸盤フックを見つけるまであちこちへ出掛けると言うのは、とっても時間が無駄なような気がするが…。
 でも岸本さんのフットワークは軽い。どこにでもいってしまう。

 自分が気に入らないものが、自分の居住空間の中にあるのがイヤなんでしょうね。

 そうやって買ったアロマオイル、ホームベーカリー、パソコン、電子レンジ、スーツケース、茶漉し一体型ポット、財布 などなど、24品目の使い勝手を評価している。
 しかし、選びに選んだはずなのに、GOODとなる商品は少ないね。

 ホームベーカリー、人間ドック、チリトリ型財布、スパッツ、醤油さし…くらいか。

 あとはことごとくOH! MY GOD です。

 特に、出張先で運命の出会いをした(…と思った)ギャベ(イスラム文化圏の遊牧民の敷物)を買って自宅に送ってもらったのはいいが、あまりにも重いのでにっちもさっちもいかなくて途方にくれている様子が、失礼ながらオカシイ!
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雨宮処凛「EXIT」

2010-08-08 20:20:44 | Weblog
 自傷系(リストカット、アームカット、オーバードーズetc)の女の子達の話。他にも、解離性人格障害、パニック障害、醜形恐怖、ウツ、PTSD、摂食障害、などなどいっぱい出てくる。

 作者の雨宮処凛も、今では社会派の論客みたいな事をやってるが、10代後半の時には、自傷で悩んでいたみたいだ。

 「人の後にくっついて、できるだけ目立たずに生きていきたい」と思っている人は、こういった自傷行為をしないだろうね。
 みんなの注目を集めたい、でも集めるだけの容姿や能力が無いという人が、注目を集める手段とするのが自傷なんじゃないかな。
 ミもフタも無い言い方だけど。

 この小説の中に出てくる“恵”という女性は、自傷行為を止めようという自助サークルを主催している。そのオフ会が居酒屋で行なわれ、そこにテレビ局の取材が入る。
 嬉々としてそれに応じる恵。
 でもねぇ、居酒屋でビールで乾杯し、それをグビグビやりながら「死にたい。私、何のために生きているんだろう」といわれてもねぇ。
 そのあと二次会でカラオケ行くし、仕事であくせくしている健常者よりよっぽど幸せそうなんですけど…。

 恵が解離性人格障害になったのは、幼い頃、兄から性的な虐待を受けたから、とテレビ局の人に説明していたが、そもそも恵には兄がいないんだよね。
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