ケイの読書日記

個人が書く書評

青山七恵「欅の部屋」

2012-07-30 16:15:13 | Weblog
 諒助という、もうじき結婚する男が、4年前に別れた昔の恋人をいろいろ思い出す話。

 この昔の恋人は、小麦というラブリーな名前なのだが、ずいぶんイメージしにくい女性なのだ。
 がっしりした体格で背も高く、性格は地味。なんと、デートコースが神社なのだ! しかも、カフェでお茶するんじゃなく、神社の裏にある水道の蛇口をひねって水を飲む。
 彼女の部屋は、若い女性にしては珍しく、極端にものが少ない。

 しかし…彼女はかかとの高い靴を好んで履く。足の甲で交差する細いベルトの付いたの、赤いエナメルのぴかぴか光るやつ、ピエロが履くような先が尖がったひも付きのやつ…etc
 うわーーー!私の印象では、靴に凝る女性って、すごくおしゃれでお金持ちってイメージがあるけどね。どうも、ちくはぐだ。

 そして諒助は2年ほど付き合った後、一方的に小麦にふられる。「あのね、好きな人ができたの。でも諒助の事をなくしてから、ちゃんと進めたくて」と言われ、不承不承引き下がる。

 この小麦の新しい恋愛については、この作品内には何も書かれていない。
 でも、勝手に想像するに、新しい相手というのは、水商売っぽい派手なところがある男の人だったんじゃないだろうか?小麦はこの男性に出会って、初めて自分の中にある「華やかな女性になりたい」という願望に気づいたのでは?
 だって、神社をデートの最中、水道の蛇口をひねって水を飲んで満足している、高いヒールの靴を履いた女の人は、この世にいないと思うよ。
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青山七恵「かけら」

2012-07-25 13:51:39 | Weblog
 端正な静物画のような小説。川端康成文学賞を受賞したらしいが、なるほどうなずける。

 女子大生である「わたし」が下宿先から実家に帰って来たら、結婚している兄が娘を連れて来ていた。じゃあ皆でサクランボ狩りでも行こう、と母親が予約するが、孫娘の体調が悪く、父親と「わたし」だけで行くことになる。
 そのサクランボ狩りバスツアーの様子を淡々と書いてある。事件らしい事件は何も無。でも退屈しないんだよね。これが。

 「仲良し父娘」という訳ではないが、「いがみ合い父娘」でもないので、バスには隣に座り、少しおしゃべりし、ぼんやり窓の外の景色を見ているか寝ている。このゆるさ。
 父親と二人でバスツアーに参加する女子大生が、この日本に何人いるだろうと思う。
 我が家では絶対無理!!!(娘じゃなくて息子だけど)


 しかし…この「わたし」は妙にさめていて、お父さんが転んで怪我をした老婦人を助けたり、バスツアーの他の参加者に高い位置にあるさくらんぼを取ってあげたりすると、下記のように感じる。
「父が一人前の男として人の役に立っているのを見るのは、突然人間の言葉を話し出した犬猫を見ているようで、好奇心が勝って目が離せない」
 
 いっくらなんでも、これって例えがヒドすぎない?!
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スティーグ・ラーソン「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」㊦

2012-07-20 16:49:56 | Weblog
 ミレニアム3部作 ついに完結!!  リスベットとミカエル陣営が、公安の闇組織に圧勝!壊滅させる。

 あー、最後まで面白かった!!と、私も書きたいが、どうも、この最後の「眠れる女と狂卓の騎士」は、あまり面白くないね。つまらない、という訳でもないが。
 第1作「ドラゴンタトゥーの女」 第2作「火と戯れる女」が秀作すぎるのかも。
 この第3作は、ドンパチが少なく、裁判場面に費やされるページ数が多かったから、そう感じるのかもしれない。


 ヒロイン・リスベットの宿敵 児童精神科医の権威 テレボリアンも、最後には逮捕される。
 この男は、父親を殺そうとしたリスベットを児童精神科病棟に閉じ込め、治療と称して、革手錠で彼女をベッドに縛り付け、自分のゆがんだ性癖を満足させていた。最終的に、この男は児童ポルノ禁止法で逮捕される。

 もう一人、第1作に登場した、リスベットの後見人・ピュルマンという弁護士も、リスベットがしっかりとした身寄りがないことを知って、彼女をレイプする。

 この2人は、リスベットがちゃんとした家族も友人も同僚もなく、過去に問題をたびたび起こしている事。自分は社会的な地位や名誉があり、どんな虐待をしても「この小娘は大ウソつきだ」と言えば通ることを知っている。

 恐ろしい事だよ。特に精神科医など、やりたい放題だろう。いくら偉い先生でも、疑ってみることは必要だ。
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ステーグ・ラーソン「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」㊤

2012-07-15 21:02:26 | Weblog
 前巻から、かなり時間が立ってしまった。実は読み始めてはいたのだが、最初の方が面白くなく、ほかってあったのだ。
 スウェーデンの現代史に興味がある人ならともかく、スウェーデンの実在する政治家やスパイ事件、政変などがドッサリ出てきて、読みにくい事この上なし!!


 冷戦時代(ソ連とアメリカが張り合っていた時代)スウェーデンは、常にソ連の脅威を感じていた。地理的にも近いし、スウェーデンが共産化されるんじゃないかと。
 そんな時、ソ連のスパイが亡命を求めてきたのだ。それが、ドラゴンタトゥーの女・リズベットの父親。
 スウェーデンの公安関係者の一部が、彼をかくまい、ソ連の情報を聞き出そうとする。その見返りに、亡命スパイがギャングのような犯罪を犯しても、すべてもみ消してきた。

 そのうちソ連が崩壊。亡命スパイは何の価値も無くなって、お払い箱になる。彼は公安とは関係なく悪事を働いていた。
 そんな時、リズベットが父親を殺そうとして事件をおこし、世間の注目を集めることになる。
 マスコミが、亡命スパイと公安の暗部との関係を嗅ぎ付けるかもしれない。
 そこで公安の闇組織がとった行動は、関係者たちの抹殺だった!


 どうもよく分からない。この亡命スパイの利用価値が無くなった時点で、口を封じればいいのに(デューク東郷に頼め)。非合法な事など、なんのためらいもなくやってのける連中だから、いったいナゼ将来の禍根にしかならない人間を、ほかっておいたのか…。
 だいたい、こんな、売春婦を病院送りにするまで殴りつけたり、人身売買や売春で荒稼ぎする、根っからのギャングが、スパイ活動など出来たんだろうか? スパイってもっと目立たない人だと思うよ。
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ジョージュット・ヘイヤー「紳士と月夜の晒し台」

2012-07-10 14:00:19 | Weblog
 月夜の晩、ロンドンから少し離れた村の広場で、晒し台に両足を突っ込んで背中を刺された紳士の死体が発見された。
 被害者は鉱山会社の社長で、裕福な暮らしをしていた。被害者の異母弟妹や、会社の金を横領した従業員といった関係者のほとんどに動機があって…。

 うーん、これって推理小説? 確かに殺人事件が起こり、犯人を追及しようとする警視や刑事が登場するが、そんなことより、この小説の中の何組かの恋人たちの恋の行方の方がよっぽど気になる。
 作者のジョージュット・ヘイヤーという人は、もともとロマンス小説の大家らしいね。
 だから、恋愛小説の彩りとして殺人事件がある…というカンジだなぁ。
 そのロマンスについても、私には好きになれない男女が、状況が変化するたびにシャッフルして相手を替え、最後にはめでたしめでたし…って、全然めでたくない!!!

 真犯人がわかって、殺人事件は解決するが、その真犯人は、私がこの小説の中で唯一気に入っていた人だし、気に入らない連中は、皆ハッピーエンドって、ムカつきます。


 この作品は1935年に発表されたようだけど、1935年といえば、第2次世界大戦の少し前(ナチスが政権をとったのは1933年)ヨーロッパは重苦しい雰囲気に包まれていたのかと想像していたが、そうでもないんだ。イギリスはのんびりしてたのかな?
 もうちょっと、時代の雰囲気を感じられる作品だったら、もっとよかった。
コメント (2)
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