ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「たりる生活」 朝日新聞出版

2023-08-20 15:15:35 | 群ようこ
 次回は純文学を読むぞ!!と意気込んでいたが、エッセイを買ってしまった。仕方ない。群ようこさんを私の人生のロールモデルにしようと思っているので、彼女のエッセイを書架で見つけると、ついつい買ってしまう。特に最近のエッセイは、終活を意識しているのでタメ

 特にこのエッセイ集は、長年一緒に暮らした愛猫しいちゃんを見送り、27年間住んだ一人暮らしには大きすぎる部屋から引っ越すことになる顛末を書いてある。
 そうそう群さん、ちょっと前のエッセイには、友人たち3人と共同生活しようかという話があちらこちらに書かれてあったが、最近は書いてないから、止めたんだね。その方がいいと思う。友人といっても、2泊3日の旅行なら問題ないが、ずーーっとルームシェアするとトラブルになると思うよ。かえって友達失くしちゃうよ。

 家賃もスペースも2/3ぐらいの物件に引っ越すことになった群さん。なんとか今の荷物を減らさなければならない。彼女の場合は、問題は「本と着物」だと思う。特に本はすごい。若いころは3000冊の本と引っ越したと豪語していたが、それは若いからできたことで、今は絶対無理。それに、そんなに本を持っていても読めるんだろうか? 1日は24時間で自分は1人。眠る時間もお風呂の時間もご飯食べる時間も、もちろん仕事の時間も必要なのに、そんなに読める?年を取るに従い、目も疲れやすくなってくるしね。
 それに、着物。群さんは和服が好きでよく着るけど、それでも着物用段ボールに20箱、帯と小物で5箱って、多すぎない? でも和服って高価なものだから、なかなか処分できないのよね。(しかし足袋が80足あったという話には驚いた)

 必要なものだけをダンボールに詰めて新居に送ろうと思っていても、だんだん面倒になって「まあいいや、送った先で分別するから、みんな送ってしまおう」となると、さあ大変。新居がモノで溢れかえり、自分のいる場所がなくなる。最初から分別して、不必要なものは処分しないと。

 群さんの引っ越しにダメ出しばかりしているが、私も自分で引っ越さなければならなくなったら、すっきり処分はできないだろうな。ただ、自分の人生の後始末をまじめに考えている群さんに好感が持てる。座布団10枚!!!
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柳美里 「JR上野駅公園口」 河出文庫

2023-08-08 16:08:26 | 柳美里
 「あっ、これ、少し前にアメリカで賞を獲ったやつだ。ニュースでやってた!」と題名に聞き覚えがあったので買ってみた。たいして期待してなかったが、一気に読んでしまった。自分の両親の事を思い出したからだろう。

 主人公の男は、1933年福島県の貧しい村で生まれる。(平成天皇と同じ年に生まれた事がこの小説の大きな柱だが、それについては私はノーコメント)貧しい家庭なのに、男の下に弟や妹が次々と生まれ、男は長男として懸命に働くも暮らしは楽にならず、東京に出稼ぎに行くことを決意する。
 妻や子供、自分の両親や幼い弟妹を家に残し、単身、東京の土建屋で土方として働いて、せっせと仕送りする。おりしも、東京オリンピックが開催されるというので、東京の街は沸き立って、いくらでも仕事はあった。
 この人、本当にちゃんとしている人なんだ。東京に出稼ぎに行って、そのまま蒸発、行方知れず、なんて事がちょくちょくあったのに、この男はギャンブルも酒もやらず(下戸なんだ)キャバレーのホステスさんと仲良くなっても一線は越えず、60歳の定年になるまでしっかり働いた。
 息子の突然死とか不幸はあったけど、娘は仙台に嫁ぎ、孫も生まれ、良いこともいっぱいあった。さあ、年金もあるし、これからは自分の人生を楽しもうという所で、奥さんが亡くなる。男は、なぜ体調が悪いのを気付いてやれなかったんだと自分を責め、「おじいちゃんを探さないでください」という書置きを残し、死に場所を求め再び上京。死ぬことができず、ホームレスになる。

 私の親たちは、この主人公の男より少し年上。福島ではなく、長野県の寒村に生まれ所帯を持った。貧しいのに家族は多く、懸命に働くも貧しいままなのは、この男と同じ。困窮のさなか、仕事を世話してくれる人がいたので、地方都市に移り住んだ。ただ違うのは、この主人公の男は一人で出稼ぎに行ったが、私の両親は、幼い男の子(私の兄)を連れて移住。そこに根付いた。時代は日本の高度成長期。ろくな学歴や技術がなくても、会社という組織に属していれば、所得は上がり貯蓄も少しはできた時代だった。

 多くの日本人が、ひと昔前は本当に貧しかったんだ。その事をしみじみ思い出させる一冊。
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