ケイの読書日記

個人が書く書評

石持浅海 「月の扉」

2016-06-13 08:16:07 | 石持浅海
 沖縄・那覇空港で、乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされる。犯行グループの要求は、那覇警察署に留置されている彼らの師匠を空港まで連れてくること。師匠は、不登校の子供たちを立ち直らせるキャンプの主催者で、逆恨みされて訴えられ逮捕されたのだ。
 ところが、機内のトイレで、乗客の一人が死体となって発見され、事態は一変した。

 クローズドサークルは、絶海の孤島とか雪で閉ざされた山荘などが一般的だが、本作品では、ハイジャックされた飛行機内での殺人ですか…これは変わってます。
 警察が、どやどややって来て調べれば、すぐ解決するようなトリックだが、240人の人質を相手にしているハイジャック犯は忙しく、殺人現場のトイレの近くに座っている座間味島のTシャツを着た青年を「座間味くん」と呼び、彼に事件の解決を依頼する。
 座間味くんは脅迫され、殺人事件の真相を突き止めようとするが、被害者はどうもハイジャッカーたちの知り合いらしい。


 発表された時、かなり評判の良かった作品らしいが、どうも私の好みではない。後半に、ハイジャッカーが師匠を空港まで連れて来させようとする理由が明らかになる。(決して別の国に飛び立とうとしている訳ではない)
 その理由が、私にとってはちっとも魅力的でない。新興宗教ではないと何度も書かれているが、新興宗教としか思えない理由。イヤだなぁ。まあ、何を信じるかはその人の勝手だけど。


 私がこの作品にあまり魅力を感じない最大の理由は、探偵役の座間味くんが魅力的でないこと。なるほど、彼は大健闘している。ハイジャッカー達と堂々と渡り合い、駆け引きも上手だし、推理も論理的で的確。
 でも、一緒に沖縄旅行中の恋人といちゃついてるんだもの。不適格! やっぱり探偵は、女嫌いじゃなくっては、お話にならない。


PS. そういえば、今上映されている御手洗清の映画って、ワトソン役が石岡君じゃなくて女の子なんだってね。何を考えてるんだろう、いっぺんで観る気が失せた!!
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石持浅海 「彼女が追って来る」

2016-03-14 10:54:33 | 石持浅海
 以前読んだ『扉は閉ざされたまま』に、すごく似ているので驚いた。探偵役は碓氷優佳だし、倒叙ミステリで犯人は最初から分かっているし、しかも動機が、そんなことで人を殺すか?!というもの。
 二番煎じ感は否めないが、しかし、それなりに面白い。


 昔からの知り合いの経営者たちが集まる親睦会が、箱根のコテージ村で開かれた。
 愛する男を間接的に殺したという憎悪で、夏子は、元同僚の女性を刺殺する。元の同僚なので疑われるだろうが、決定的な証拠を残さなければ、逃げ切れる。そう考えて、下手なアリバイ工作はせず、犯行現場を後にする。
 しかし、翌朝見つかった死体は、夏子がまったく身に覚えのないカフスボタンを握りしめていた。
 いったい、誰が何のために握らせた? それとも、被害者自ら、死の間際に、そのカフスボタンを握ったの? どうして?

 そう、そのカフスボタン、当然のことながら、そのカフスボタンの持ち主が犯人でないかと疑われ、夏子にとっては願ってもない展開だが、自分が握らせたわけでもないカフスボタンがどうしてそこにあるのか、あらゆる可能性を考え、夏子の頭は混乱していた。


 それにしても、疑いの目が夏子に全く向けられないのは、ヘン。
 確かに、順当に考えれば(犯人を除いて)被害者が最後まで一緒にいたのが夏子なのだから、彼女が第一の容疑者であるはずなのに。

 それに、夏子は不審をいだかせる行動をとっている。メンバーは、1~7番までのコテージを各々割り当てられ、夏子は被害者のとなりのコテージになる。昔の同僚で仲が良かった二人だから、パーティがお開きとなり、それぞれコテージに帰る時に一緒に帰るのは、ごく自然なことで、腕を組みながら二人で一緒に帰って行った。
 だったら翌朝、集合場所に行くとき、連れだって来るのが普通じゃないかな?
 支度に手間取って一緒に来れなくても、一言ぐらい声をかけるよね。そして、他のメンバーに「彼女、少し遅れるそうです」と伝えるのが自然。
 まったく声をかけず、スタスタ自分だけで来るのは、女同士だとケンカしたのかしら?と勘ぐってしまう。

 実際は、死んでいるから声掛けしなかったんだし、自分が第一発見者になりたくなかったんでしょう。
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石持浅海 「扉は閉ざされたまま」

2016-02-06 10:27:17 | 石持浅海
 2005年の『このミステリがすごい!』で、第2位になった作品らしいから、とても楽しみに読んだ。

 
 大学の同窓会で、7人の旧友が館に集まった。軽く昼食をとり、ささっと掃除して各々が部屋に戻り、くつろいだりシャワーを浴びたり着替えたりして、夕方6時に食堂に集まることになる。
 だが、1人、時間が過ぎても食堂に来ない男がいる。呼びに行っても、ぐっすり眠りこんでいるのか応答がない。扉を開けようとしても、鍵がかかっていて、おまけにドアストッパーが差し込まれているらしく、ドアは全く動かない。
 しかたない、疲れて寝てるんだろう、ということで、他の6人で鍋をつついたり、お酒を飲んで騒いでいた。しかし、さすがに、この時間まで起きてこないのはおかしいという事になり、6人で男の部屋の前に移動して、閉ざされた扉の前で「脳梗塞か心筋梗塞みたいな病気かも」「自殺した?」「風呂場でおぼれてる?」と、さまざまな意見が出るが…。

 実は、この小説は倒叙ミステリで、一番最初に、犯人が被害者を部屋の中で殺害する場面が出てくる。
 だから、犯人も殺害方法も、読者は分かっている。その犯人を追い詰めていくのが、探偵役の碓氷優佳(うすいゆか)。この25歳の美しいリケジョ(火山の研究をしているらしい)が、私はあまり好きになれないんだよね。だから、読み進めていくうちに、犯人に肩入れしてしまう。なんとか逃げ切れ!!って。

 本来なら、開かない扉を前にした、犯人と優佳の息詰まる頭脳戦が読みどころのはずだが、私は、そこには関心を持てず、この魅力的な犯人が、どうして被害者を殺害したのか、その動機の方に興味をそそれれた。
 そこで、私は勝手に想像する。
 被害者は、本人に自覚は無いが不治の病に罹っており、苦しみぬいて死ぬという悲惨な最期が分かっていたので、犯人は友情のため、苦痛の無い方法で被害者を安楽に殺してあげた。そうだ、それに違いない!犯人は良い人なんだ!!って。

 ところがこれは大外れ!偏った独りよがりの正義感からだと分かる。
 それに、犯人が殺害から何時何分たったと、たえず気にしていることも、動機に関係ある。
 ああ、こういった動機で人を殺すことってあるんだろうか? 警察に通報するって警告すればいいじゃん!
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