ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代「三面記事小説」

2008-02-28 14:07:59 | 角田光代
 角田光代さんは、通販生活のテレビCMに出てくる小柄で目のパッチリした、あのかわいい人。40歳ぐらいだろうか?とてもそうは見えない童顔の持ち主。

 しかし、小説家としての実力は…なかなか手ごわいですね。
 この「三面記事小説」に収められている六つの短篇は、実際の事件を発想の発端にしているが、フィクションで事実とはかなり異なっている。

 それにしても角田光代は、本当に女性同士の間にある緊張関係をうまく書く人だなぁ。

 「永遠の花園」では、親友である女子中学生2人のうち1人が、担任の先生を好きになってしまい、その友情が変化していく様を上手く描いている。

 「赤い筆箱」では、性格の全く違う3歳違いの姉妹の力関係の変化を書いている。
 小さい頃は「おねえちゃん、おねえちゃん」と、何処へでも妹は姉にまとわりついて来たのに、中学生になると、友達が沢山でき恋もして青春を謳歌する妹を、友人がいない姉は許す事ができない。
 妹の日記を盗み読み、その秘密を親にばらすが、全く相手にされず、かえって「嫉むのはやめなさい」と叱責され絶望する。


 我が家は男の子ばかり3人だけど、上の子というのは難しい存在だと思う。
 親というものは、どうしても下の子の方の味方をするのよね。 
 今、考えると、長男に悪い事をしたなぁ、と思い出すことが多々ある。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中島たい子「そろそろくる」

2008-02-23 14:45:29 | Weblog
 前に読んだ『漢方小説』が、なかなか面白かったので、また彼女の小説を借りてきた。

 前回はシナリオライターの話だったが、今回は32歳のイラストレーター。売れっ子ではないが、趣味でイラストを描いているとか、デザイン事務所勤務などではなく、自分で依頼を受けイラストを描いて報酬を得て、それでアパートを借り生計をたてている。
 彼女は、生理前に体調が悪くなったり精神が不安定になるP.M.S.に悩まされている。

 P.M.S.(Premenstrual Syndrome/月経前症候群)とは、黄体期に起こる身体的、又は精神的症状で、月経が始まると消えるものをいう。

 この小説の主人公もそうだが、私も最初このP.M.S.という名称を聞いた時、そんなものが病気になるの?!と驚いた。
 多かれ少なかれ、女には身に覚えがあるだろうから。
 だけど、すごく症状が重い人もいるし、医学的に説明できるので、自覚すれば自分で自分をコントロールしやすいし、周囲に理解を求めやすい。
 だから最近よく、女性誌でこのP.M.S.の特集をやるようになった。


 しかし…ねぇ、文芸評論家が中島たい子の小説を読んで「30女のぐだぐだを読むのはもう沢山」と言ったというのは理解できるなあ。
 このタイトル『そろそろくる』にしても、女性読者の方しか向いていない、というか…。
 男が『そろそろくる』というタイトルの本を持ってレジに並びにくいだろうね。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

島田荘司「水晶のピラミッド」

2008-02-18 10:47:49 | Weblog
 御手洗、激モテ!いいんでしょうか?こんなにモテて。日本人初のハリウッド大スター・レオナ松崎が御手洗に迫りまくる。

 この小説には、とても魅力的な仮説トリックや、最後の最後に御手洗によって明かされるお粗末なトリック(ヒドイ!読者をなめているのかと言いたい)があって、とても読み応えがあるが、そんなトリックが吹っ飛んでしまいそうなほどレオナのアタックは熱烈。

 一体、いつからレオナはこんなに御手洗が好きになっちゃったんだろう?
 御手洗シリーズを順序よく読んでいるわけではないからハッキリしないが、『暗闇坂の人喰いの木』から、そんなに時間がたってないはず。
 『暗闇坂~』で初めて御手洗とレオナは出会うのだが、その時も少し好意を持った程度だと思う。 
 だいたい、まだハリウッドでたいした知名度も無かった。

 それとも『暗闇坂~』と『水晶のピラミッド』の間に、レオナが関係した大事件があったんだろうか?


 ぼけっとした石岡をつかまえて「あなたたちホモなの?」って訊くし。
 そうだね。御手洗と石岡って精神的な同性愛だよね。こういうボーイズラヴっぽいところが女性読者を引き付けるのかもしれない。


 この作品の大きな魅力は、ギザにあるクフ王の大ピラミッドは何の目的で建てられたのか?に対する色々な仮説が書かれてあるところ。
 他のピラミッドはともかく、この大ピラミッドだけは「王の墓」ではないのでは?と言われているらしい。
 考古学者ポールの学説は異端ではないと思う。私もずいぶん前TV『世界不思議発見』で見たような気がする。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーリヤック「テレーズ・デスケィルゥ」

2008-02-13 10:55:34 | Weblog
 久しぶりにミステリ以外の外国の小説を読んだ。小さい頃は外国の小説というか、童話の方が好きでせっせと読んだものだが、最近はサッパリ読んでいない。
 なんといっても読みにくい。
 登場人物に感情移入しにくい。やっぱり物語の情景とか、歴史的背景がわかりにくいからだろう。

 大人になってから読んだミステリ以外の外国小説の中で、一番印象に残っているのはエミール・ゾラの『居酒屋』。大学時代に読んで興奮して友達に電話をかけた事を覚えている。

 パリに暮らす下層階級の美しいがちょっと脚を引きずっている女が、一時的には成功するのだが、ぐうたらな亭主・役に立たない愛人達に足を引っ張られて転落していく様子が描かれている。
 その落ちていく有様が大変面白い。
 人の不幸って本当に蜜の味。


 話をこの「テレーズ・デスケィルゥ」に戻そう。
 最初の方は恐ろしく回りくどく退屈だが、我慢して読み進めていくと、結構おもしろい。内容はこうだ。

 自分が結婚を望んだはずなのに、結婚してみるとその息苦しさに耐え切れなくなった地方名家の女が、亭主を殺して自由を得ようとするが失敗。
 両家の家庭の事情で離婚も出来ないので別居し、妻は自分の財産からの収入をもらいパリへ、夫は自分の所有地で生活していく。
 その女の内面の葛藤を、こと細かく描写してあるが、私にはうんざり。この女に共感した事は一度も無い。

 一体何年ごろの話なんだろうか? 1910年代?1920年代?
 その時代のパリといえばヨーロッパどころか世界の中心でもあったろう。何の罰も受けず、」親から相続した財産で、パリで悠々生活できるなんて、この金持ち女はふざけている。
 小説の後半に女工さんが出てくるが、テレーズお前も働け!!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

倉知淳「星降り山荘の殺人」

2008-02-08 10:29:26 | Weblog
 やられた。引っかかった。ああ、しっかりダマされた。
 確かに作者は、読者をミスリードしようと一生懸命だけど、だからといってアンフェアな事はやっていない。読み返せばちゃんと書いてある。勝手に勘違いしたのは自分だから。
 ああ、ばかバカ馬鹿。


 雪に閉ざされた山荘。交通が遮断され、電気も電話も通じていない。
 集まったのは、スターウォッチャー・その付き人・UFO研究家・不動産会社社長・その部下・流行作家・その秘書・社長についてきた女子大生2人。
 そこに突如、発生する殺人事件。

 殺害現場のコテージの周りには被害者の足跡だけ、といった不可能犯罪・密室物ではなく、犯人の足跡がしっかり残っており、犯行時刻が夜中という事もあり、アリバイがある人もいない。
 つまり、誰もが犯行をなしえるという地味な展開だが、荒唐無稽でなく好ましい。

 ただ、読み終えた後、感心はするが「ああ、面白かったなぁ」とあまり思えないのは、登場人物のキャラが魅力的では無いからだろう。
 登場人物の中で、キャラが一番立っているのはスターウォッチャー星園だが、その人とて次回作に出てきてほしいとは思わないなぁ。


 作者のデビュー2作目の「過ぎ行く風はみどり色」では、法月綸太郎が作者の事を「天然カー」と呼んだそうだから、次は是非これを読もう。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする