ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾 「沈黙のパレード」 文藝春秋

2022-09-29 16:28:18 | 東野圭吾
 この「沈黙のパレード」が映画化され劇場公開されたという事で、私も読んでみた。久しぶりのガリレオシリーズ。女性刑事の内海薫ってTVドラマオリジナルと思っていたら、人気があるせいか小説の方にも登場することになったんだ!!
 確かに恋愛要素が皆無だと、女性読者や女性視聴者の関心が低くなるからなぁ。TVドラマで、湯川と内海刑事のやり取りがコメディチックというか掛け合い漫才みたいで、すごく楽しかったのを覚えている。
 しかし、この小説内では恋愛要素やコメディ部分は無いなぁ。残念。映画の方だとあるんだろうか? 湯川と内海薫というキャラではなく、福山雅治と柴咲コウという俳優・女優の持ち味なんだろうか?

 それに、ガリレオシリーズでは小説の登場人物もちゃんとトシをとるんだよね。火村・有栖川コンビのように、ずっと30歳代半ばという設定を変えず、トシを取らない探偵役・ワトソン役が多い中で、湯川たちは律儀に年齢を重ねる。湯川や草薙は40歳代半ばから後半、内海薫は30歳代半ばから後半になっている。ちょっと悲しい。
 湯川にいたっては、若い研究者に道を譲る形で、管理職みたいなことをやっているもの。ああ、Too Bad!

 ストーリーはこうだ。シンガーデビューを直前にひかえた若くて美しい娘が失踪する。手を尽くして探したが見つからない。3年たって皆が諦めかけた頃、遠く離れた土地で遺体が発見される。容疑者はいる。しかもこの男・蓮沼は20年ほど前、小学生の女の子を殺した事件で逮捕されたが、完全黙秘で無罪になっていた。今回は起訴すらされず、事件があった地元に戻ってくる。おさまらないのは親や恋人や娘を小さい頃から可愛がっていた地元の商店街の人たちだ。不穏な空気が流れるそんな中、蓮沼が死んだというニュースが流れ…

 「容疑者Xの献身」から、こういうパターンって多いよね。殺した側に何らかの事情があって感情移入してしまう。「真夏の方程式」もそうだった。

 完全黙秘って、なかなかできる事じゃないみたい。そうだよね。人間っていうのは誰かに話したい動物なんだよ。特に上手くいった犯罪なんかは。
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湊かなえ「豆の上で眠る」新潮社

2022-09-19 14:27:09 | 湊かなえ
 タイトルに惹かれ手に取って読んでみる。うーーーん、湊かなえらしからぬ駄作(失礼!)
 彼女は優れたストーリーテラーだから、最初からぐいぐい引き込まれるが、最後はいくらなんでも無理じゃない?!という展開。それとも、書き始めた時は、別の結末を考えていたのだろうか?

 小学1年生と3年生の仲のよい姉妹が、仕事熱心で真面目なお父さん、教育熱心で優しいお母さんと一緒に穏やかな生活を送っていたのに、ある夏の日、お姉ちゃんが行方不明になる…
 お姉ちゃんは、お話が大好きで童話を妹に読み聞かせするのも好きだった。その中の一つが「豆の上で眠ったお姫様」の話。さほどメジャーな話ではないけど、覚えている人も多いのでは?

 
 昔々、ある嵐の夜、1人の少女がお城にやって来る。少女の身なりはボロボロだったが、少女は自分をお姫様だという。お妃さまは、少女が本当のお姫様であるか確かめることにした。その方法とは、少女のベッドの上に一粒のエンドウ豆を置き、その上に羽根布団を何枚も敷くのだ。少女はその上に一晩眠る。
 翌朝、お妃さまは少女に、よく眠れましたか?と尋ねる。すると少女は、布団の下に何か固いものがあったので、よく眠れませんでしたと答えた。
 それを聞いたお妃さまは、それならば本当のお姫様に違いないと確信し、自分の息子の王子と結婚させた。めでたしめでたし。

 で、この仲良し姉妹は、いくら高貴なお姫様とはいえ、何枚も布団を敷いたのにエンドウ豆がある事が分かるだろうか?と疑問に思い、ビー玉で実験したのだ。
 私も、読んだのは小学校低学年だったと思うが、同じように本当に分かるかな?と疑問に思った。(実験はしなかった)
 でも、それ以上に、そんなあけすけな不満を、親切にしてもらった相手に伝えて良いんだろうか?と強く思った。
 こういう場合、いくら背中に異物を感じても「ありがとうございました。ぐっすり眠れました。ご親切、ありがとうございます」とお礼を言うべきではないの?それとも、このアンデルセンの時代のお姫様は、思った事、感じた事ストレートに口に出すべきというプリンセス教育を受けていたんだろうか?
 いやあ、この率直なお姫様と、姑に当たるお妃さまの今後が知りたいです。
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酒井順子 「男尊女子」 集英社

2022-09-09 14:46:15 | 酒井順子
 酒井順子さんは、自分ではフェミニストだと思っているらしいが…失礼ながら、ものすごく図々しいというのが私の印象。

 フェミニストという人は、私の中では、上野千鶴子、土井たか子、辻元清美といった若い頃から女性の権利を声高に叫び、戦ってきた人たちのこと。この「若い頃から」というのが大きなポイント。

 例えば「夫婦別姓」。「別姓だと家族としての一体感が無くなる」と自民党は言ってるらしいでど、結婚した夫婦の3組に1組が離婚するこの時代に、最初から別姓の方が子どもの負担も少ないと思う。それに何といっても、男一人が家族を養わなければ!というプレッシャーが弱まるんじゃないかな? 女の方も、特別な事情がない限り、自分の食い扶持くらい自分で稼がなければって思うだろうね。とにかく夫婦別姓はこの先、避けられないよ。
 当然、酒井順子さんも「夫婦別姓」肯定派だけど、それではいつから肯定派に?って思ってしまう。
 酒井さん、若かりし頃は、気に入った異性の姓と自分の名前を組み合わせ、ニヤニヤしていたんじゃない?
 こういう所が信用できない。

 酒井さんは、バブル真っ盛りの時代に若い頃を過ごし、男に貢がせてなんぼ、という価値観を持っていた人。それが、自分の年齢が上がり時代も変わって、異性の視線を感じなくなると、さっとフェミニストの看板を掲げるなんて図々しいよ。昔から、女性の地位向上を闘ってきた人たちに申し訳なくない?

 確かに自分の僻みもあるとは思うが、違和感を感じてしまう人って少なくないと思うよ。

 それからもう一つ。彼女が参加する女子会の話題が、あまりにもあけすけ。こんなに自分の性生活を友達に話さなくちゃ、仲良くなれないの? 怖いよ。酒井さんは、小学校から私立のお嬢様女子校に通っていたから、その影響なんだろうか?
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