ケイの読書日記

個人が書く書評

中島たい子「建てて、いい?」

2008-09-26 09:29:44 | Weblog
 とっても不思議なお話。マンガ家伊藤理佐の『やっちまったよ一戸建て』を思い出した。

 30代半ばの独身女性が、土地は親から無償で貸してもらい、イケメン建築士に頼んで、自分の理想の家を建てる、というお話。

 30代独身OLが、世田谷にある実家を離れ、自分でローンを組んで、埼玉の田舎に一戸建てを建てる意味が分からない。
 これが逆に、勤め先の近くに、親に頭金を出してもらってマンションを購入という話だったら、珍しくもないだろうに。

 先ほどの伊藤理佐はマンガ家なので自宅で仕事をするし、猫も2匹飼っているし、売れっ子なのでお金もいっぱい持っているだろうから、納得できる。

 しかし、この小説の主人公・真理さんは従姉妹が社長をやっている輸入雑貨の小さな会社に勤め、忙しい時など寝るためだけに帰宅しているのに、庭付き一戸建ての管理ができるんだろうか?
 夏など雑草と住人との戦いになるし、防犯の面でも危険じゃないだろうか?
 だいたい、公務員でもない大企業のOLでもない真理さんに何千万もお金を貸す銀行ってあるんだろうか?

 考えれば考えるほど、メルヘンチックなお話だが、自分が家を建てるなら…と、夢をふくらませるには良いお話かもしれない。
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山田昌弘「婚活」時代

2008-09-21 11:32:34 | Weblog
 「婚活」って何?と思う人も多いだろうが、「婚活」とは「結婚活動」の略。
筆者の山田先生や白河桃子さんたちの造語らしい。

 1980年までは「出会い」が自動的に設定されていた。本人達は完全自由恋愛だと思っていたかもしれないが、職場は総合職男性と一般職女性が出会う集団見合いの場のようなものだった。
 また、お節介おばさんが激減し、昔は年頃になれば降るように縁談が持ち込まれていたが、今はあまり来ない。

 だから、結婚したければ「婚活」という狩をしなければならない、と筆者達は主張する。


 実はこういった考え方は、ずいぶん前、林真理子と酒井順子との対談で読んだ事がある。
 「私は不思議でしょうがない。あなた達は、良い学校に入ろうと一生懸命勉強し努力して入学し、良い企業に入ろうと一生懸命努力して入社するのに、結婚に関してはなぜ努力しないんだろう? ただ、ボーッと受身で、良い相手がそのうち現れると、どうして思えるのか?」
 そういった意味のことを林真理子が言っていて、さすが林真理子、賢い!!と感心した事がある。


 でもやっぱり、男も女も「運命の赤い糸」を信じていたいのよね。
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島田荘司「龍臥亭事件」(上)(下)

2008-09-16 11:35:43 | Weblog
 以前読んだ『龍臥亭幻想』の8年前に起こった事件。面白そうだったので読んでみる。

 御手洗潔が日本を去って1年半。石岡の元を若い女性が訪れ「悪霊祓いに岡山県の山奥に一緒に行って欲しい」と頼む。
 3月末、二人は霊の導くまま過疎の寂しい駅で降り、山の中を分け入り、龍臥亭という旅館にたどり着く。これが身の毛もよだつ怖ろしい大量殺人の幕開けだった。

 ストーリー展開やトリック、ともに無理がある。こんな大量殺人なのに岡山県警の刑事が3人しか来ないというのは、何で?!
 密室殺人やバラバラ殺人てんこ盛りなんだから、報道陣が100人くらい龍臥亭のまわりをとりかこんでいても不思議はないが、最初から最後まで龍臥亭の周りはのんびり牧歌的!!


 ただ、昭和13年に起こった『津山30人殺し』をベースにしているので、本としてはとても面白い。
 『津山30人殺し』とは、横溝正史『八ッ墓村』のモデルとなったあの事件である。フィクションだと思っている人が多いかもしれないが、実際に昭和13年5月21日岡山県の津山地方で22歳の男が、たった2時間の間に村人30人を殺して自殺したのである。

 『八ッ墓村』の殺人鬼は、むら一番の金持ちの放蕩息子で乱暴者で色魔で、女と見ると家の座敷牢に閉じ込めレイプした、ということになっていた。
 しかし実際の津山事件の犯人・都井睦雄は、子どもの頃村一番の秀才で、大人しい男だった。
 進学を希望したが、両親は結核ですでに死んでいて、祖母を一人にはできず、進学を断念。ブラブラしているうちに、この地方の夜這いの悪習に染まり、多くの女と関係を結ぶ。そのほとんどが年上の既婚女性。

 そのうちに自身にも結核の症状が現れ、今まで寝ていた女達に関係を拒まれ、村中に悪口をいいふらされ、睦雄は孤立する。
 彼女達に恨みを募らせ、冷静に計画を練り実行。

 もと優等生が挫折の後、世を恨み大量殺人を計画実行したというのでは、秋葉原の加藤と似ている。が、加藤が「誰でも良かった」と言ったのに対し、睦雄は強い恨みを持っている女達を効率的に血祭りにあげる。
 犯行計画を練ってシッカリ練習し、実行したのである。
 そうでなきゃ、2時間で30人も殺せないよ。


 とにかく、この『津山事件』のインパクトが強すぎて、いくら猟奇犯罪でも龍臥亭事件の印象が薄くなっている。
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白石公子「はずかしい」

2008-09-11 09:08:56 | Weblog
 先日、図書館の書架の間をぶらぶらしていたら、懐かしい名前を見つけた。
 白石公子さん。
 もうだいぶ前になるが、彼女のエッセイを2冊ほど読んで気に入り、もっと彼女の他の本を読みたくなって、図書館やブックオフに行くたび「シ」の棚のところを探したが見つからなかったのだ。

 出身女子大は東京だが、もともとは岩手の良家のお嬢様なので、結婚してそちらへ戻り子育てに忙しいのかしら? と勝手に想像していたが、ずっと東京で文筆活動をしていたとは…。

 もともとは詩人で、大学在学中に大きな賞を貰ったらしいが詩で食べていけるはずも無く、小説や書評、評論なども書いているらしい。

 懐かしいなぁ。中学校の同級生に何かの講演会でバッタリ出会ったような感じ。胸キュン。  あー、お久しぶり、元気だった?


 さて、久しぶりに会った白石さんは、さらにグレードアップ!! より文学的になっていました。
 これでは、毎日すごーく疲れやしないかと心配です。
 
 他に「いちぬけた」というエッセイがあるそうなので、それを読むのが楽しみです。
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群ようこ「パンチパーマの猫」

2008-09-06 11:03:37 | Weblog
 「パンチパーマの猫」というタイトルは、奇をてらったわけではなく、群ようこ氏の知人夫婦がキャットショーへ行ったら、ホントにパンチパーマみたいな毛並みの猫が出てきたそうである。(「袖すりあうも他生の縁」「楽あれば苦あり」の章参照)

 もともとこの本は改題される前のタイトルが「先人達の知恵袋」という地味なもので、このタイトルだと売れなかったのかもしれない。

 内容は、古来からのことわざを、群ようこが現代風に解釈した日常エッセイ。やっぱり群ようこのエッセイは面白い。小説よりもうんと。



 よく自分のご家族の事を書いていらっしゃる。弟さんも面白い人だが(容貌はコラムニストの泉麻人に似ているらしい)お母さんがパワフル!!
 絵描きの旦那さんと2人の子どもで生活が大変だったらしいが、43歳の時に離婚して懸命に働き、2人の子どもを大学まで出して一人前にして…ここまでは美談。
 その先がスゴイ。
 群ようこが作家として成功し金回りがよくなると、その金を(娘がニコニコしているのをいいことに)湯水のように遣い出したのである。

 今までの苦労を取り戻すかのように、高級呉服、海外旅行、豪華宝飾品、エステ…etc。
 群氏が今までどれだけ母に遣われたか計算してみたら、すでに家3軒分に達していて、卒倒しそうになったとか。


 しかし、お母様は昭和ヒトケタ生まれ。娘の金をそんなに遣うことに罪悪感は無いのだろうか? 読者から「お母様は失礼ですが呆けていらっしゃるのでは? お医者様に相談なさった方がいい」という手紙まで来たそうだ。
 ボケというより買い物依存症?

 どちらにしても早く正常に戻ってもらいたいです。
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