ケイの読書日記

個人が書く書評

益田ミリ「すーちゃん」

2008-07-27 20:59:18 | Weblog
 私がよく記事を読んでいる『独女通信』というサイトで、このコミックが紹介されていたので読んでみる。

 この益田ミリという人は本業はイラストレーターらしいが、その他日常のつぶやきを五七五にした「つぶやき川柳」で最近売り出し中の人らしい。

 さて、主人公すーちゃんはカフェで正社員として働く34歳の独身女性。(途中で店長に昇進)
 ストーリーにドラマチックな所は全く無く、実家のお母さんからの電話をうるさがって切ったり、同い年のお友達まいちゃんと週末なべをやって食べたり、バイトの女の子達をまとめるのに苦労したり…。
 そうそう、唯一ドラマチックな展開は、いいなと密かに好意を持っていたマネージャー(本社から時々来る)を同僚にかっさらわれた事。

 しかし、これは仕方ない。自分の好意を相手に悟られないようにしていたんだから。まぁ、告白しても結果は同じだったかもしれないけど。

 そういった何でもない日常を淡々と描いていく。男には退屈だろうけど女にはよく分かる。
 例えば、すーちゃんは今度結婚するまいちゃんに対して、こう感情を整理する。

 離れたって、これからもまいちゃんはずっとあたしの親友
 なんて思わない
 まいちゃんは、親友なんかじゃなく友達
 親友という言葉で、友達をしばってはいけないんだ 
 ただ、流れのままにつきあっていくのがいい
 それでいいと思う

うん、同感です。
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クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」

2008-07-22 14:32:18 | Weblog
 この作品は、二階堂黎人が褒めていたので是非読まなくっちゃと楽しみに読み始めたが…翻訳が悪いのか、私の頭が悪いのか、どうもうまく作品になじめない。読みづらい。

 暑くて睡眠不足のせいか、数ページ読むと眠くなるのだ。そういった自分の体調不良を差し引いても…どうかなぁ、そんなに良い作品とも思えないね。
 とにかくゴチャゴチャしすぎている。


 サバット博士と言う神秘学研究家が、密室の中で殺され容疑者は『世紀の脱出王』と呼ばれた男。
 登場人物のほとんどが奇術師で、探偵役も奇術師。その他、奇術師の助手の女性とか霊媒とか素人マジシャンとか、そういった濃い人たちが山盛りなのだ。
 証拠も簡単にすりかえられちゃうし。

 誰が犯人でも納得できる。というかあまり意味がない。


 それよりも作品にチベットの事がよく出てくるので驚いた。いかに当時の欧米人が、チベットを超常現象の国として畏怖していたかがよく分かる。
 そういえば、ホームズもモディリアニ教授と闘い、一緒に滝つぼに落ちて死んだと思われていたときにチベットで修行していたのだ。

 現在、ヨーロッパやアメリカが、チベット独立派に肩入れするのも理解できるね。少なくともこの時点では(1930年代)チベットは独立国だったのだ。
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アガサ・クリスティ「アクロイド殺人事件」

2008-07-17 10:57:52 | Weblog
 私はこの推理小説の犯人を初めから知っていた。
 それは以前に読んだのを覚えていたという訳ではない。このトリック、というか設定は一種独特で、発表当時「これはミステリーとして掟破りだ」という議論がわきあがった事を知っているからだ。

 しかし、最初から犯人を知っていて読むというのも中々味わい深いものがある。
 だいたい、犯人から見ればすごく単純な構図なのである。
 金持ちの夫人が自殺した。どうも前夫に毒を盛って病死に見せかけたことを知られ、脅迫されていたらしい。
 その秘密をアクロイド氏に打ち明けようとしたが、氏は脅迫者に殺されたらしい。
 この単純な図式に、色んな秘密を持った人がからんで、ややこやしくなった様に見えるだけだ。おまけにアクロイド氏は大変な金持ちで、まわりは金に困っている人ばかりだった。

 しかし最初に戻って考えると、毒を盛って病死に見せかけたという事を知るのは○○しか、いないではないか!!
 他の者が色々情報を集めたとしても、噂の域を出るものではない。突っぱねれば良い。

 しかし○○だったら、もう言い逃れはできないだろう。基本に戻ればすぐ分かる事である。

 この作品は、細かい所にも伏線を沢山用意して、それをキレイに解決していく所が見事である。
 例えば引き出された安楽椅子、シェパード医師の所にかかってきた電話、彼が殺人現場に持って行った黒かばん。
 謎解きするとなーんだ、とガッカリする事があるが、この小説のディテールは、なるほどそうだったのか!と感心することばかり、本当によく出来ている。名作と言われる所以です。

 それに登場人物がいい。とくにキャロライン。ミス・マープルを少し落とした感じ。
 また、常々思っていることだが、クリスティは女性の容姿をいつも大変褒めている。ここではフロラ、アシュラ・ボーン達が大変美しい女性として描かれているが、他の小説でもキレイな人を沢山登場させている。
 英国ってそんなに美人が多いのかなぁ。女が女を見る目は厳しいと思うが、クリスティは優しいね。

 また、召使が主人をゆする事は珍しくないようです。彼らは仕事だからご主人様と言っているだけで、実際、主従関係にあるわけではない。
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岸本葉子「がんから5年」

2008-07-12 13:44:23 | Weblog
 がんというのは手術でがんを取っても、転移している可能性があり、5年経って再発しなかったら、そこで初めて治りました、と言えるらしい。

 岸本さんが40歳でがんを告知され、5年後に主治医に「治りました」と言われるまでの記録。

 今ってほとんど告知するんだね。昔は家族が本人に代わって医者からがんと告知され、本人に知らせるかどうか迷った、という話をよく聞いたが。
 確かにその方が治療方針は立てやすい。

 遅かれ早かれ人間はいつかは死ぬのだから、勇気を持ってがんに立ち向かえと言うのは、健康だからこそ言えるのであって、がんの告知を受けた患者さんの頭の中はパニックだろう。

 それにしても、岸本さん、一人でよく頑張ったなぁと感動する。それとも一人だから家族に寄りかかれない分だけ、自分がしっかりしなくちゃと余計気が張ったんだろうか。
 本当に見事な精神力である。

 この本の中で、岸本さんの執刀医の竹中先生が「僕が手術した最高齢が直腸がんの患者さんで97歳だった」という話をしている。
 がんばるなあ、すごいなぁ、この97歳の生に対する執着心を見よ!! 年間3万人を超す自殺者にも見習ってもらいたい。
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岸本葉子「はたらくわたし」

2008-07-07 10:36:59 | Weblog
 美容院で女性週刊誌を読んでいたら、岸本さんの最新エッセイを紹介していた。岸本さん大好きの私としては、早速買って読んでみる。

 やはり「エッセイストの仕事日記を公開」ということで地味。ただ、少しビックリしたが、岸本さんが企画を自分で持ち込む事が多いらしい。
 本って編集者から依頼を受けて書き始める、と思っていたので少し驚いた。もちろん、出版社から依頼され執筆という、通常ルートも多いけど。


 岸本さんの場合、固定ファンがいるので初版はだいたい売り切れ、出版社に損させる事は無いが、重版には中々ならないらしい。
 だから文筆業として生計を立てていくため、どうしても新しい本を…という事になる。
 私が地元の図書館のパソコンで検索したら、なんと!91冊あった。

 以前、別のエッセイを読んでいたら、岸本さんの担当が新しい本の企画書を上層部に提出した所「岸本さんは本を出しすぎるのではないか?」と言われ、企画を却下されたという話があった。


 また、岸本さんの場合、講演の依頼も多いらしい。謝礼と拘束時間を天秤にかけると、断って文章を書いていた方が儲かるらしいが、律儀な岸本さんはキチンと下準備して責任を果たす。
 その他、テレビやラジオの出演も定期的にあるようだ。


 しかし、こんなに働いても老後は左団扇という訳にはいかないようだ。
 健康には十分気をつけてください。末永い活動を期待しています。
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