ケイの読書日記

個人が書く書評

グレゴリ青山「ブンブン堂のグレちゃん」

2013-12-29 09:58:13 | Weblog
 暮れも押し迫ってきて、いくらグータラな私でも、忙しくなってきた。でも、ブログの更新日が近づいてきて…という事で、今回は、たかさんが紹介していたコミックエッセイを読む。コミックエッセイだったら短時間で読めるだろうと思って。
 それに、ドケチな私にしては珍しく、本屋で買って!!
 図書館で予約しても、なかなか順番が回ってこないだろうし、それに、やっぱり少しは本を買わないと、出版社が困るだろうと思って。

 
 時は1980年代の半ば。18歳の夜間デザイン学校生・グレちゃんは、昼間、大阪の古本屋ブンブン堂(仮名)で、バイトすることになる。
 古本をこよなく愛する業界人や、濃いお客さんたちに囲まれた2年間を描いたコミックエッセイ。ほぼ実話らしい。

 このグレちゃんという女の子がすごく生活力のある子で、この夜間デザイン学校の入学金も授業料も、全部、自分のバイト代で払ったらしい。すごいなぁ。デザイン学校って、授業料や教材費がすごく高いんじゃないだろうか。
 学校は夜間なので、昼間は正社員と同じ時間、働いたんだろうね。

 古本愛好家ではない私も、十分楽しんで読めたが、私にとっての最大の謎は「古本屋って、経営が成り立つんだろうか?」
 我が家が自営業だからか、それがすごく気になる。よほど専門性の高い店じゃないと(つまり高価な古本じゃないと)生活できないんじゃないかな?
 
 自宅の1Fを店舗にして、自分だけで店番して…だったら、なんとかなるかもしれない。それでも、国民年金や健康保険を払うのは、キツイと思うよ。

 ブンブン堂は、お店を借りてるし、バイトの女の子(グレちゃん)もいるから、その家賃、水道光熱費、通信費、人件費、そして自分の生活費…うーん、なかなか生活するのにハードル高いです。



 申し遅れましたが、皆様、良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いします。
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エドガー・アラン・ポー 富士川義之訳「赤死病の仮面」

2013-12-24 10:33:56 | Weblog
 ポーの作品は(詩を除いて)だいたい読んでいたつもりだったけど、これは読んでなかった。
 先日読んだ「江神二郎の洞察」の中で、この「赤死病の仮面」が出てきたので、絶対読まなくっちゃと図書館で探す。


 激しい痛みに襲われ、めまいがして、やがて毛穴から大量の出血があり、ついに死に至る赤死病が、プロスペロウ大公の領地を荒らしまわっていた。病人の身体、とくに顔面に真紅の斑点が現れると、彼は追放される。誰も助けの手を差し伸べず、誰にも同情されなくなって…。

 大公は、領地の人口が半分に減った時、その宮廷の騎士や貴婦人たちの中から、健康で快活な者たち1000人を選び出し、城郭風の僧院に引きこもった。そして、城壁の鉄の門のかんぬきを溶接して、決して外から人が入って来ないようにした。
 つまり、完全に赤死病をシャットアウトして、籠城することにしたのだ。
 外の世界がどうなろうと、構わないのだ。
 僧院の中には、たっぷりの食糧が貯えられていた。そのうえ、道化役者も、即興詩人も、バレエの踊り子も、音楽師もいるのだ。

 そして大公は、並外れて壮麗な仮面舞踏会を催し、1000人の客人をもてなした。
 だが、その盛大な饗宴の最中に、異様な仮装を身に着けた人物があらわれ…。


 とても短い作品だが、すごく絵画的。誰か、映像化してくれないかなぁ。
 中世のヨーロッパでは、ペストが猛威をふるっている最中など、こういったことがあったみたいです。ある村でペスト患者が発生すると、軍隊がその村から他の村に移動する道を封鎖し、その村から誰も出てこれないようにして、村内で死に絶えるのを待ち、火で焼き払う、といった事が。
 でも、ペスト菌って、ねずみが仲介するんだよね。人間の移動を止めても、ねずみの移動を止めなければ、ペストの拡散を防げないように思うけど。
 
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高田崇史「毒草師 パンドラの鳥籠」

2013-12-19 14:46:44 | Weblog
 毒草師シリーズ第3弾。毒草と推理小説は、あまり相性よくないと文句を言いながらも、読んでしまう。

 京都・丹後半島の山奥に、地元の人たちも滅多に近寄らない深い竹林がある。そこは「魔女の鳥籠」と呼ばれる古い洋館が建っていて、その洋館の中には、300歳を超える魔女が住んでいるという。
 この館に入った人間は、彼女の餌食となり、生きて戻ることは出来ない。何年か前に連続して起こった未解決の首なし事件、その解決を依頼された御名形は、助手たちとともに、丹後半島に急ぐ。


 色んな不思議な事象が、薬物による幻覚や幻聴で解決してしまうので、あまり推理の意味がない。
 でも、ストーリーやトリックよりも、御名形のたれ流す雑学の方が楽しみになってくる。
 例えば…

 西洋で銀食器が普及したのは、銀は毒に触れると変色するという特性をもっていたから…らしい。毒殺って、東洋の暗殺手段(特に中国)というイメージがあったのだけど、西洋でも広く行われていたのだ。毒殺が。そうだよ、病死に見せかけやすいからね。

 「つつがない」という言葉の意味は、「病気や体調不良がなくて、息災である」という事だが、なぜこの意味になったかというと、当時はツツガムシというダニが多く生息していたので、それらに噛まれないで健康にすごしているから…だそうだ。

 こういった「へぇ、なるほど、そうなんだ」という話が、あちこちに書かれているので、ストーリーよりも、こっちを読む方が面白い。
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平安寿子「恋愛嫌い」

2013-12-14 12:58:29 | Weblog
 先日読んだ「ルポ 大阪2児置き去り死事件」のA子さんが、あまりにもクソ女だったので、いまだにムカついている。
 それに比べ、この「恋愛嫌い」の登場人物の、鈴枝(35歳)喜世美(29歳)翔子(26歳)は、素晴らしく爽やかに感じられる。3人とも中堅の会社で正社員として働き、独立して生計を立てている。

 恋愛経験が無い訳じゃない。でも、どうもその感情に居心地の悪さを感じる3人は、職場は別々だが、昼休みのランチタイムで一緒になるランチメイト。それぞれ1人で来て相席になったのが縁で、いつのまにか仲良くなった。
 職場が違うので、利害が重なる訳ではない。昼休みの1時間だけのおしゃべり。つっこんだ話をする訳でもない。つかず離れずの、緩いつながり。それがいいんだよね。


 女の世界は、どうしてこんなに恋の話題で溢れているのかな? ガールズトークでは、いかに多くの男にモテたかが、その女の子の価値を決める。
 女子会のスターは、現在進行形の恋バナを披露できる女の子たちだ。
 恋愛体質の人には良いかもしれないけど、非恋愛体質の人は、疲れちゃうよ。1度か2度の恋愛で十分。

 だいたい、そんな多くの恋愛経験があるという事は、1つの恋愛の期間が短いという事だ。(または、複数の恋愛が同時進行)
 そんなふうに、次々と相手を変えて、何か良い事あるのかな?
 風俗代わりに、利用されているだけじゃないの? 恋愛っていえる?


 こういった事例をみていると、モテなくてよかった!とつくづく思う。おぼれている者同士がしがみつきあっても沈んでいくだけです。
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杉山春「ルポ虐待 大阪2児置き去り死事件」

2013-12-09 13:55:25 | Weblog
 2010年夏、3歳の女の子と1歳9か月の男の子の死体が、大阪市内のマンションで発見された。
 子どもたちは、猛暑の中、クーラーのついていない部屋の中の、堆積したゴミの真ん中で、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。内臓の一部は蒸発し、身体は腐敗し、一部は白骨化していた。

 母親A子さんは風俗嬢。子どもを約50日間放置して、男と遊びまわり、その楽しそうな様子をSNSで紹介していた。

 部屋から異臭がする、という通報を受けた風俗店のマネージャーが、A子さんに連絡、部屋へ行かせるが、A子さんは変わり果てた我が子の姿を目にし、マンションを飛び出した。交際相手を呼び出し、神戸の観光地にドライブに出かけ、ブログ用に観覧車の写真を撮り、ホテルでセックスする。


 この、あまりに悲惨な事件を覚えている人も多いと思う。でも、私は別の事で印象深い。
 A子さんと子どもたちは、もともと四日市市出身。大阪に移る前に、名古屋の大須観音参道沿いのマンションに、短期間だが住んでいたらしい。
 私は大須観音にはよく行くので、ショックだった。ここにA子さんたちが…。大須観音の境内にも、ひょっとしたら子どもたちを連れて遊びに行ったかもしれない。
 名古屋という所は、母子家庭に比較的手厚い。いろんな手当だって受けられる。でも、A子さんは、住民票さえ移さなかった。だから、お金はもらえない。


 幼い子どもを連れて離婚した場合、頼るのは実家の母親だ。だけど、A子さんの母親という人は、A子さん以上に不安定な人で、頼ることができない。
 母親は2度、結婚離婚し、最初の結婚で3人、次の結婚で2人の子どもを産むが、どの子も育てていない。リストカットやオーバードーズを繰り返し、本人も周囲も、この人に子どもを育てるのは無理だと分かっているのだろう。
 こういう点が、A子さんの不幸、この悲惨な事件の遠因だとは思う。でも、じゃ、なぜ母親のように子どもを捨てなかった?


 A子さんの中学時代のヤンキー仲間は、ほとんどが結婚して子どもがいるが、その9割が離婚しているという。でも、誰の子どもも死んでいない。シングルマザー同士のおしゃべりで、大変な時は、どの行政窓口に泣き付けばいいか、どんなサービスが受けられるか、知らなかった?!

 それを、子どもたちが外に出てこないようにと、扉の上下をガムテープで止めるなんて、殺意があると思われても仕方ないよ。
 ガムテープで止めなかったら、子どもたちがヨロヨロと外に出て来て、保護され、命が助かったかもしれないのに。

 本当にどうすればよかったのだろう。


 A子さんのダンナ側が養育するという事も考えられる。でも、離婚の原因がA子さんの浮気にあるのだから、感情的には難しいかも。「本当にオレの子?」という思いが、どこかにあるかもしれない。将来的に再婚も考えられる。継母に育てられるより、実母に育てられた方が、子どもたちのためになる、と思ったのかもしれない。


 それにしても、A子さんの男性関係のだらしないこと。いったい何十人と寝た? ひょっとしたら3ケタいくかも。
 離婚原因となった浮気相手の所に、離婚後転がり込もうとしたら拒否される。仕方ないので、別の交際相手の大学生の所に行くが、すぐに追い出される。
 こんな、どうしようもない男たちに、風俗代わりに利用されるんじゃないよ!! A子さん、もっと打算的になれ! もっと自分を高く売れ!
 本当にロクでもない男ばかりで、唯一まともだったのが、結婚したダンナ。でも、別れちゃったのだ。

 複雑な家庭に育ったA子さんだけに責任を押し付けるべきではないが、彼女は見栄っ張りすぎる。子どもをちゃんと育てていると思われたくて、結果、子どもを死に追いやるのだ。育てられなかったら、捨ててください。それしかない。
コメント (2)
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