ケイの読書日記

個人が書く書評

「お気は確か?」 ゴマブッ子著 宝島社

2020-02-23 21:28:14 | その他
 「恋する女への忠言」というサブタイトルがついている。女性からの恋愛相談に、人気ゲイブロガーが回答してるって本。相談者は、おくての人もいるけど、ほぼ肉食系、恋愛体質の女。
 ゴマブッ子さんの小気味のいいぶった切りに、アハハと笑いながら読んでいたが、だんだん食傷気味に…。

 こんなに恋愛恋愛と恋愛に振り回されてどうする? そりゃ、大切なものだという事はわかるが、恋愛フリークというか、恋愛依存の女の人って疲れるなぁ。私だったら、1度や2度の恋愛経験で、もうお腹いっぱい。何回、恋愛したって同じだよ。 イイ男は他の女のもの。自分の所には来ない。それに、いい加減に気づけよ!あんた!!

 年代の違いだろうが、自分との意識のギャップにも驚く。
 男が女の家に転がり込む形で同棲して、お互いの両親にも会っているのに、「結婚を今は考えていない」「オレの負担になる話はやめてほしい」「宝くじに当たったら」などなど、30歳過ぎてこんな事を言う男、昔はいなかった。
 だったら女の家に転がり込むなよ。無料宿泊所のつもりなの? 女の人が30過ぎて出産の事を考えるのは当然。それを男は分かっているはずなのにね。
 経済的な問題は、女が働くつもりなら、何とでもなるでしょう? こういう男とつきあっていても無駄だと思う。今まで費やした時間とお金を考えると、なかなか踏ん切りがつかない事は理解できるが、無理に結婚にこぎつけても、幸せになれないよ。

 別の相談では、ホテルに行ってHしたのに、男に「付き合うつもりはない」と言われた女。こういう話って、最近多いのかな? 私の年代(1958年生まれ)では、玄人の女性ではない素人の女性の場合、結婚前提かはともかく、一応、付き合う意思表示だと思っていたが、今は違うの?
 「友達」と「カノジョ」の境界線はなに? 彼女証明書なんてものがあるの?

 こういう話を読んだり聞いたりすると、自分が昔の人間でよかったとつくづく思う。今の恋愛市場には精神的についていけない。そして、自分が恋愛体質ではなくヲタク体質だという事にホッとしている。3次元より2次元が好き。ジャニーズや韓流イケメンより、アニメや小説の萌キャラが好き。
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小林久三 「暗黒告知」 講談社文庫

2020-02-16 12:48:43 | その他
 第20回江戸川乱歩賞受賞作(1974年) 
 日本最初の公害と言われる栃木県の足尾銅山の鉱毒事件。その渦中の明治40年に起きた、反対派農民の殺害事件。彼は、反対派巨頭・田中正造の片腕と言われていたが、体制派に寝返ったという噂もあった。殺害に使われた凶器は、田中正造の杖。いったい犯人は正造なのか?それとも正造を陥れようとする罠なのか?

 教科書にも載っている足尾銅山事件や田中正造の名前で、いっきに作品に引き込まれる。密室殺人なので本格推理なんだろうが、読みどころはそこではない。明治10年代から続く足尾銅山の公害垂れ流し。それに対抗しようとする反対派農民たち。彼らの精神的支え田中正造。しかし、権力により切り崩され弱体化していく農民たち。
 これは推理小説というより、社会派小説だよね。

 しかし…若い頃に読めば、私も「明治政府はケシカラン!!」と言っただろうが、年を取った今では寝返る農民の心がよく分かるなぁ。私がもし足尾銅山近くの村に住んでいて、公害の被害にあっていたら、最初は反対派になるだろうが、お金や代替え地を提示されたら、すぐ体制派に寝返るだろうね。さっと農地を捨てて、お金をもらって代替え地に引っ越す。
 こんな汚染された土地にしがみついてどうする? 先祖代々の土地を守りたいという気持ちは理解できるが、でもその先祖って縄文時代からここに住んでたの? 違うでしょ? どっかから流れてきたんでしょ?

 しかし、そこが明治の農民。土地に対する愛着・執着はすごい。でもでも勝負は見えている。早く次に行ったら? でもでもそこに田中正造の狂信的な善意が立ちふさがる。彼を裏切る事は出来ない。田中正造は、足尾銅山鉱毒事件のために、富も名誉もすべて投げうって反対派農民たちを支援しているのだ。でもでもこのままでは…という永遠のループ。つらいだろう。

 見方によっては疎ましくも感じられる義人・田中正造だが、こういった狂人じみた正義の人でなければ、公害は告発できないだろうね。水俣病や四日市公害でも、そういった人はいただろう。
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「上野先生、勝手に死なれちゃ困ります」 上野千鶴子・古市憲寿 光文社新書

2020-02-09 16:50:44 | その他
 「僕らの介護不安に答えてください」というサブタイトルが付いている。筆者の古市さんは、朝のTV番組『トクダネ』でコメンテーターやってるので知ってる人が多いと思うし、上野先生は、言わずと知れたフェミニスト界のレジェンド。このビックネーム2人の対談なんだ。
 上野先生は団塊の世代。この世代は、たしかに戦後の焼け野原に生まれたが、日本の高度成長期と連動して、自分たちも経済的に成功していった。それなりに給料をもらい退職金をもらい年金をもらっている。
 それに対して、古市さんは1985年生まれのロスジェネ世代。就職は大変だったし、給料は上がらないし、少子高齢化で社会保険の負担は増える一方だし、自分たちの年金はどうなる?という不安だらけ。
 そういった古市さんが、今までのストックで何とか逃げ切れるだろう団塊の世代の上野先生に「勝手に死ぬなよ。オレらはどうなる?」と迫っている。話は、実際的な介護の話から、親子関係の分析、世代間格差の問題、共同体や運動の可能性の話などなど、多岐にわたる。なかなか興味深いよ。

 私は上野先生の本を読むと(たいして読んでないが)あまりにも恵まれた人の言い草だと思う。強者の理論。富山の裕福な開業医の家に生まれ、東京の大学に進学し、次に海外留学した。1948年生まれで、そんな事出来る人が、どれだけいる? もちろん本人の能力もあるだろうけど、知的で裕福な家庭に生まれ育ったという環境が大きかったのは事実。でもその有利な環境を自覚せず、自覚していたとしても無視して、他の人には努力を強要する。

 「助けてほしいと思わないんだったら、孤立したまま生きていっていただくしかない。(中略)その人のキモチまでは救ってあげられない。たとえ食べるものがあっても孤立感から死ぬ人は防げない。人の心なんて救ってあげられませんよ。誰にも。(中略)カウンセラーがいたって、本人が助けを求めない限り、何の役にも立たないんだから」(本文より抜粋)
ごもっともでございます。正論だがシビアな意見。
 時々、生活保護の申請をせずに自宅で餓死している人が見つかるが、自己責任と言うことなんだろうか?コミュニケーション能力が低くて助けを求められないから孤立しているのにね。
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辻村深月 「かがみの孤城」 ポプラ社

2020-02-01 16:44:19 | 辻村深月
 辻村深月は稀代の書き手。泣きました!!!

 中一の女の子・こころは、中学校に入学してすぐ、クラスのボス的な女の子に目を付けられ、嫌がらせをされて学校に行けなくなる。毎日、家の中でウツウツとしているこころは、自分の部屋の姿見が光っているのを見つけ、手を伸ばすと、鏡の向こうに引きずり込まれてしまう。
 そこは…かがみの孤城だった! そこには、こころ以外にも6人の少年少女がいて、彼らも何かの事情で不登校になっているようだ。彼らのお目付け役は、オオカミのお面をかぶった小さな女の子「オオカミさま」。オオカミさまは、こころたちに【願いの部屋】に入るカギを探し出し、扉を開けて願いを叶えろと告げる。

 こうやって少年少女たちの冒険が始まる…といったロールプレイングゲームみたいな展開を期待するが(最後は冒険ファンタジーと言う展開になる)最初のうちはお互いを知らないから腹の探り合いで、叶えたい願いはあるが消極的。かがみの孤城に行ったり行かなかったり。なにしろ、こころたちの現実世界でも時間は進行していて、嫌な子はますます嫌な子になって大変なのだ。

 ここらへんのこころの心情を思うと胸が潰れる。大規模中学に入学したこころは、今までの友達と離れ、不安の中にいる。近所に萌ちゃんと言う子が引っ越してきて同じクラスになり、こころは仲良しが出来たと喜んでいたが、クラスのボス・真田さんグループが萌ちゃんに何か言ったらしい。こころが話しかけると、迷惑そうな顔をする。ひとりぼっちになったこころ。実は真田さんが好きな男の子が、どうも小学校の頃こころを好きだったらしく、嫌がらせが始まったんだ。
 その男の子から、自転車置き場で「あのさぁ、オレ、お前みたいなブス、大嫌いだから」と言われた。どうも真田さんが、その男の子に言わせたらしい。

 数日たって、こころが家で宿題をやっていると、その子たちが10人くらいでこころの家に来た。他のクラスの子もいる。真田さんの友人たち。勝手に庭に入り、どんどん戸を叩き「出て来いよ。いるんだろ」「裏に回ろうよ。窓から姿、見えるかも」「しめようよ」 恐ろしい。私でも身がすくむ。もし見かけたら110番通報すると思う。その翌日から、こころは学校を休み始めた。

 表面的には、真田さんたちが家に来た。それだけだ。乱暴な言葉を言ったかもしれないが、家を壊された訳でも、こころを殴った訳でもない。ただ、1人対10人、1人対多数。これが全てを物語る。1人じゃ闘えない。お父さんお母さんがついてるという人がいるだろう。でも、大人じゃダメなんだ。同年代の子じゃないと! 誰が一人でも同年代の子が彼女の味方についていたら、こころちゃんは頑張れたと思う。それが、かがみの孤城で出会った6人なんだ!!
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