ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾 「透明な螺旋」 文藝春秋

2024-10-26 12:47:01 | 東野圭吾
 ガリレオの出生の秘密が書かれているというので、読んでみた。ストーリーは面白く一気に読めたが、ミステリとしてはイマイチ。

 男が房総沖で遺体となって見つかる。同棲していた女にはアリバイがあるが、どういう訳か失踪してしまう。彼女の部屋を調べると、関係者として湯川の名前が…。
 しかし、この関係者というのはあまりにこじつけで、失踪している女と行動を共にしていると思われる絵本作家がいて、彼女の描いた絵本の参考文献に、湯川の名前が書かれていただけなのだ。そんなことで警察が湯川に事情を聞きに行くかな?ちょっと無理なような気が…。
 まあ、なんとかして湯川を登場させなければならないから、仕方ないか。

 それにしても、この遺体で見つかったDV男のクズっぷりがすごい。出会った当初は優しくて素敵な人だったが、失職し経済的に行き詰まると、唯一、自分がコントロールできる相手だと思っている女を、自分の支配下に置き、他からの影響を排除しようとする。
 例えば、このDV男は、母親を亡くした女が、自分以外の友人・知人と接触するのを嫌がり、メールアドレスを消させ、自分だけを頼るようにする。

 この方法って、芸能人が占い師に洗脳される事件に、よく出てくるんだ。支配したがる側と支配されたがる側。いったんこのカップリングが成立すると、なかなか解消できない。何年も続く。
 DVの場合、加害者が被害者を殺してしまうまで。窮鼠猫を噛む、みたいに被害者が加害者を過剰防衛で殺すこともある。とにかくこういったDV気質の人間からは逃げなくっちゃ! 後味の悪い結末。

P.S. 湯川の生物学上の母親の事は分かったが、生物学上の父親はどうしたんだろう?
コメント (3)
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「アリスはふしぎの国で」ルイス・キャロル著 大久保ゆう訳 青空文庫

2024-10-12 16:19:29 | その他
 「不思議の国のアリス」(ALICE IN WANDERLAND)ってこういった話だったんだ。昔からある有名なお話にありがちな、断片的に有名なところは知っている。例えば、おかしな帽子屋がお茶会を開いている場面、白うさぎが懐中時計を見ながら大急ぎで走り去っていく場面、トランプのクイーンが誰彼なしに「首をちょん切れ!!」と命令する場面、チェシャ猫が笑って顔が幅広くなっている場面などなど。
 でも、きちんと読んでいなかったので、読み通すと新鮮な驚きでいっぱい。それにしてもチェシャ猫って人気あるね。ふてぶてしいのが良いのかな。でもこんな猫が、自分ちにいたら困るよね。

 この不思議な話は夢オチなんだ。まあ、そうだろう。そうじゃなかったら収拾がつかないよ。それから詩や歌がふんだんに出てくるんだ。英国のお話らしい。だから自分には分からないけど、言葉遊びがいっぱい散りばめられているんだろう。それを日本語に何とか訳すのが訳者のウデの見せ所。難しいよね。英語のダジャレを日本語のダジャレに訳すなんて至難の業。英語に自信がある人は、自分で原書に挑戦するのが良いかもしれない。

 そして最も驚いたのは、キャロルが友人の子どものアリスたちと一緒にピクニックに行った時にせがまれて、出まかせのヨタ話を話して聞かせたのが、この名作が誕生するきっかけだという事。そのヨタ話があまりにも面白かったので、アリスが読みたいと頼み、彼が手書きで本にしてプレゼントしたのが最初らしい。文筆家が、知り合いの子どもに肉筆の物語をプレゼントする事って、当時(19世紀)のヨーロッパでは、時々あったみたいね。

 ルイス・キャロルは、作家として有名だけど本業は数学者で、専門書も何冊も出しているみたい。ロリータコンプレックスで、13歳のアリスにプロポーズしたという話も残っているけど、どうかねぇ。アリスは別の人と結婚してますけど。
 青空文庫で使われている挿絵は、擬人化した動物たちはgoodだが、アリスがあまり可愛くない。色々調べたが、アーサー・ラッカムの挿絵が素敵です。
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