前半の①「お江戸の1年」では、文章が堅かったので、なかなか読めず苦労したが、後半の②「お江戸の1日」は、筆者の筆も滑らかで、わたしもサクサク読める。
筆者・岸本葉子が空想の中で、江戸の裏長屋に住む独身の寺子屋女師匠になり、江戸の1日を過ごす、という設定。寺子屋の先生というと、浪人しているお侍を思い浮かべるが、幕末だと1割弱くらいが、女性のお師匠さんだったという。今でいうキャリアウーマン。
江戸時代の基本的な長屋の間取りは、四畳半に流しと土間が付いただけだから、とっても狭い。だいたい荷物など、ほとんどない。着物は着たきり雀の1枚きりで、それを秋になると裏地を付け、冬になると綿入れにした。
トイレ、井戸は共用。お風呂は銭湯で。この時代、よっぽどの上級武士の家しか、家に内湯はなく、大店の娘も、中級下級武士も、みな庶民と一緒に銭湯に入った。
大勢の人が入るから、湯は汚れていて、風呂おけの底など、砂でじゃりじゃりしたらしい。
洗髪禁止。ええっ?!と驚くけど、そうだろう。大量の湯を使うし、あちこちに汚れが飛び散る。だいたい、洗髪の習慣があまりないみたい。それでも、江戸の女は、1か月に1度くらい、晴れている日をみつくろって自宅で髪を洗ったようだ。
一番気になるのが化粧法。鉛が原料の白粉は、やはり庶民には高嶺の花で、すっぴんの人がほとんど。しかし、既婚女性はお歯黒だけは欠かせない。(出産すると眉を剃り落す風習もあった)
TVの時代劇は、この辺を全く再現していないので、奥方様が笑うと真っ白い歯がこぼれるが、江戸時代ではありえない。これって、かなり不気味なメークだよね。
でも当時では、いい年をして歯が白いと、かえって恥ずかしく世間体もあるので、未婚でも歯を黒く染めたとか。
この本では「お歯黒には歯や歯茎を守る効果があった」と書かれているけど、私が以前読んだ別の本には、きちんとした歯ブラシも歯磨き粉もない江戸時代、女性は出産のために歯が悪くなることが早く、それを隠すため、お歯黒が有効だったのだろう、と書いてあった。 どっちが本当なんだろうね。どちらにしても、奇習です。
なんにせよ、江戸の平均年齢は、乳幼児で死ぬ子を除いても、推定で男性45歳くらい、女性40歳くらいだそうです。女は出産で死ぬ人が多かったから、男より低くなる。
なんだよ、信長が「人生50年」と謡って舞ったというけど、それよりも低いの?