ケイの読書日記

個人が書く書評

宇江佐真理「髪結い伊三次捕り物余話・紫紺のつばめ」

2009-01-29 16:14:25 | Weblog
 「グータラは生活習慣病」というのは本当だと思うので、私も生活をもっとキチンとします。

 第一作の「幻の声」からずっと贔屓にしているシリーズ。時代劇ってあまり好きではないが、これは2度も3度も読める作品だと思う。
 私の時代劇嫌いはなかなか頑固で、あの宮部みゆきさんの評判の時代劇作品もさほど読みたいとは思わない。
 でもこれは…やっぱり髪結い伊三次に魅力があるのかなぁ。何度でも読んでしまう。

 『菜の花の戦ぐ岸辺』ここでは、なんと伊三次が下手人に間違えられ、捕らえられてしまう。真犯人はすぐ捕まるのだが、自分の直接の上司・不破友之進が自分を信じてくれなかったと、大変ショックを受け不破の手下を辞めてしまう。
 最終的には、また元の鞘に戻るようだが、ハラハラドキドキ、引き込まれる。

 (ところで「戦ぐ」で「そよぐ」と読むんですね。初めて知りました)

 最後に『摩利支天横丁の月』という作品がある。作品自体はどうってことない話だが、摩利支天という名に胸がきゅんとなる。
 かなり古いが木原敏江の名作マンガ『摩利と新吾』の摩利はこの摩利支天から取ったらしい。
 武家の守り神、戦いの神、本を読んでいると、こうした断片的な知識がつながって、私の好きなマンガや小説とオーバーラップしていくから楽しい。
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横田濱夫「幸せの健全借金ゼロ生活術」

2009-01-24 08:18:31 | Weblog
 この横田さんは、岸本さんとの共著「ひとり暮らしの人生設計」で知っている。その他「はみ出し銀行マンシリーズ」を1冊読んだことがあるが、あまり面白くないのでそれ以降は読んでいない。

 しかし、この本の後に著者作品リストというのがあって、結構でてますね。驚いたことに中堅作家なのだ。でも、そうヒット作があるというわけではなさそう。
 本人も、どこかで書いていたが最初の「はみ出し銀行マン」は売れたらしいが、2作目以降はサッパリだったようだ。
 本を出版した事で銀行を辞めたので、生活も大変だったらしい。

 しかし、一発屋で終わらず、こうやって文筆業で食べていくことが出来るんだから、たいしたものだ。
 個人的には『横田濱夫と丸山晴美の明るい節約生活入門』を読んでみたいね。

 全体的には立ち読みで十分、という本だが、良いことも書いてある。
 「お金の問題もグータラ息子も、要は生活習慣病のようなものだ。いくら薬を飲んだって、それは一時的な効き目でしかない。一番いいのは、生活態度そのものを改めることだ。そして長く続けること。」
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綾辻行人「人形館の殺人」

2009-01-19 16:20:03 | Weblog
 なかなかの力作。他の館シリーズと比べて、舞台となる人形館がこじんまりしていて好感が持てる。

 館シリーズの館って、人里はなれた辺境の地にお城のようなお屋敷がそびえたち、しかし使用人はほんの数人、どうやって屋敷を維持してるんだろう、ハウスキーピングをなめとんのか!!と喚きたくなるような設定が多い。

 しかし、この人形館は京都のお屋敷町にある年季の入った日本家屋と、つづきである古ぼけた洋風の下宿屋。
 人形館というから、妖しい魅力を持ったアンティークドールでも飾ってあるのかと思ったら、体の一部が欠落している等身大のマネキン人形があちこちに設置してあって、父親の遺言でそれらを遺棄してはいけないことになっている。
 怖いですねーっ!! 夜中に一人でおトイレに行けないじゃないか!

 父親が死んで、想一がその『人形館』に移り住んだその時から、恐ろしい事件が次々と起こり始める。
 その想一の大学時代の友人が島田潔。

 お話の半分くらいで、一人の人間が犯人らしいと示唆されるが、しかしこれは館シリーズ。最後でドンデン返しがあり、思いもがけない人間が犯人なんだよな、と読むほうも心得ている。
 そして、やっぱり最後にあっと驚く結末が用意されているのだが…。

 作者は、読者サービスのつもりだろうが、そんなに無理して意外な結末にする必要はないと思う。
 いいんじゃない?! もっとも犯人らしい人が犯人で。
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麻耶雄嵩「翼ある闇」

2009-01-14 10:00:54 | Weblog
 麻耶雄嵩の作品を初めて読んだ。面白いけど本当に疲れる。作者のサービス精神が旺盛なせいか、どんでん返しの連続で消耗します。
 こうなると犯人が宇宙人でも、私は驚かないね。

 読み出すと、まず綾辻行人の館シリーズを思い出し、その次に『黒死館殺人事件』『ドグラマグラ』等々が思い出され、ゴチャゴチャ。
 エラリー・クインのエッセンスも入っているし、最後にロシア皇女まで出てきて、いい加減にしてくれと言いたい。
 マニアックに凝るのはいいが、もう少しスッキリできないんだろうか?

 名探偵が2人登場。木更津悠也とメルカトル鮎。木更津もあまり友達になりたくないタイプだが、メルカトル鮎にいたっては、半径10M以内に近づきたくないタイプである。

 名探偵が登場してもどんどん人が殺されるのは、金田一シリーズでお馴染みだが、この作品ではなんと10人。いっくらなんでもヒドイんじゃない?探偵などいてもいなくても同じ。

 木更津はあや取りしながら推理するからのび太を思い出すし、メルカトル鮎はチャップリンに似ているらしい。これってコメディ?


 悪口ばかり書いてしまったが、麻耶雄嵩のデビュー作で作者の意気込みが感じられる作品。一読の価値あり。

 
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フィッジェラルド「華麗なるギャッピー」

2009-01-09 10:03:08 | Weblog
 名作といわれる作品。映画化もされたし、タカラヅカで舞台化もされている。しかし、私の頭が悪いのか、翻訳が悪いのか(翻訳者は大貫三郎)どうもよくわからない。

 自分を捨てて金持ちの男に走った女を見返すために、不正な手段を使って自分も金持ちになり、結局は破滅していく男の話。
 1920年代前半の世界恐慌前のバブル絶好調期のアメリカN.Y.が舞台。素晴らしく贅沢な時代だったみたいね。

 私はアメリカ式パーティの形式は知らないが、いくら大きなパーティを開いたって、主催者から招待されていない、主催者に挨拶もしない、勝手に行って勝手に飲み食いし遊んで勝手に帰ってくる、なんてこと出来るんだろうか?
 それどころか、勝手に屋敷に上がりこみ部屋を使い寝泊りする。

 さすがにそういった下宿人みたいになってしまった人は、ギャッピーと面識はあるが世話されていた恩義を感じるわけでもなく、テニスの約束があるから彼の葬式に参加できないと平気で言ったり…。
 ギャッピーの開いた盛大なパーティの大勢の参加者は一体どこに行ってしまったんだろう? 彼のお葬式は本当に寂しいものだったみたいよ。

 ギャッピーは殺されてしまったが、殺されなくても遅かれ早かれ没落の運命をたどったであろう事はよくわかる。
 彼が自分を捨てた女を取り戻し、幸福の絶頂で1929年の世界恐慌が起こったら…もっとドラマッチックだろうね。
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