ケイの読書日記

個人が書く書評

伊藤たかみ「誰かと暮らすということ」

2011-09-26 13:10:21 | Weblog
 筆者の伊藤たかみが、売れっ子直木賞作家の角田光代と以前一緒に暮らしていて、別れ、今はそれぞれが別の人と暮らしているという事実を知っているので、そこらへんの事情が書かれているかと期待して読んだが、ハズレ。
 そこの所は全く書かれていないし、モデルとなっている話もなし。

 しっかし、角田光代はモテるなぁ。
 芥川賞を貰ったら、とたんと男が近づいて来なくなったと、柳美里が書いていたが、角田光代は、そんな事はなかったらしい。(もっとも、彼女は直木賞だが)
 小柄でおめめパッチリ、細身で華奢、外見的にもモテる要素はそろっているからなぁ。


 この連作短篇集の主な登場人物は、虫壁という変わった名前の女と、セージという彼女の同僚。
 うまく気持ちを伝えられない不器用な男女だが、そもそも、彼らの気持ちって何?
 友達以上恋人未満、とはよく使われるフレーズだが、彼らの場合、友達ですらないような淡白さ。

 草食系男子と非恋愛体質女子のハートウォーミング・ラブストーリー?!

 でも、そのゆるさが丁度いいかも。末永くうまくやっていけるカップルだと思うよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒井順子「黒いマナー」

2011-09-19 09:44:39 | Weblog
 衝撃的な記事を、このエッセイ集の中で発見!!
 酒井さんは、男性から意地悪を言われたときなど「ハゲの呪いをかけてやる」と言うらしい。そうすると、男性達の態度はてきめんに変わるそうだ。
「ハゲの呪い…こっ怖い!」
「お願いだから、それだけはやめてくれ」

 そりゃそうだ。この言葉は本当に効き目があるだろう。私も、ダンナにイヤガラセされた時、使おうかと思ったが止めた。
 
 だって、もうハゲてるもん。

 20才の頃にはかなり薄かったようだ。私と結婚した時は、きれいにハゲ上がっていた。
 遺伝的な若ハゲで、ダンナのお兄さんや母方の従兄弟も、同じようなカンジだった。
 小さい頃から、きっと悲しい事がいっぱいあっただろう。しかし、さほど卑屈にならず成長したのだ。

 そして、配偶者の外見に全く無頓着な私と出会え、よかったね。神様はちゃんと見ていてくださった。

 自分に男の子が3人生まれ、さすがに私も母親として心配だったが、どうも頭髪関係は3人とも私の方に似たようだ。
 以前、知人が「男の子の髪は母方の祖父に似る」と言っていたが、そう思う。硬くて太くて多くて、白髪になりやすい髪質。よかった、よかった。


 今回は本の感想じゃなくてスミマセン。だって、あまりにも衝撃的なエッセイを目にしたもんで。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

江國香織「赤い長靴」

2011-09-13 16:44:01 | Weblog
 赤い長靴って何かの比喩かな?と思って読み始めたが…何のことはない、クリスマス前にあちこちで売られる、お菓子が何種類か詰め込まれている作り物の長靴のことだった。

 この小説の女性主人公・日和子の夫は、結婚以来どういう訳か、毎年このお菓子が詰まった長靴を妻にプレゼントするのだ。
 最初の年は「小さな子どもになった気分だわ」と喜んでいた日和子も、年が経つにつれ疎ましくなり、「今年は買ってこないで欲しいの」と夫に告げるが、夫は買ってくる。
「もう欲しくないの」
「じゃまなの」
「困るの。嫌いなのよ」
 かなり強く拒否しても、夫はにっこりして「まあいいじゃないか。クリスマスなんだから」と買ってくるのだ。

 いったいこのダンナは何を考えているんだろう? いや、考えていないから買ってくるのだ。善意の人だから。
 我が家だったら、これがキッカケで大声で罵り合いが始まるだろう。近所の人が驚いてパトカーだって呼ぶかもしれない。
 でも日和子はそうしない。困った時、イラついた時、彼女はくすくす笑うのだ。



 自分の不在が誰にも影響を与えない日々には戻りたくなかった。それは淋しすぎることに思える。淋しすぎる、そして心細すぎることに。

 名言だと思う。多くの別れない男女は、このことを感覚的に知っているのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有栖川有栖「白い兎が逃げる」

2011-09-08 12:19:37 | Weblog
 4つの中短篇を収録。その中でも、表題作の『白い兎が~』が一番長くて、一番出来がいいが、私としては『比類のない神々しいような瞬間』が最も印象に残った。

 この、大層な表現『比類のない神々しいような瞬間』は、エラリー・クインの言葉らしい。
 『Xの悲劇』の中で、ドルリー・レーンに「彼は死ぬ直前のほんのわずかな時間に、自分が残す事のできる唯一の手掛かりを残したのです。このように、死の直前の比類ない神々しいような瞬間、人間の頭の飛躍には限界がなくなるのです」と言わせているらしい。

 つまりダイイングメッセージ。

 もともと有栖川有栖は、ダイイングメッセージを好まず「犯人が判った後なら、どうにでも意味づけできる」と作中で書いている。
 私もそう思うよ。

 実際に、殺人事件の被害者で、ダイイングメッセージを残す人っているんだろうか?
 
 死の恐怖でパニックになったり、なんとか助かりたいとジダバタするのがほとんどで、犯人の名前を記すなんて建設的な被害者はいないんじゃないか?
 通り魔に襲われて倒れて死を待つ間、イヤガラセに、パワハラした上司の名前を書いたりして…。

 本当にダイイングメッセージらしいものが残っていたら、ワイドショーで大騒ぎだろうね。


 少し前、NHKで『探偵Xからの挑戦状』という番組をやっていた。その中の北村薫原作のトリックとドンピシャ!!!同じアイデア!
 日本の古典芸能を元にしたもので、有栖川の方が少し捻った構成になっている。
 発表時期も有栖川の方が早いだろう。

 このアイデア、推理作家の中で流行したんだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中島京子「平成大家族」

2011-09-03 20:43:40 | Weblog
 平和だった緋田龍太郎の平穏が無残にも破られることに。

 嫁に行った長女は、夫の事業が失敗して、子どもを連れ親子3人で出戻ることに。
 次女も、高学歴共働き夫婦として幸せに暮らしていたはずなのに、離婚し実家に戻って来て仕事を再開する。お腹が大きくなってきたが、どうも離婚した前夫の子どもではないらしい。
 長男は、自室に引きこもったまま、はや30歳になろうとしている。10年以上、親と言葉を交わしていない。
 
 そこに、龍太郎の義理の母親(妻の実母)と、彼女の面倒をよく見るヘルパーさんが参入し、緋田家はもう大混線!!

 それぞれの登場人物の目から見た緋田家と、自分自身の生活を書いている11の短篇から成っていて、なかなか面白い。


 特に私がいいなと思ったのは、長女の一人息子・さとる(龍太郎の孫)の話。
 
 彼は小学校4年生から進学塾に行き、見事、有名私立の中高一貫校に入学、通っていたのだが、父親の事業の失敗で、学費が払えなくなり、地元の公立中学に編入する。
 ここで、新参者の自分がいかにイジメられないようにするか『公立中サバイバルマニュアル』を自分で作成し、学校生活に臨むのである。

 自分に親切にしてくれた女の子が、どうやらクラスの女子の中でイジメの標的にされていると知ったさとるの変わり身の速さといったら! あきれ返るが、しかし、その女の子がイジメがもとで転校する事になり、それを知ったさとるの後悔は本物だと思う。

 よく書けてるよ。中島京子さんにお子さんはいらっしゃるのだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする