ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ「魔術の殺人」を読んで

2005-11-29 14:08:36 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 推理小説のセオリー通りに考えると、犯人はすぐわかってしまうのだが、それでもクリスティの筆力は読む人を飽きさせない。最後までハラハラドキドキ。

 ミス・マープルは、理想主義者の夫と結婚した友人の住む屋敷を訪れる。
 そこは非行少年ばかりを集めた少年院で、一種異様な雰囲気が漂っていた。
 友人の夫が、妄想癖の少年に閉じ込められる事件が起き、ちょうどその時、別の部屋では不可解な殺人事件が発生していた!!


 ストーリーやトリックとはまったく関係が無いが、私はクリスティの小説を読むといつも、その家族関係の複雑さに少しひいてしまう。

 金持ちの女性が、離婚、死別、再婚を繰り返すので(子どもがいない場合はサッパリしているが)夫婦間に生まれた子どもだけでなく、夫が死んでも夫の連れ子を扶養することになる。
 日本ではとても珍しいケース。

 イギリスの上流のお金持ちの女性は、自分で家事をするという習慣がないので、子育ても使用人まかせで自分自身の負担があまりないからできるんだろう。


 しかし義理の息子が自分より年上、とか、愛人を作って逃げていった夫の連れ子が長期休暇になるたび滞在する、とか、熱烈な理想主義者で少年院運営のため金持ちの妻のお金をどんどんつぎ込む夫とか、ウェットな家族関係になれている私たち日本人にとって、ちょっと理解しがたいミステリですね。
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若竹七海ほか「競作 50円玉20枚の謎」を読んで

2005-11-24 15:11:46 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 これは作家の若竹七海さんが学生時代の不思議な出来事の謎を、同業者や一般の人に解いてもらおうと、解決編を募集し、その優秀作品をまとめたもの。

 確かに、不思議な出来事ではありますが、手に汗握る、という謎ではないので、正直言ってプロ、アマ12の解決編を読むのは、ちょっと飽きてしまいますね。


その謎というのはこうです。


 昭和55年の頃、大学生の若竹さんは本屋でアルバイトをしていた。
 ある土曜日の午後の夕方、中年のぱっとしない男が店に入って来るなり、まっすぐレジに近づいてきて、50円玉20枚を千円札と両替してくれと頼む。
 両替の最中も、早く早くといったイライラした態度で、両替が終わると礼もいわず千円札をひったくるようにして店を出て行く。
 次の土曜日も、そのまた次の土曜日も、若竹さんがバイトをやめるまでの数ヶ月間同じ事をくりかえす。


 それにしても、この男はいったい何者なのか。
 どうして毎週同じ事を繰り返すのか。
 その50円玉は、どうして毎週彼の手元に20個もたまるのか。(自分の経験から言っても50円玉というのはたまりにくい硬貨である)


 私としては、アマの谷英樹さんの解決編が一番リアリティがあったと思います。
 少々、ショボい解決編ですが、こういったものは「なーんだ、そんなことか」という謎解きになることが多いですから。

 また、私の大好きな法月綸太郎の作品があまりにも低水準なので驚きました。
というのか、解決編になっていない。
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山田昌弘「家族というリスク」を読んで

2005-11-19 13:39:49 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「パサライトシングル、フリーター、専業主婦に未来は無い」という恐ろしい帯が付いていて、思わず手にとってしまった。

 本当は別の本を借りようと図書館にやってきたが、調べると25人待ちの表示が出てゲンナリ。そのまま帰ろうかとも思ったが、せっかく来たのだからと、図書館内をブラついて見つけた本。

 ……自分に依存してくる家族メンバーが増えるというリスク。家族を形成(結婚や出産)したり、今まで元気だった家族が依存者になったり(要介護、要扶養となる)一緒に生活したり(親の再同居)することによってもたらされる生活水準の低下……

 一昔前だったら、たとえ心の中で思っていても決して口外できない文章。
 でも、これからは、こういったリスクをしっかり考え、納得して結婚なり同居しなければならないということか。うーん、きびしいね。

 この山田昌弘氏は、東京学芸大学で家族社会学を教えていらっしゃるが、講義の前に「人口学者によると、今の20歳の人は20%が生涯未婚で、結婚した人の3割は離婚すると予想されている」という脅しをかけるそうだが、果たしてそうなるのだろうか?

 その時になってみなければ分からないですね。
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ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」を読んで

2005-11-15 16:27:41 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「グリーン家殺人事件」と比肩される本格推理小説ということで、読むのがすごく楽しみだった。
 この「僧正殺人事件」の方が、「グリーン家」より出来がいいと思う。


 コック・ロビンを殺したのはだあれ?「わたし」って雀はいった。「わたしの弓と矢をもってコック・ロビンを殺したの……

 マザーグースの童謡につれて、その歌詞どおりに連続殺人が発生する。


 こういった設定はクリスティの小説にもよくでてくるが、残念ながらあまり成功しているとはいえない。(唯一の例外は「そして誰もいなくなった」これはインディアンの童謡が本当に効果的につかわれている)

 しかし、この「僧正殺人事件」では、このコックロビンの無邪気な残酷さが作品を支配している。

 でも、「グリーン家」でも感じたが、最初から一握りの容疑者しかおらず、しかもその容疑者が次々と殺害され、残った2人の容疑者から犯人がわかっても、それでも名探偵というんだろうか。
 なんていったって、犯人がわかるまでに5人が殺されて、1人が殺されそうになっている。
 しっかりしろよ!ファイロ・ヴァンス!


 また、どうしてこの容疑者たちは、自分たちの中に犯人がいる事がわかっているのに、暗い夜道へ行ったり、部屋へ入ったりしているんだろう。疑心暗鬼になるのが当然なのに、あまりにも行動が明るくて無邪気なので驚いてしまう。
 「グリーン家」の時など、家の中で何人も毒殺されているというのに、皆さん人の作った食事をパクパク食べているので、あきれる。

 度胸があるというのか、肝がすわっているというのか、リアリティがないというのか……


 文句ばかり書いたが、最後のドンデン返しは見事。一読の価値あり。
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岸本葉子「40前後まだ美人?」を読んで

2005-11-11 15:00:35 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 今まで生きてきて、岸本葉子さんのエッセイのファンだ、という人に会ったことが無い。マイナーだものね。でも私は大好きです。

 ブックオフに行くと必ず50音順に並んでいる文庫コーナーの「き」の所を見る。そう、岸本葉子さんの、まだ読んでいない文庫が並んでいないかと思って。

 これは2001年の単行本「若くなくてもいいじゃない」を改題して文庫にしたもの。岸本さんの本は題名が似かよっているし、改題してタイトルが変わっていることも多いので、内容を2~3ページ読まないと未読のものかどうかわからないのだ。

 まだ読んでいなかったので購入。だいたいブックオフで買うから、岸本さんにとっては私はいい読者ではないが、たまには新刊も本屋で買うので、許してください。

 岸本さんはコンスタントによく本を出版する。しかし重版することはあまりないようだ。初版が売れるぐらいの固定ファンを持っている、ということだろう。読書家だから本の書評もかいているし、きちんとした人だから対談も多い。

 心配していたガンの再発も無い様なので安心しました。
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