ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ「鞄に本だけつめこんで」

2010-03-30 13:23:49 | Weblog
 これは書評というよりは、本をもとにした群ようこのエッセイ。しかしだらだらしたエッセイよりもよっぽど面白い。
 これの続編『本は鞄からとびだして』も是非読みたい。

 24冊紹介されているが、その中で私が読んだ事のあるものは、坂口安吾『堕落論』 志賀直哉『網走まで』 中勘助『銀の匙』 林芙美子『放浪記』の4作品である。

 群ようこは『放浪記』が大好きで、20年以上も手元に置いてあるのはこの本だけだ、と書いてあるが、私も『放浪記』は大好き。
 作者の人物像がどうのこうのというよりも、貧しい戦前の日中の事がちまちま書かれてあるのが好きなのである。

 また、ぜひとも読みたいと思ったのが、尾崎翠『第七官界彷徨』
 これは女流映画監督が映画化したことで、名前だけは知っていた。その第七官界というのは一体何かしら?と不思議に思っていたが、ここでその謎が解けたのである。

 主人公の少女は…私はひとつ、人間の第七官にひびくやうな詩を書いてやりませう…というすごい野心を持っているのだ。
 人間の五感を超えた第六感。それさえ超越した第七官にひびく。うーん。不思議な物語でせう。
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岸本葉子「おしゃれ魂」

2010-03-25 11:31:18 | Weblog
 本当のことを書くと『狂骨の夢』の後まったく読めていない。
 言い訳をすると、三男の部活の公式戦があって、それがトーナメントでなくリーグ戦なので試合数が多く、せっせと応援に行ってるのです。

 で、今日は2003年5月に読んだ岸本さんのエッセイをUPします。

 タイトルが『おしゃれ魂』。すらっとしたスレンダー美女だし、髪などはかまう方とおっしゃっているので、ご自分のエッセイの中に、色んなおしゃれを楽しんでいる事がうかがえる。

 第3章みだしなみ。ここでお化粧の事が出てくる。基礎化粧品のことは他のエッセイに載っていたが、口紅・マスカラ・アイライン・カーラー・眉カッターについては、あまり情報が無いので興味しんしんで読んだ。
 ファンデーションの事が書いていないのが残念。どうしてだろう?塗る面積が大きいからすごく重大事項だと思うが。
 肌がきれいなのでファンデーションは何を使ってもOK、きれいに仕上がる、という事なんだろうか?

 おばさんの口紅が濃すぎる、目元に化粧していないから唇だけ目立っている、と書かれているが私も同感。
 しかし、ナチュラル色のルージュを使うと死化粧のようになる。血色が悪く見えて。ナチュラル色は若い女性のものですね。
 本当に若い人はグロスだけでも十分かわいい。

 他人のお化粧のことを聞いたり読んだりするのは、本当に面白いものです。
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京極夏彦「狂骨の夢」

2010-03-20 20:41:54 | Weblog
 面白いが「魍魎の匣」ほど、きちんと収まらなかったな、という印象。

 自分の記憶の中に他人の記憶が混じって、とても混乱している女の独白から小説は始まる。その女が関口の先輩小説家・宇田川の妻で、宇田川が関口に相談を持ちかけたところから、京極堂たちがかかわることになる。

 前半部分で、熊沢天皇の記述がある。私は中学校の社会科の先生からその熊沢天皇事件の話を聞いた事があるが、「へぇ、変わった人もいるものだ」とヨタ話以上の感想を持たなかった。
 いったいなぜ、こんな所で熊沢天皇の話が出てくるんだろう、と怪訝に思ったが、最後に結びついてくるんだね。

 熊沢天皇事件というのはこうである。熊沢天皇こと熊澤寛道は敗戦の年の暮れ、「我こそは正真正銘の天皇なり」と宣言し、マッカーサーに直訴した。
 彼は自分が後南朝の血統であると主張。皆さん、日本史の室町時代を思い出して!二人の天皇が同時に皇位についていた南北朝時代ですよ。
 『現皇室は北朝の後裔、自分は南朝の後裔。北朝は正統ではなく自分こそ正統な天皇である』

 しかし今更そんな事言ったって…天皇の名の元に死んだ何百万の人たちは一体どうなる。だいたいそれって事実なの?と大騒ぎになったらしい。

 家系図を持っていたらしいが、そんなものいくらでも捏造できる。真偽の程は分からず、熊沢天皇もどこかへ行ってしまったらしい。

 しかし、たかが500年前の事。400年前の織田信長の子孫がフィギュアスケートやったりして消息がはっきりしているのに、500年前の後南朝の子孫の消息がはっきりしないというのも不思議な気がする。
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酒井順子「おばさん未満」

2010-03-15 14:15:59 | Weblog
 40歳代前半・酒井順子全開のエッセイ。「若者と中年のあいだに」というサブタイトルがついている。
 しかし…「いやー、あいだじゃなくて、もうしっかし中年のカテゴリーに入ってますよ、酒井さん」と教えてあげたくなっちゃうなぁ。

 中国の古典には「40歳は初老」と書かれてあるらしい。確かにそれは可哀想だろう。
 酒井さんは未婚。まだまだ嫁入り前のお嬢さんなのだ。それに自分の内面にも外側にも十分に手間とお金をかけてきた。一昔前の40歳代と比べると、とんでもなく若い。

 それでも、本当の20代と20代に見える40代では大きな違いがある(と思う)
 よくTVで20歳も若く見られる女性が登場したりするが「うわー、本当に若くてキレイ!とても40代には見えないわぁ」と感心するのは年配者だけであって、正真正銘の20代は誤魔化されないのだ。
 自分達の仲間でないことをすぐに察知する。
 ニオイでわかるらしい。

 「おばさん未満」と考えているのは自分だけ、あるいは自分と同世代の女性だけであって、周りはすっかり「おばさん以上」と判定しているのだ。

 道を間違えないでくれ、酒井さん! あなたのような賢い人が。

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赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」

2010-03-10 10:57:06 | Weblog
 コージーミステリの代表作。しかし、あまりにもコージー過ぎて私には…あわないなぁ。
 ストーリーもよく練られているしトリックも本格的で感心するが、キャラと雰囲気がどうもなじめない。

 登場人物は皆、明るく元気でニコニコ。分かりやすい文章で、あまりにも分かりやすすぎる文章で、どんどん殺人事件が起こるが、おどろおどろしさや禍々しさは全く無いので、スイスイ読める。
 そう、(廃刊になったが)学習雑誌『小学6年生』の連載小説みたい。

 キャラのクセが無さすぎなのだ。まあ、主人公・探偵役は三毛猫ホームズと言えなくも無いので、猫を際立たせるために他の人間の印象を薄くしたのかとも思ったが、もともとの作風なんだろう。


 赤川次郎は20年以上前、爆発的なブームになって、べらぼうに本が売れた。図書館の書架だってすごい冊数! 最多じゃないか?
 この文庫だって昭和59年に初版発行で、平成3年に56版発行だから、いかに売れているか分かる。

 ストーリー展開の見事さなど読者を飽きさせないが…でもなぁ、キャラと雰囲気の魅力の無さは私にとっては致命的。
 アンソロジーに短篇が収められていたら読むだろうが、積極的に赤川次郎の本を読みたいとは思わないね。 残念ながら。
コメント (4)
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