ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「これで暮らす」 角川書店

2021-11-26 14:25:06 | 群ようこ
 皆さま、お久しぶりです。実は先週、子どもの結婚式がありまして、バタバタ忙しかったものですから、ブログ更新が1回とんでしまったのです。子どもの結婚式と言っても、親はお祝い金を渡すだけで、あとは全て子どもたちがやったものですから、ふーん、今の結婚式って、こうなってるんだね、と感心するだけでしたが、昔も今も変わらないものが「引き出物」。

 昔と違って現代は物が溢れている時代。何を貰っても、重たいだけであまり嬉しくないというのが正直な所では?
 でも、必ず引き出物の中に一つ含まれるんですよね。食器が。それもペアのコーヒーカップとか湯呑とかマグカップとか…。昔は五客セットのお皿とか湯呑と急須のセットなどが多かったんですが、今は独身の人が多いから、五客セットだと無駄だという事なんでしょう。しかし、社交的で結婚式に何度も招かれる人は、溢れかえる食器で、本当に困っているんじゃないでしょうか?

 という事で、群ようこさんと食器の話です。このエッセイ集の9章に『ふだん使いの食器』という回があり、彼女も食器を持て余しているんだなという事がよく分かりました。
 群さんはお父様がグラフィックデザイナーだったせいかセンスが良く、一人暮らしを始めた時に自分が一から全て揃えられるのが嬉しくてたまらなかったそうです。でもそうしていると、一人暮らしでも、あっという間に4人家族ぐらいの食器の数になり、引っ越しの際に洋食器を処分しました。
 そして「来客があった時、お茶は出すが食事は出さない」というポリシーを持つようになって、再びほとんどの食器を処分しました。自分一人が使う食器だけなら、本当に少なくてスッキリする。
 そうそう、禅僧が使う「応量器」ってのが、あるんだね。私はこのエッセイで初めて知りました。色んなタイプのものがあるそうだけど、彼女のは、全部で5つの器が入れ子になっていて、この一組でご飯、おかず、汁、漬物を賄うらしい。いかにもミニマリストが好みそうだが、群さんはミニマリストじゃないので、だんだん味気なく感じるようになって、また普通の食器を使うようになったらしい。
 私たちは禅僧と違う。まだまだ欲望が抜けてないから。

P.S.最後の書き下ろしの21章に、お母様が亡くなられた事が記されてあった。何十年も前の話だが、娘のカードで30分の間に500万円着物の買い物をしたお母様。幸せな人生だったと思います。ご冥福をお祈りいたします。
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群ようこ「咳をしても一人と一匹」角川文庫

2021-11-06 16:07:15 | 群ようこ
 「しいちゃん」というおばあさん猫と、群ようこの生活を描いた日常エッセイ。普通なら「ほのぼの」「ゆったり」といった形容詞が付くだろうが、この19歳のしいちゃんは、そんな温かい形容詞が吹っ飛ぶほどの傍若無人な女王様ぶり。飼い主・群ようこを下僕のようにこき使い、今日も我が儘いっぱい。(2018年に19歳だったんだから、今は22歳。ご存命かどうか…)

 我が家のオスの茶トラも15歳で高齢だから、群さんの老猫を大切にしたいという気持ちはよく分かるが、それにしても贅沢させ放題!! キャットフードはドライとネコ缶を色々取り揃え、一度の食事に何種類も開けるらしい。懐石料理みたいに、缶やドライフードが何皿も並ぶ。それを一口ずつ、しいちゃんは召し上がる。まったく食べない缶や皿もあるようだが、一度封を切ったものは、次回に回さず捨てる。
 ネコ缶は国内製ではなく、海外製の高価なオーガニックのモノ。一度、群さんはしいちゃんの食事代を計算してみたら、1日で1000円ちょっとかかっているらしい。つまり1か月で3万円以上。すごいなぁ。3キロの猫が人間以上の食事。今、下宿している大学生の1か月の食費って3万円もないんじゃないかな?

 群さんは、しいちゃんが来てから19年間、1泊の旅行もしなかったようだが、これもスゴイ。つまり、取材旅行みたいな仕事がらみのモノも断っているんだ。「猫は人に懐かず家に懐く」とはよく言われるが、餌と水を十分に用意していれば、1泊2日ぐらいの旅行はOKだと思うよ。

 ボケたせいか、しいちゃんは夜中にみゃあみゃあ鳴いて、群さんを起こす。無視していると、顔をぽかぽか叩いて起きろと催促する。我が家の茶トラ爺さんもそう。聞くところによると、老犬の夜吠えが酷くて困っている人も多いらしい。ご近所から苦情が出て困っている、という話を聞く。人も犬も猫も、高齢化すると色々あるよね。
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群ようこ 「ネコの住所録」 文春文庫

2020-01-10 18:38:58 | 群ようこ
 群さんは家族全員が動物好きで、幼い時から小鳥やハツカネズミ、モルモット、熱帯魚、猫、犬などを飼っていたという事は、いままで読んだエッセイから知っていた。(それでも猫13匹というのは多すぎじゃない?)
 それ以外にも、アリやハエ、ハチにまでシンパシイを感じているのがスゴイ! 特にハチの話には驚かされる。
 群さんが20代後半「本の雑誌社」に勤めていたころの話。
 梅雨時の蒸し暑い日、窓を開けて仕事をしていると、一匹のハチがやってきた。緑が多い住宅地に会社はあるので、気にもせずほかっておいた。土日休んで、月曜に出社すると、群さんの机の上に、ハチがこてっと仰向けになって転がっていた。死んでいるのかと思ったが、かすかに6本の足がひくひく動いている。とりあえず水を飲ませようと、切手を貼る時に使う事務用スポンジに水を含ませてハチのそばに持って行くと、半死状態のハチは、スポンジに頭を突っ込むようにして水を飲み始めた。(オーストラリアの山林火災から逃げ出したコアラが、レスキュー隊員の水筒から水をごくごく飲むみたいに)
 生き返ったハチは、しばらくして窓の隙間からブーンと飛んで行ったが、驚くべきことに、その後毎日やって来るようになった。午前11時ごろから午後2時3時ごろまで。おい!!花の蜜を集める仕事はどうしたよ!?
 そのハチに、群さんは「ハッちゃん」と名前を付けて、話かけていたそうだ。いやあ、野良猫に勝手に名前を付けちくわをやる事はあるが、ハチに名前を付けて、部屋に入れるように窓を少し開けておくとは…。すごい人だな。群さんは。
 私だったら、自分の机の上にハチがこてっと仰向けになっていた時点で、ゴミ箱行きだよね。

 こんな動物好きな家なら、さぞ人間も好きだろうと思うと違うんだ。群さんが実家にいた頃は、お父さんVSお母さん+群さん+弟さんの3人組だったが、群さんが高校生の時、お父さんが離婚して出て行き、仲良し3人組が残った。さぞ楽しい毎日を送っているのかと思いきや、そうではない。
 この動物エッセイではあまり触れられていないが、その後、群さんVSお母さん+弟さん という対立になったそうだ。
 群さんが子どもの頃は、貧しくても陽気な一家だったのにね。お父さんだって、たしかに家庭を顧みなかったかもしれないが、優しい所もあった。公園に捨てられていた老シェパードを背負って、自宅の押し入れで面倒見て、2ヵ月後に死んで号泣した。
 群さんが服装のセンスがいいのも、画家であったお父さん譲りの才能だろう。お母さんは肝っ玉母さんタイプ。弟さんとはすごく仲が良かった。お姉ちゃんに命じられて国旗の絵を粛々と描いていた。

 思うに、群さんが売れっ子になりすぎたからだと思う。弟さんは一流大学を出て一流企業に勤めているが、やっぱり裕福なお姉ちゃんを頼ってしまうし、お母さんは、今まで苦労してきたんだからと娘のカードで着物をバンバン買うし。
 お金が無かったら、今でも肩を寄せ合って暮らす仲のいい家族だったかもしれない。
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群ようこ 「じじばばのるつぼ」 新潮社

2019-09-28 15:22:27 | 群ようこ
 このエッセイは、昭和29年生まれの筆者が60歳ちょっとすぎあたりで出した本。つまり、ご自分もプレばばの時に。
 だから、じじばばの応援歌になっているかと思いきや…ヒドイじじばば、どうかと思うじじばば、ああはなりたくないじじばば、つまりプレばばにとって反面教師のてんこ盛り。

 でもまあ、他人の不幸は蜜の味。楽しめる。トシ取っても膝上ミニスカートのばば、ノーブラで乳首が分かってしまう薄手のニットを着ているばば、それぞれ個室の女子トイレに入っていても会話するばば、地下鉄で皆が並んでいるのに横入りするじじばば、当て逃げするじじ(筆者が体験!)地下鉄の中で掴みあいのケンカをして地下鉄を止めてしまったばばたち、電車内で「シット」「ファックユー」「サンオブアビッチ」などの卑猥な英単語を繰り返し練習しているじじ、アパレル店内で若い女性店員をつかまえ会社のあるべき姿勢を説教しているじじ、などなど、群ようこさんが紙面で罵倒していると、胸のつかえが取れスカッとする。

 でも本当に色んな人がいるねぇ。感心する。キャベツを安売りしていたスーパーには、外側の厚くて大きく広がった葉を取って入れるための段ボールが置いてある。その箱の中から、捨てられた葉をせっせと拾い集め、持参した袋に入れているばばの話。確かに万引きではないだろうが、目撃したら強く印象に残るだろう。幸か不幸か、私は目撃した事はない。まあ、資源を無駄にしていないと褒める人もいるかもしれないが。

 群さんは体質的にお酒が飲めないらしいが、売れっ子作家なので、酒席で接待されることも多い。もっともこれは、担当者たちが飲んべえで、自分たちが飲みたいのにフトコロが寂しいから、群さんをだしにして会社経費で落とすらしい。
 まだ担当者なら分かるが、会社は同じでも部署が全く違う人が、酒席に勝手にやって来て飲み食いすることもあるという。だいたいこういうズルをするのはじじ。

 でも、この本はじじとばばをボロクソにこき下ろすだけの本ではない。4種類のじじばば柄(おでんに混ざるじじばば柄・じじばば波柄・じじばばドット柄・ダンゴにひそむネコ&じじばば柄)が、カバー、表紙、見返し、扉 に使われていて、それがもうカワイイ!!! これらでトートバックでも作ってくれたら大評判になるだろう。
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群ようこ 「咳をしても一人と一匹」 角川書店

2019-06-20 11:33:11 | 群ようこ
 群さん、飼い猫のしいちゃんを甘やかしすぎ! しいちゃんは2018年で19歳。室内飼いの猫の寿命は15歳~16歳といわれているので、長生きねこちゃん。
 仔猫の時に、群さんの自宅のベランダに迷い込んできて保護された。若い頃は、ご近所最強のメス猫だったが、最近はおばあちゃんになったせいか、だいぶ大人しくなって家の中をゴロゴロすることが多くなった。
 そのしいちゃんを、群さんはねこっ可愛がりする。しいちゃんがいるので泊りがけの仕事は受けないし、毎日のブラッシングやマッサージは欠かさない。それも3種類のブラシや櫛をつかって!
 冷暖房も猫中心。もともと群さんは冷え性なので冷房は嫌いだが、しいちゃんが暑そうだと、すぐクーラーのスイッチをON! それどころか、しいちゃんは群さんに団扇で扇がせるのだ。ほら、後宮にいるスルタンが、女奴隷に団扇で扇がせるみたいに。

 一番、驚きあきれるのは、しいちゃんの食事。もともと小柄な猫なので食も細く、なかなか食べてくれないので困っていたのだ。だから、カリカリもネコ缶も一度に何種類も開けて、気に入ったものを食べるようにするのだが、しいちゃんが気に入るのは、群さんの友人が海外旅行のお土産で買ってきたオーガニックのべらぼうに高いネコ缶。
 それも1/4食べれば良い方で、残りは捨ててしまうのだという。 
 で、しいちゃんの食費を計算すると、1日1000円ちょっと、かかるらしい。つまり1か月3万円以上。アンビリーバボー!!!

 そして、しいちゃんはウナギも召し上がる。群さんがタレの部分をお湯で洗い流し、ほぐしてネコ皿に入れてやると喜んでパクつくそうだ。夏場うなぎを食べると格段にお元気になるそうだ。なんという贅沢な猫。

 このエッセイの中にも書いているが「女王様と下僕」「女王様と乳母」である。しいちゃんの年齢が年齢だけに、1日でも長生きしてね、と心から願っているんだろう。
 
 私だったら…乳母桜猫はさっさと天寿をまっとうし、自分はみゃあみゃあ可愛い仔猫ちゃんをまた飼いたいなと思うね。

 他にも、しいちゃんは雷が大嫌い! 音に敏感というのはよく分かる。我が家のみい太郎もそうだから。それに、突如、1匹大運動会が始まるのもよく分かる。みぃ太郎も、お前は前世が馬だったの?と尋ねたいくらいパッカパッカとあちこち走り回る事がある。なんでだろう? テツ&トモさんに聞いてみたい。
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