日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

村田昭治先生の訃報

2015-04-25 22:30:43 | 徒然

昨日、朝食を食べながら新聞を見ていたら、ある訃報に気が付いた。
慶応大学の名誉教授をされていた、村田昭治さんの訃報だった。
新聞の訃報にある通り、数多くの財界人を育てた名物教授であった。
私は、直接ご教示をいただくことはなかったのだが、仕事で長い間ご教示をいただいていた大学の先生が、出されるたくさんの宿題に村田先生の著書が含まれていた。
おかげで、ずいぶん村田先生の著書を読ませていただいたし、私がマーケティングという仕事をするうえで、とても勉強になることが多かった。

村田先生の「マーケティング論」というのは、「目先の収益の上げ方」ではなく、「企業が社会の一員として、どのようなポジション(あるいはスタンス)であるべきか。また、企業の持つ社会的影響力を、どのように社会に還元するのか」ということを、中心に述べられていたように思う。
本の読み方、解釈は様々なので「違う!」という方もいらっしゃると思うのだが、村田先生のおっしゃっていた「チャームな企業(=魅力的で、人が笑顔になるような企業)」というのは、そのような企業なのではないだろうか?と、考えている。
そして今そのような企業が、どれほどあるのだろう?
「リストラ」という名前の「首切り」を積極的に進めることで、業務改善を図ろうとする企業。
本来の「リストラクチュアリング」とは、「事業再編」であるはずなのだが、肝心の「事業再編」ではなく「事業改善をするためにとりあえず、首切りをする」という、「首切り」が目的の「業務改善」になってしまっているのではないだろうか。
その最たる企業が、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような、企業だと思う。

ところで、村田先生はマーケティング論を中心に経営などについての著書ばかりだと思われるかもしれないが、中には異色ともいえる?本がある。
すでに絶版になってしまっているようなのだが「なぜ彼はいつも笑顔なのか」という、エッセイだ。
この本を拝読したとき、いわゆるマーケティング論では十分理解できなかった村田先生の「マーケティング思考」というものを、理解することができたような気がした。
それはマーケターとしてではなく、人に対する接し方とか生き方がビジネス(思考)に反映される、ということだった。

実は、私がマーケティングについてご教示をいただいた先生から、「マーケターにとって一番大切なことは、1日の中でどれだけ『ありがとう』ということが言えるかです」と、言われたことがある。
私たちは様々なサービスを受けることで、豊かな生活を送っている。
そのサービスが受けられる国、というのは実は決して数多くはない。
何より、些細な心遣いを見逃さず「ありがとう」というためには、サービスを提供してくれている人を十分に観察する必要がある。
人は自分のことばかりに目が行きがちだが、マーケターとして必要な視点は「自分」ではなく「他者である」ということなのだ。
そんなことを、とても平易な言葉で書いてあったのが、村田先生のエッセイだった。

亡くなられたのが、16日でその1週間後に訃報を知らせるというも、村田先生らしいと感じている。
ただ、今のような先が見えにくいときだからこそ、村田先生のお話をもう少し伺いたかった。