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年号の暗記ではない、「現代史」を教えてほしい

2018-06-14 18:20:02 | 徒然

大人気漫画「ONE PIECE」の89巻の表紙裏に掲載されている、作者の尾田栄一郎さんのコメントなどが物議をよんでいるらしい。
日刊スポーツ:ONE PIECE89巻で物議、編集部「反省」

1970年代の初め第二次世界大戦終了から30年近く経って、フィリピンなどの激戦の地で日本兵であった方が発見される、ということがあった。
そのおひとりが横井正一さんであり、もう一人の方が小野田寛郎さんだった。
お二方が日本に帰国をされたときのことは、子どもながらに鮮明に覚えている。
日本の地に降り立った時、「恥を忍んで帰ってまいりました」と話した横井さんの言葉は、衝撃的だったように思う。
直後から流行語のようになったが、「生きて帰ってくる」ということを良しとしなかった、第二次世界大戦中の日本の軍国主義教育の恐ろしさのようなものを、なんとなく感じ取ったように思う。

話は違うのだが、RADWIMPSの「HINOMARU」の歌詞についても、同様の印象を受けるのだ。
「御国」とか「御霊」と言う言葉は、神道で使われることがあるが、その言葉を利用し国威発揚に使ったのが第二次世界大戦だけではなく、日本が参戦した戦争でもあったのだ。
そこに「御旗」とか「死ぬ気で戦え」というニュアンスの言葉がつけば、軍国主義的な印象を持つ人がいるのは当然だと思う。

歌詞を書いた野田さんには申し訳ないが、たかだかサッカーの世界大会の応援ソングのカップリング曲なのだ。
サッカーファンである私であっても、そんなに力を入れなくても、もっと楽しくサッカーを楽しみましょう!と、声をかけたくなるほどの、力が入っている言葉が並んでいるように感じるのだ。
その程度のことなのに「愛国歌」と言われると、ますます「もっと肩の力を抜きましょう」と、言いたくなってしまう。
もちろん、選手たちは日本代表としての誇りをもって、プレーをするはずだ。
だが、そのプレーは「サッカー」というスポーツの中でのことであって、それ以上でもそれ以下でもない。
サッカーファンの中には、日本代表のファンではなくドイツ代表やスペイン代表のファンだっている。
サッカーというグローバルなスポーツだからこそ、自国だけではなく対戦相手国に対しても、敬意を表する気持ちや謙虚さも必要なのだ。

残念ながら、尾田さんにとって横井正一さんという方に対する印象は、そのようなものでしかなかった、ということだろう。
そして、RADWIMPSの野田さんにしても、「御国」とか「御霊」と言う言葉が、神道で使われる言葉だと十分理解していたのだろうか?と、疑問に感じる部分がある。
そして、そのような言葉が戦時中「御旗」と言う言葉とともに、多くの若者を戦場へと送り出し、多くの命を犠牲にした、という過去を知っていたのだろうか?と、疑問に感じてしまうのだ。
もしかしたら、これらの言葉が「カッコ良い」とか「日本らしい」と感じていただけなのでは?という印象を持っている。
ではなぜ、そのような印象を持ってしまったのか?と考えると、「現代史」をキチンと教えていないのでは?という気がしてくるのだ。

これまでの高校で教える「日本史」や「世界史」は、年号を暗記するということが主だった。
「何故そのようなことが起きたのか?」という、時代背景や産業の変化という部分が、おざなりになっていたように思う。
特に「現代史」に関しては、時間切れでほとんど学んでいないのではないだろうか?
実際、大学入試で出題されることもほとんどない。
このような問題が出るたびに感じることは、「現代史」こそキチンと時代背景や産業の変化、経済の影響などを含めて教える必要があるのではないだろうか?

横井正一さんが羽田に降り立った時の「恥を忍んで(生きて)帰ってきた」という言葉の重さを、改めて考えてほしいと願っている。