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速いだけが、旅の楽しみではない

2018-06-27 08:36:33 | アラカルト

JR西日本が、7月1日から鳥取~出雲間を走る「観光列車」の運行を始める。
先日、その試乗会があったようだ。
乗り物ニュース:「古事記」由来の新観光列車「あめつち」に乗車! 五感で山陰楽しむ列車
リンク先には、動画(松江→出雲間)がある。
車窓から見える風景も、どこかほのぼのとして「あめつち」の速度にあっている気がする。

最近JR各社が導入する「観光列車」の多くは、特急クラスがほとんどだと思う。
それに比べこの「あめつち」は、快速列車として運行される。
もちろん車内は、観光列車らしく鳥取・島根の伝統工芸品などが使われ、快速電車でありながら車内販売もある。
「あめつち」という観光列車は、移動するための列車ではなく、車中を楽しむ為の列車、ということになる。

毎年(という印象がある)展開される、JR西日本の「デスティネーション・山陰」のキャンペーン列車ということもあり、期間限定(7月~11月)の週末運行ということのようだが、それでもこのような観光列車の登場は、これまでも「速さ」一辺倒だった列車の旅に、一石を投じるのでは?という気がしている。
理由は上述した通り「車中を楽しむ。車窓を楽しむ列車」だ。
「車中を楽しむ、車窓を楽しむ」ためには、速さは必要ないからだ。

このような「快速・観光列車」と共に、復活すると案外人気になるのでは?と思われるのが、「寝台列車」だ。
昨今の「フェリー人気」などを考えると、「夜シッカリ休んで移動できる」という点では、「寝台列車」も同じようなメリットがある。
確かに「寝台列車」で移動するよりも、新幹線などを利用したほうが、遥かに速いし便利だと思う。
しかし視点を変えてみると、今のように生活時間帯が様々だと「夜移動する」という需要も、多いのではないだろうか?
目的地到着が夜遅い時間であれば、いっそのこと「夜、体を休めながら移動」するほうが、メリットが多いと思うのだ。
以前のような「寝台列車」のような造りでは、今のニーズには応えられない部分もあると思うが、列車の運行そのものの需要はあるのでは?

そしてこのような「旅を楽しむ」方法も、様々に変わってきていると思うのだ。
例えば、海外からの観光客誘致という点だ。
最近欧米からの観光客は、深夜の高速バスで移動する傾向があると言われている。
理由は値段の安さと、バスの中で休んでいる間に目的地に到着し、朝から観光できる、という点だ。
彼らは、移動するための費用を節約し、目的地で楽しむ為の費用は減らさない、ということでもある。

そのような需要があるとすれば、この「あめつち」も「鳥取⇔出雲」間ではなく、もう少し区間を延長しても良いかもしれない。
例えば、「京都⇔出雲」くらいの距離にすれば、ユネスコのジオパークに指定されている地域も、十分車窓から楽しめるはずだ。
確かに距離も長く、時間もかかるが「旅の楽しみ方の多様性」という視点で考えれば、検討の余地はあると思うのだ。

ちなみに「あめつち」についての運行予定などは、JR西日本のサイト↓を参考にしてほしい。
JR西日本:山陰を走る新たな観光列車「あめつち」