日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

孫さんの狙いは、どこにあるのか?

2018-06-21 17:05:09 | ビジネス

昨日、ソフトバンクグループの株主総会があった。
自社株が以前に比べ随分安くなり「今が買いですよ!」と、熱く語る場面もあったようだが、今回の株主総会で一番注目されたのは、おそらく通信事業から投資事業へのシフト、だったのではないだろうか?
SANKEI BIZ:通信から投資に注力鮮明に ソフトバンク株主総会で孫氏

この報道があったとき、何故孫さんは通信事業から投資事業へとシフトするのだろう?と、疑問に思ったのだった。
「ユニコーン投資」という言葉も、聞き慣れず(私だけかもしれないが)一体、ソフトバンクはどこへ向かうつもりなのだろうか?と、思ったのだった。

「ユニコーン投資」の意味を調べると、評価額が10億ドル(日本円換算で約1250億)の、非上場のベンチャー企業である「ユニコーン企業」に投資をする、ということのようだ。
非上場のベンチャー企業で評価額が10億ドル以上の企業が、どれほどあるのだろうか?と、想像をめぐらしてはみるもののイメージがなかなか浮かばない。
一つ思い浮かぶのは時々聞く「アカデミア発」のベンチャー企業だ。
「アカデミア発のベンチャー企業」というのは、いわゆる大学や研究施設が行っているベンチャー企業のことだ。
地元の名古屋大学の市民公開講座などに出かけると、実はこの「アカデミア発」のスタートアップやベンチャーの話を聞くことが多くなってきた。

残念なことに、日本ではこの「アカデミア発」のスタートアップやベンチャーが、ことごとく失敗に終わっているようだ。
その理由は「マーケティングが分かる人材がいない」という点にあると、個人的には考えている。
自分たちの研究が、
1、誰に必要とされているのか?
2.その研究によって社会をどう変えていくのか?
3.そもそもその研究は、何かしらの社会的問題を解決することができるのか?
というようなことが、分かっていないのでは?と、感じることがあったからだ。

「マーケティングの父」と呼ばれる、コトラーはマーケティングが果たすべき役割として、上述した1~3のことを挙げている。
ところが、研究者にとって「研究テーマ」を追求していくことには関心があっても、その研究によってもたらされる(はずの)社会的変化や市場の創造ということまでは、想像することができないし、市場そのものが理解できていない。

なんとなくだが孫さんは、このような事業に積極的に、投資をしていくつもりなのではないだろうか。
それによって、ソフトバンクという企業は「世界の標準」を勝ち取ることを目的としているのかもしれない。
それは通信事業とも無関係ではないだろう。
例えば、これから先のキャッシュレス時代を考えた時、その場合の安全・確実なセキュリティーシステムが必要になる。
現在は、顔認識や瞳認識などが一般的だが、年齢と共に変化したり病気によって瞳の認識ができない、という場合も出てくる可能性はある。
とすれば、より確実な生体認証のシステムが必要となるだろうし、おそらくそのような研究は一般企業よりも大学などのほうが、得意だろう。

スマートフォンでの決済もこれから一般的になっていくことを考えれば、このようなシステムの世界標準を勝ち取った企業には、膨大な利益をもたらすことも可能になるはずだ。
投資先1つだけで見るのではなく、様々な投資先を見ることで孫さんが考える戦略が、見えてくるような気がする。