日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ゲノム医療の進歩と患者

2018-06-07 20:13:30 | 徒然

今年に入ってから、「ゲノム医療」についての話題が多くなってきた。
国立がんセンターなどを中心に全国10病院が、「ゲノム医療拠点病院」に指定が発表されたのは2月のことだったように思う。
その後、拠点病院と連携をする100の病院が決まり、本格的な「ゲノム医療」の準備を整ったというのが、この半年の医療の動きだった。

もちろん、企業も「ゲノム」に関する様々な事業分野に乗り出している。
「シークエンシング」と呼ばれるゲノムの解析機器の開発から、医薬品の研究開発まで、今や「ゲノム」という市場はこれまでにないほどの市場規模になる、と考えられているからだ。
特に「ゲノム医療」という分野については、世界各国が「世界標準」となるために、しのぎを削っている状態だろう。
今日の毎日新聞には、ゲノム医療の推進の為の議員立法を超党派で目指す、という記事もあった。
毎日新聞:ゲノム医療 推進へ議員立法目指す 超党派議連

何も「ゲノム医療」に限ったことではないのだが、「世界標準」となることで関連する事業を展開している企業にとっては、世界的にシェアを大きく伸ばすことができる。
「ゲノム医療」については、米国や中国に比べ応用研究(実際に薬として使えるような研究)となると、後れを取っている、というのが現状のようだ。

その一つには、治験などに対する生活者の理解が得られにくい、ということがある。
今まで、日本で新薬の承認が遅れがちになっていた大きな理由は「治験」の難しさ、という指摘も度々されてきた。
それに加え「ゲノム医療」となると、「ゲノム=遺伝子情報」を提供してくれる人という問題が出てくる。
現在「ゲノム医療」の中心として考えられている、「がん」の領域に関していうなら、患者数は年々増える傾向にあり、患者個人一人ひとりに合わせた治療薬を選び出す為に必要な総合的なデータが、どれだけ集まっているのか?という、疑問がある。

患者一人ひとりに合わせた治療薬の選定の為には、治療を受ける患者本人のゲノム情報が必要なのは当然だが、それだけでは、治療薬の選定とはならない。
候補となる治療薬一つひとつを、患者のゲノムにテストをしているような時間も費用もないからだ。
そのために必要なのは、過去~現在に至る治療を受けた患者のゲノムデータなのでは?
そして、治験と同様にこのような「ゲノムデータ」の提供に、抵抗感を持っている患者は、少なくないと思うのだ。
例えゲノムデータの提供を了解しても、提供患者に対しての結果報告はどうするのか?という問題もあるだろう。
今現在の状況では「ゲノムデータ」の提供に協力しても、その結果報告はしない、ということになっている(と記憶している)。
理由は、提供されるゲノムを匿名扱いにする、ということだからだが、それで提供する患者は納得するのか?という問題も起きてくる可能性がある。

今後、治療のための遺伝子検査が普及した場合、患者に対する説明やカウンセリングを誰がするのか?という問題が大きいと感じている。
「ゲノム医療」そのものは医療関係者よりも、治療を受ける側の患者のほうが理解と納得が無くては意味がない。

「ゲノム医療」は、様々な期待を持たれる新しい分野だが、そのために必要なことは何なのか?ということを考えた、生活者への教育とサポートがまず必要な気がする。