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自動運転の「スタンダード」を獲るのは、誰か?

2019-02-07 20:50:11 | ビジネス

今朝、FMを聞いていたら「自動運転」について興味深い内容の話があった。
ご存じの通り、自動車の「自動運転」については、「事故を起こしたとき、誰が責任者となるのか?」などの、法整備が急がれている。
実際「自動運転中の事故」は、運転者が運転をしているわけではないので、その責任の所在を明快にする必要がある。
と同時に、今社会的問題となっている「認知力が低下した(高齢)者に対する運転」に、「自動運転はどう対応できるのか?」などという点も、問題になってくるだろう。
そのような「自動運転に対する責任の所在」について、話題になりがちとなっているが、どうやらそれよりも前に大きな問題があるようだ。

それは「自動運転の世界標準化」という問題だという。
今「自動運転」の開発に熱心なのは、自動車メーカーだけではない。
ご存じの通り、IntelやGoogle、Softbankのように、通信会社やITの中枢を担う半導体メーカーもこの分野に進出している。
運転という技術的な面は、トヨタなどの自動車メーカーが開発をし、IntelやGoogle、Softbankのよう通信会社や半導体メーカーが、地図情報やMaaSのような「次世代交通システム」などの分野での技術開発を共同で行っている。
総務省:次世代の交通MaaS
昨年秋、トヨタ自動車の豊田章夫社長とSoftbankの孫社長が、「MaaS」の新会社を立ち上げたのは記憶に新しいところだろう。
CNET Japan:トヨタとソフトバンクがMaasの新会社「MONET」を設立ー自動運転時代を見据え

しかし、各自動車メーカーと通信会社や半導体メーカーが、共同で「独自の自動運転のシステム技術」を開発したところで、それが生活者にとってメリットとなるとは限らない。
例えば、トヨタからBMWへ乗り換えた時、トヨタとSoftbankが共同開発した「MaaS」のシステムでは、BMWとIntelの「MaaS」のシステムでは使えない、ということが起きてくるはずだ。

このような「システムの違い」によって、市場そのものが大きく変わってしまうという例は、過去にもあった。
一番身近なところでは「ビデオ」だろう。
ソニーが開発した「β方式」と現パナソニックが中心となった「VHS方式」とでは、方式が違う為ビデオテープの大きさなどが違っていた。
結局、「β方式」のほうが、コンパクトで画像なども綺麗だと言われていたにもかかわらず、映画会社などが「VHS方式」を採用したため、ソニーの「β方式」は市場から撤退せざる得なかった。
ビデオテープそのものが、市場から消えつつある今となっては懐かしい話だが、当時の「β vs HVS」というシステムの標準化をめぐる闘い(決して大袈裟な話ではなかった)は、生活者にもそれなりの影響を与えることとなった。

ビデオなどの機器の方式であれば、その問題は社会的には大きな問題とはならなかったが「自動運転」となると、そのようなわけにはいかない。
理由は「MaaS」そのもののビジョンが与える社会的影響が、とても大きいからだ。
この部分で、世界標準を獲った企業(連合)が、今後の自動車産業の主役となっていくはずだ。

「世界標準=スタンダード」を獲る、というのはそれほど企業にも社会にも影響を及ぼす問題でもあるのだ。