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「がん」という病気と社会の変化

2019-02-26 21:22:10 | 徒然

昨日、乳がんの経過検診を受ける為に病院に行ってきた。
経過検診も9年目となり、この9年間で「がん」という病気そのものに対する治療の進化だけではなく、社会的変化も感じるようになった。
診察室の前の待合所に置いてあるテレビでは国会中継が映っており、丁度ある議員さんが「がん対策基本法」について、質問をしていたからだった。

この「がん対策基本法」があることで、日本のがん患者さんは「がん拠点病院」に指定されている病院であれば、「標準治療」と呼ばれる化学的根拠が確認され、適切な治療を「保険適用内」で受けられる。
もちろん「皆保険制度」があってのことだが、がんに限らず安心して「病気治療が受けられる」というメリットは、とても高い。
その中でも「がん」という病気の場合、この「がん対策基本法」という法律によって、治療以外についても様々な法的制度が拡充されている。

偶然私が見た国会中継では「がんと就労」と「がんゲノム医療」を取り上げていた。
私が手術を受けた9年前は「がんと就労」というテーマは、考えられないテーマだった。
今でも「がんになったら仕事を辞め、治療に専念すべき」と考える方は多いと思うのだが、化学療法(=抗がん剤など薬剤による治療)については、短期入院治療から通院治療へと変わりつつある。
仕事を辞めなくても、治療に専念することができるようになってきているのだ。
だからこそ、今問題となっているのが「がん患者の就労」ということになる。
ただ、自治体の多くは既にこの「がんと就労」について、既に様々な施策を取り始めているのでは?という、気がしている。
問題となるのはむしろ「傷病手当」などの制度を活用できるだけのお金がない中小企業に対して、国としてどのような対策をとるのか?という点だろう。
ただ、このような「病気治療と経済的サポート」という問題は、「がん」という病気に限ったコトではなく、治療法が分かりつつある病気の患者さんへの法的施策なのでは?という気がしている。
あくまでも「がん」という病気は、患者数が多いため「病気と就労」という問題の象徴となっているのでは?という、気がしたのだ。

そしてもう一つの「がんゲノム医療」についても、「がん」という病気が「ゲノム解析」がされるようになったことで、クローズアップされ、「遺伝子変異による病気」のフロントランナーとなっているのでは?と、感じている。
というのも、がんの場合ご存じの通り患者数も多く、「ゲノムデータ」を得やすいからだ。
「がんゲノムデータ」を集める為に、「がん登録」という制度も「がん対策基本法」の中で制定されており、多くの患者さんの「遺伝子変異となるゲノムデータ」を集めやすい環境になりつつある。

ここで問題になるのは「ゲノム解析」が、短時間に安価でできるようになり、多くの人が気軽に「自分のゲノム解析」を自由にできるようになった時、これまでとは違う社会的問題に直面する、ということだろう。
例えば、遺伝型の難病リスクが分かった場合、ゲノム解析を依頼した人にどのように・どこまで伝えるのか?という問題が起きてくる。
「ゲノム解析」には、自分の知りたくない情報も知る可能性があるのだ。
「妊娠中の遺伝子検査」により、障害児である可能性が多い場合、親としてどのような判断をするのか?という、検査を受ける側にもそれなりの知識や覚悟というモノも「ゲノム解析」には、必要になる。
「がんゲノム医療」には、そのようなリスクを医療者と患者・患者家族とどうむきあうのか?という問題が既にあり、その意味でも「がん」という病気は、問題解決のフロントランナーともいえるのだ。

あくまでも個人的な意見として、「ゲノム」については中学生~高校生の間で「生物」などの授業とは別に、「総合科目」的扱いとして教育をする必要があるのでは?と考えている。
何故なら「ゲノム解析」によってもたらされる情報は、究極の個人情報であり、その情報管理と社会的差別の対象とならないようにする必要があるからだ。