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シャネルは、どうなるのだろう?

2019-02-20 19:55:58 | アラカルト

シャネルのデザインを長い間手掛けてきた、カール・ラガーフェルドの訃報にとても驚いた。
VOUGE Japan:カール・ラガーフェルド、革新と挑戦のデザイナー

ファッションに詳しい方なら、今日のタイトルを見て「シャネルだけじゃない!」と思われるのではと思っている。
実際、カール・ラガーフェルドがデザインをしていたファッションブランドは、「フェンディ」や自身のブランド「カール・ラガーフェルド」などがある。
そして、それぞれのブランドで発表される作品は、カール・ラガーフェルドらしさはもちろん感じられるのだが、シャネルはシャネルらしさがあり、フェンディはフェンディらしさが感じられる作品だった。
ブランドの持っている、アイデンティティ(というべきか?)を大切にしながら、カール・ラガーフェルドらしさを付け加える、という作品といったほうが良いのかもしれない。

カール・ラガーフェルドがシャネルのデザイナーとして就任した直後のコレクションでは、ココ・シャネルが決して出さなかった「膝よりも上のミニ(場合によってはマイクロミニ)丈のスカート」を発表した時には、センセーショナルな出来事として、ファッション誌などに取り上げられた。
もちろん、それまでのシャネルファンからも、「シャネルのエレガンスさが感じられない」という反応があったように記憶している。
そんな批判を乗り越え、それまで顧客層ではなかった、若い女性(といっても、欧州の富裕層のお嬢さんたちだが)の獲得に成功をしている。
カール・ラガーフェルドという、デザイナーによって、シャネルというブランドも甦っただけではなく、新しい顧客層を獲得することになったのだ。

そしてシャネルとは違う印象を与えたのが、フェンディでのデザインだろう。
昨今の「動物愛護」の運動で、毛皮商がブランドの始まりだったフェンディの旗色が悪くなる中、カール・ラガーフェルドは「毛皮でのエレガントさ」というファッションを表現し続けた。
シャネルと同様のミニ丈のスカートを発表しても、そこにはフェンディらしさがあり、何よりも毛皮商・フェンディのイメージを大切にするデザインだったように思う。
もちろん、自身の名前で発表されるコレクションは、シャネルでもフェンディでもない、カール・ラガーフェルトというデザイナーとしての自由で創造性の高いコレクションを発表していた。

カール・ラガーフェルドの逝去で、心配なのは彼自身のブランドではなく、シャネルやフェンディといったブランドだと思っている。
何故なら、シャネルにしてもフェンディにしても、とても長い間デザインをし続けてきたからだ。
今のシャネルやフェンディのファッションイメージは、カール・ラガーフェルドが創り上げてきた、といっても過言ではないと考えるからだ。
その中でも特に、シャネルはココ・シャネル亡き後、それまでのシャネルの伝統的イメージを尊重しながらも新しさを常に与え続け、今の顧客層を獲得することになった。
デザイナーが代わることで、そのブランドイメージが変り顧客が離れてしまう、ということはよくあり、場合によってはブランド力を維持できなくなってしまう可能性もある。

カール・ラガーフェルドの訃報を知り、もう一つ心配なことがある。
それは、日本のファッションデザイナーの層の薄さだ。
日本のファッションデザイナーの中で、森英恵さんにとって代われるだけエレガントなデザインをする若いデザイナーが、どれだけいるのだろう?
今の日本のファッションは、カジュアル志向が中心で「エレガント」という言葉が似合うデザイナーが思い浮かばないからだ。
ファッションの中心である、パリコレなどのようにアバンギャルドなデザインもあれば、老舗ブランドのようなエレガントさを感じさせるデザインまで、幅広い志向のデザイナーの育成が、必要なのでは?という気もしている。