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高齢者ドライバーの免許返上を考える

2019-04-21 07:43:40 | ライフスタイル

一昨日、東京・池袋で起きた高齢の男性が運転するクルマによる自動車事故。
自動車事故としても、規模の大きいものだった。
この事故に巻き込まれ亡くなられた、母娘さんのご冥福を祈りたい。

このような高齢者が運転する自動車事故は、ここ数年で急激に増えている。
実際、高速道路などを逆走する運転者の多くは、高齢者である。
そして、このような悲劇的な事故が起きるたびに言われるのは、「高齢ドライバーの運転免許証の返納」だ。

認知能力が落ち始めた高齢ドライバーが、簡単に免許を返上できない理由も、盛んに言われている。
過疎地のようなところでは「移動手段がクルマ」で、「クルマが無くては、生活に支障をきたす」というのが、免許を返上できない大きな理由になっている。
しかし今回の事故を起こしたドライバーは、東京都23区内に住んでいる。
このドライバーの住んでいる地域での、公共交通機関の利便さが分からないのだが、公共交通機関で移動する、という発想がこの運転手には無かったのだろうか?という、疑問が出てくる。
事実、このドライバーは「運転免許の返上」ということも、周囲に話していたという話もある。
もしかしたら、自身が運転能力の低下を感じていたのかもしれない。
それでも、運転をしたのはなぜか?

実家の父も認知機能については、問題が無いと言われていたのだが、緑内障の発症を切っ掛けに運転免許を返上した。
ところがいざ運転免許を返上するとなると、クルマ以外での移動手段に不安があった。
不安を解消するために、高齢者が利用できるバスのフリーパス(半年間一定の金額を前払いすれば、バスが乗り放題になる)への切り替えや、タクシーの利用など「移動手段のサポート策」をする必要があった。
万全策を整えたと思っていたのだが、思わぬ原因が公共交通を利用するハードルを上げていたことに気づいたのは、半年ほど経過した時だった。

それはJRを利用した時のことだ。
乗車駅から降車駅までの運賃を運賃表で確認し、財布から運賃分の代金を出し、券売機に投入するという、一連の動作が思いの他時間がかかるのだ。
私のように日ごろ地下鉄などを利用していれば、このよう動作はスムーズで周囲に迷惑をかけることなくできる。
しかし、今までクルマでの移動が当たり前だった父にとっては、運賃表で確認→財布からお金を出す→券売機に運賃を入れる→切符を取る→自動改札機に切符を通す、という一連の動きが思ったようにできず、戸惑っていたのだ。
戸惑うだけではなく、周囲に迷惑をかける(あるいは周囲の視線が気になる)という思いがあり、それが自尊心を傷つけているのでは?という気がしたのだ。
「自尊心」というと、自意識過剰のように思えるかもしれないが、かつて当たり前にできたことができない、という自身の老齢化をまざまざと実感することで自尊心が傷つくのでは?と感じている。
当然、父はJRを利用するような場所には行かない、あるいは誰かに連れて行ってもらう、ということになった。
それが3年ほど前からICOCA(JR西日本他関西の鉄道会社の共同電子マネー)が利用できるようになった。
最初は使い方に戸惑いを見せた父だったが、今ではICOCAも使いながら出かけるようになった。

「運転免許の返上策」として様々な交通手段のサポート策が提案をされているが、実は実家の父のように「乗り物に乗る為に必要な動作」が思うようにできず、運転免許を返上できない高齢者もいるのでは?
交通手段のサポートの充実は必要だと思う。
と同時に、利用するための一連の動作を検討し、高齢者の負担が少ない方法を考える必要があるように思うのだ。